全ての事は、メッセージ ~ 言語・非言語の授業力・学級経営力

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やさしさにつつまれたなら

松任谷由実(荒井由実)さんの名曲、「やさしさにつつまれたなら」の歌詞に、

「雨上がりの庭の くちなしの香りの やさしさに つつまれたなら きっと 目に映る 全ての事が メッセージ」

という一節があります。
「目に映る 全ての事が メッセージ」という表現は、そのまま、教師にも当てはまるものがあるかもしれないと、思っています。

私たち教師は、言葉によるコミュニケーション(バーバルコミュニケーション)で子供との関係を築こうとしがちですが、けっこう言葉によらないコミュニケーション(ノンバーバルコミュニケーション)が子供との関係に影響を与えていると思えるのです。特に、視覚というのは大きな情報源です。「人は見た目が9割」(竹内一郎著・新潮新書)がミリオンセラーを記録しました。(この本のヒットは奇しくも本も見た目(タイトル)が9割なのかもしれないということまで証明してしまいました。)

視覚情報を筆頭に、教師の言動は子供達の六感に訴えることとなり、知らず知らずのうちに個々の子供及び、学級全体の関係性に大きな影響を与えていると思います。

また、言語による情報にしても、言語の内容だけが伝わるのではなく、しゃべったままの言葉(音声)や文脈あるいはタイミングや組み合わせに含まれるあらゆる意味が伝わっていくと考えた方がいいと思います。全く同じセリフをしゃべったとしても、A先生とB先生では、伝わり方が違うものです。「そんなメッセージを出したつもりがないよ」と思っていても、子ども達がメッセージとして受け取っている事は少なくないと思います。教師が持っている「正あるいは負のオーラ」とでもいったものが、メッセージとして子ども達に伝わり、クラスのムードに反映されます。

①言葉

教師である限り、発するメッセージの中で言葉が重要な位置を占めることは言うまでもありません。前述したように、単なる字面だけではない要素(強調の仕方・タイミング・組み合わせ)も含めて、言葉は伝わっていきます。
時にはストレートに話すことも必要かもしれません。例えば、愛情表現。自分のキャラでは「君達が大好きです」と言うのは気持ち悪いと感じられるかもしれないと思うのなら(苦笑)、「君達の事はいつも大切に考えているよ」等と、ストレートな言語メッセージも発すればいいと思います。

②表情

話しているとき、黙っているとき。教師の表情を窺っている子供は多いです。あまり、子どもが教師に気を遣い、表情を窺わせるのは良くないとは思います。できればいつも、ニコニコしていたいものですね。ただし、学級が荒れている時には特に笑顔をセーブした方がいいでしょうし、教師集団にも役割分担があると思いますので、中には強面で居続ける教員も必要かもしれません。

③服装等の見た目

昔、中学校で教壇に立っていた時には、女子生徒から毎日の靴下の色までチェックされていたことがあります。前の日と同じ柄のネクタイをしめていった時には、「先生、もしかしてお泊り?」と、冷やかされたこともあります。中学女子ほどではなくとも、子どもはけっこう教師の身なりを観察しているので、気を付けましょう。着飾ることはないですが、きりっとした身なり・服装で臨めるといいですね。

④目力

表情に入るかもしれないですが、特に目力は子どもへのメッセージになると思います。あまり睨んで脅迫的にならないようには気を付けなければなりませんが…(②と同じ)

⑤口癖・間

話している内容は同じでも、「えー」「まあ」等の迷っている感じでつないでいるのはあまり格好良くないですね。気合いが伝わりません。間を開けて話せるようになれば、相手をひきつけますし賢そうに見えます。

⑥癖

貧乏ゆすり等、社会一般で「まずい身だしなみ・身のこなし・癖」というのはあると思います。人のふり見て、我がふり直しましょう。

⑦よどむ・繰り返す・脱線する・主述の逆転

なんだかうわ言を言っているようなはっきりしない話し方も、マイナスのメッセージを与えてしまいます。二回同じことを繰り返す人は嘘を言っているという説もあるそうです。きっぱりと言い切れる方がいいですね。

⑧字

文字が人柄を表すとはよく言います。特に、最後の一画がきちんと書けない人の字は、マイナスのメッセージを伝えてしまうでしょう。

⑨声の質

朗々とした声、澄んだ、よく通る声。これは生得的な部分がかなりありますが・・・

⑩教室の整理整頓・掲示物

服装と同じく、大事な要素です。放課後でもいいので、色々な教室の掲示や整理整頓を観に行くのはいい勉強になります。

⑪ゼスチャー

大事な話をするときには、一歩足を前に踏み出すなど、教師のゼスチャーも視覚的な影響力は大きいでしょう。頷く、手で制す、ガッツポーズ・・・

⑫ゆずってしまう=子どもペース

何となく、子供のペースに合わせてしまう、子どもに主導権を握られてしまう。リーダーシップのない所を見せてしまっては、主導権を乗っ取られてしまいます。頑としてここはゆずれない、踏み込ませないというメッセージを示していく必要はあるでしょう。意識的に子ども達を泳がせて様子を見ているならまだしも好き勝手をしているのを見逃すのはまずいです。

⑬流してしまう(スルー)

⑫の「ゆずってしまう」と同じく、子どもがきちんとしていないことを何となく見過ごしてしまう、「注意はしているけれども守らせる気はなさそう」と思わせてしまう…そうしたイメージも教師がまとっている空気の一つです。
この辺りの事は

子供は教師を値踏みする | EDUPEDIA

に書かれていることも是非ご参照ください。

⑭愛情やパッションを感じさせる。

当然のことながら、子ども達に対して愛情やパッションを示していくことも大事です。「こんなに自分、自分たちの事を思ってくれているのだ」「こんなに一生懸命やってくれているんだ」という事を上手に見せていく、話していけるようにしましょう。時には、120%200%の力でぶつかっていく姿を見せるのもいいでしょう。
クラスの誰に対しても・・・素行の悪い子供・成績不振の子供・おとなしい子供・いじめられている子供・いじめている子供・家庭環境の悪い子供・そして普通の子供・・・「決して先生はあなたを見捨てませんよ」という気持ちを持って向き合うように頑張りましょう。子供たちにはそうした教師の気持ちが何らかの形でメッセージとなり、伝わると思います。

意識する

こうして挙げていくと教師が言語以外に与える情報はけっこうあるものだと感じました。毎年、いつのまにかクラスカラーというものが出てきて、その人なりのクラスができるように感じます。正直なところ、私自身は自分のクラスに映し出される自分の負の部分への嫌悪感がなかなかぬぐい切れずに毎年を過ごしています。オーラなどというものは生得的な部分もありますし、長年にわたって自分の中で積み重なって生成されたものでもあり、上に挙げた項目の中ですぐに変えられるものは多くはないかもしれません。しかし、自分のモデルになる教師の言動を観察し、何度も自分の中で変えたい部分を見直していけば、少しずつは変わっていくことができるかもしれません。教師という仕事は、根気や気力が大事な職業なのだと思います。

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