学習技能を示し育てる

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一貫した学習の型を教え、技能を習得させる

目次

1 まず、ノート指導から

 理科の授業開きの日に何をしますか。 

ちょっとした楽しい実験をしたり、興味を引く写真を提示したりしながら、これからの理科に期待を持たせることは大切ですね。

私はオリエンテーションとして、おもしろいネタを紹介するとともに、二つのノート指導をしています。一つはノートを書く意味を教えることで、もう一つはノートの書き方指導です。

一つ目のノートを書く意味としては、何をやってきたかという学習経過が分かり、考察したり、次の実験・観察につなげるために書くということを教えます。そのためには、ていねいに見やすく書くことですが、これは理科以外の教科にも共通していることです。

理科を進めていく上で大事なのは、二つ目のノートの書き方指導です。これからの理科では、一つの型に従って書くように指導するのです。

どんな実験や観察を行っても、同じ型で記録してあれば見やすいし、どこに書いたか探しやすくなるからです。また、定着してくれば、毎回、ノート指導をしなくても書けるようになり、実験や観察時間を長くとることができるようになります。

では、どのようにノートの書き方指導をしたかを紹介します。
まず、手本となるノートを見せます。拡大投影機があると、一度に全員に見せられるので便利です。コピーして配ってもいいですね。

手本を見るというのは、言葉だけではつかめないイメージを一瞬にして持つことができます。また、「あんなノートを書きたい。」という気持ちと理想像を持たせることもできます。
 
その手本のノートに書かれている基本的な項目は、次のとおりです。

  • 日付(欄外の上に書く) 
  • 単元名(欄外の上に書く)
  • 課題
  • 目的
  • 実験方法 
  • 予想 
  • 結果 
  • 分かったこと

<5年生のノート>

併せて、次のような書き方の型を教えていきます。 

  • 日付と単元名以外の項目は、ノート左側2cmに縦線を引き、その左側に書く。 
  • 目的の内容は、赤い線で四角に囲む。 
  • 線を引く時は、定規を使う。 
  • 実験方法はなるべく図や絵も描くようにする。 
  • 結果は、結果だけを書くように指示し、分かったことと重複しない。
  • 分かったことは、結果を受けて目的に対する答えを書く。

授業開きの日は、ノートの左側2cmに縦線を引いて、基本的な項目を書くとともに、次のページにも縦線を引いて、次回の授業の準備をして終わりになりました。

このように、最初から手本を示し、型を教えていくと、教師が毎回言わなくても、子どもは進んで書けるようになってきます。したがって、1時間の授業の中で一番時間をかけたい実験・観察、考察の時間を、たっぷりとることができるようになります。

忘れてはいけないことは、教えた型をチェックすることです。そして、できていることを言葉で認めたり、赤丸をつけたりして評価していきます。

一度教えたからといって、すぐにできるとは限りません。評価することで、子どもは書き方の技能を身に付けていくのです。

2 実験のための技能を教える

実験のための技能として、解剖顕微鏡や顕微鏡、上皿天びんやアルコールランプの使い方などがあります。これらの技能を、一つの型に添って教えていくと、技能が定着し、確実に使えるようになってきます。

では、実験のための技能習得の型を、6年生の気体検知管の例で紹介します。

  1. 音読する。 : まず、教科書に書いてある使い方を音読します。一文ずつ教師が読んで、子どもが続いて読み、確実に読めるようにします。
  2. ノートに書く。 : 次に、気体検知管の使い方をノートに書きます。新しいページに、「気体検知管の使い方」という見出しを書いて、それを赤線で四角く囲みます。そして、使い方の手順を書いていきます。気体採集器の絵も描きます。つまり、文章だけでなく、必要に応じて絵や図を描くのです。文字だけの記憶より、確実な記憶になるからです。
  3. やって見せる。 : 2で書いた手順に従って、教師がやって見せます。もちろん、教科書通りにやるのですが、教科書では見られない、聞けないものを見せていきます。たとえば、気体検知管をチップホルダーに入れて、回して傷をつけます。この傷を見せ、ある程度力を入れないと傷が付かないことを教えます。また、気体検知管の先端が折れる角度や折れる時の音を聞かせ、実際に見せて聞かせることで安心感も持たせます。さらに、折り口のガラスはどうなっているかを見せ、ゴムのカバーを付ける必要性を理解させます。できれば、拡大投影機でよく見せられるとよいでしょう。次に、気体採集器に気体検知管を差し込む方向も大事です。実際に使う気体検知管の印を見せながら演示実験を進めていきます。このようにして、やって見せた後、質問を受けることも大切です。それは、安全面からも、疑問を持ったまま、実験をさせてはならないからです。
  4. やらせる : 1回目は一斉にやらせましょう。ケースから気体採集器、チップホルダー、ゴムのカバーを出すことから始めます。気体検知管をチップホルダーに入れる、曲げて折る、ゴムのカバーを付ける、気体採集器に取り付ける、という手順を、段階的にチェックしながら一斉に進めます。もし、間違えがあったら、全員の実験を停止し、間違えやすいところとして紹介するようにします。最後に、手順に従ってできたことを評価してほめることも大切です。
  5. くり返す : 気体検知管の実験では、酸素と二酸化炭素を調べることがセットになっています。ですから、2回目は1回目と違う子どもが気体検知管を折ったり、気体採集器を使ったりして、みんなができるように指示します。6年理科では、燃焼前後の気体の組成を調べた後、動物の呼吸や植物の光合成に関連して酸素と二酸化炭素の割合を調べることになっています。そこでは、また違う子どもが実験を担当できるようにすることが大切です。解剖顕微鏡や顕微鏡、上皿天びんやアルコールランプの使い方では、1時間の間に、何回も全員が繰り返して練習させて、定着させましょう。実験技能を教える時は、すべてこの型で教えていきます。また、手順を確実にこなせるようになったら、合格の印を押すなどして評価してあげると、子どもは喜んで実験技能を身につけるようになります。

3 投稿者プロフィール

群馬県藤岡市立鬼石小学校 大谷雅昭先生
子どもと子どもたち、つまり個と集団を相乗効果で育てる独自の「まるごと教育」を進化させると共に、「教育の高速化運動を推進している。また、 「学びの場com」(http://www.manabinoba.com/index.cfm/1,html)の「教育つれづれ日誌」で、子ども自身が成長を実感し、自ら伸びていく様子を綴っている。

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