とりあえず成果を挙げる方法を ~ 優先順位を考え、絞り込む

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目次

1 多忙化と学校の荒れの狭間で

「さっさと仕事を終えて、5時に学校を出て、アフターファイブを楽しみたい。」「楽して成果を挙げたい。」

こんなことを書くと不謹慎に思えるほど、どの学校でもサービス残業が常態化してしまっています。1990年代後半あたりから子供たち・保護者の質が大きく変わってしまい、多くの小学校で学級が荒れ、子供の学力が落ち、保護者対応に追われてしまう状況が続いています。その流れと時を同じくするように事務的仕事も無定見に増加させてしまい、多くの教師が悲鳴をあげています。余裕がなくなった状態で思考停止に陥り、増えていく残業時間に対してどう対処すればよいかを誰も考えなくなってしまう・・・といった悪循環が起こります。仕事は「後手後手」に回ってしまい、悪循環を断ち切れないままです。

○○教育とつくものを列挙すると、
人権教育、環境教育、キャリア教育、情報教育、防災教育、平和教育、福祉教育、消費者教育、食育、性教育、国際理解教育、命の教育、心の教育、図書館教育、ふるさと教育、防犯教育、健康教育・・・(ある方のFACEBOOKのタイムラインから一部借用させていただきました。本当はもっと「○○教育」が書かれてありました)

と、多岐にわたる分野からの教育への要請があり、これらの一部に対応するだけでもたいへんな労力になってしまっています。さらに、「言語活動を充実してほしい」「道徳教育を充実させてほしい」「地域との交わりを」「小学校と中学校の連携を」「スポーツ活動の充実を」と、事細かい要請が次々に寄せられる中、いったい何が大切なのかがわからなくなってしまっているのが現状です。課題が挙がるごとにそれに対応するために重厚な研修を積んでいては、きりがありません。

2 優先順位をつける

これら全ての社会からの要請、行政方面からの要請を無視してしまうというのは難しいですが、何が大切であるのかを十分吟味して、シンプルで効果的な実践を行っていくことを目指したいです。それぞれの重要度に応じて、優先順位を付けてやっていく他はありません。
それにしても、多岐にわたる我々教員の仕事の中で、学校として教師として最も優先しなくてはならない業務は何でしょう?

色々な表現方法があると思いますが、一言で表現すると、「子供を成長させること」ではないでしょうか。これを最優先としなくては、何のために日々多大なリソース(金・時間・人)を注ぎ込んで学校教育を行っているのかが分からなくなってしまいます。パン屋がパンで勝負せずに、看板や包装紙、バイトにきれいなお姉さんを雇う事で勝負をしてもいずれは売れなくなるのと同じで、学校が子供を成長させなければ荒れてくるのは当然です。

では、「子供を成長させる」ために、何をやらなくてはならないか、です。
これも、言いだすと幾通りもの優先課題が出てきます。「話せること」いや「聞くこと」いや「姿勢」いや「清掃」・・・・本当にきりがありません。私はざっくりと絞って、「漢字」と「計算」であると思います。

以下で詳しく述べられているので、ご覧になって下さい。

漢字学習~小学校で落ちこぼさないように! | EDUPEDIA

「小数のわり算」躓きの分析と対応【教材】 | EDUPEDIA

学力保障 ~学校の荒れを防ぐための最優先事項 | EDUPEDIA

3 意外と楽に成果が上がる

漢字や計算の力をクラス全員に定着させるというのは重い課題のようですが、そうでもありません。学力が低かったり、学級が荒れていたりする場合は特に短期的な成果が得られる手法が役に立ちます。なぜなら、レベルが低い時こそ、成果は短期間で上がりやすいからです。学力が崩壊気味であれば、まちがいなく指導を漢字と計算に絞り込むべきでしょう。

探せば、きちんとした積み上げをできる手立てがあります。例えば漢字であるなら、

繰り返し漢字テスト【教材】 | EDUPEDIA

で、ルーチンワークにしてしまえます。印刷さえしてしまえば、後は配布と答え合わせをするだけです。

計算であれば、百マス計算や繰り返しの計算プリントを根気よくさせていくと成果が上がってきます。

計算検定【教材】~筆算の力を積み上げていくために(2) | EDUPEDIA

百ます計算で成果をあげる方法Ⅰ ~少しユル目の百ます計算指導の実際【教材】 | EDUPEDIA

漢字や計算のみならず、やり方次第で、楽に成果が上がることは意外とあります。
漢字同様の方法で、県名もそれほど苦労せずに覚えさせられます。

繰り返し 県名・県庁所在地名テスト【教材】 | EDUPEDIA

体育も成果を出すには手っ取り早いです。

水泳指導~25mをとにかく泳がせる | EDUPEDIA

ひと夏の水泳の短期指導で子供と保護者の信頼を勝ち取ることができれば、2学期のスタートに大きく影響が出ます。
サッカーの授業も、設定をしていけば、意外と多くの児童が得点できるようになります。

サッカー全員シュート(全員得点)達成への道 1 | EDUPEDIA

も、是非お読みください。難しい指導や長い練習をしなくても、多くの子供が得点を生みだせば、クラス全体にぐぐっと力強さが出てきます。

スモールステップという「原則」 | EDUPEDIA

では、スモールステップを作ることが結局は近道で成果が挙がることについて言及しています。

これらの記事以外でも、はEDUPEDIAには比較的楽をして成果が挙がりやすい記事がたくさんあります。あれやこれやと手を出して多忙化に陥ってしまわずに、根本的な部分を確実にかつ、比較的楽な方法で指導し、成果を挙げてしまうのです。そうすると、

子供が成長する → 子供が教師を信頼する → 子供が自信をつけ、子供間トラブルが減る → 保護者も教師を信頼する → 保護者対応が減る → 多忙化が解消され、余裕ができる → 子供と向き合う時間が増える → 子供が成長する → ・・・

という、プラスの循環が生まれてきます。

4 絞り込む

ものすごく立派な取り組みを見ると、あれもこれもと思ってしまいます。それはそれでいい刺激として、自分が立派な教師に成長する姿を常にイメージするべきでしょう。このあたりのことは、

質の高い授業を作っていくために ~ 明示知と暗黙知 | EDUPEDIA

で書きました。立派な授業をするための重要な要素である「学級経営」はけっこう難しいことです。コミュニケーション力を高めるには時間がかかりますし、本人の資質に影響される部分も大きいです。

下のマトリックスでは縦軸に暗黙知(「学級経営」や「知識の使い方」)横軸に明示知(知識的)をとって教師の力量を表したものです(詳しくは上記 ↑ リンクを参照)。暗黙知を獲得する方向へと進む労力と時間に比べると、明示知を獲得する方向へと進む労力や時間は少なくて済みます。とりあえずできて成果が挙がることを見つけて、実行するだけなら、それほど時間はかかりません。そうであれば、まず第4象限を目指すところから取り組むべきではないでしょうか。

自分にとって、あるいは自分の置かれた状況(クラス・学校)にとってすぐにでき、成果が得られやすいものは何であるのかを考え、重点を絞り込むことが必要です。1時間の授業につきひとつの絞り込み、ひとつの単元につきひとつの絞り込み、ひとつの教科に対してひとつの絞り込み、1年間に対してのひとつの絞り込み。短期的に成果が挙がることと長期的に挙がることを分けて考え、短期的な方法をまず優先的に導入するべきです。クラスが荒れ気味であれば、毎日放課後15分間、教室の整理整頓をすることです。きちんとした言葉を使わせることです。

小学生の言葉遣い指導~乱暴な言葉遣いを減らすには?~ | EDUPEDIA

それがとりあえずできて成果が挙がる手法だと思います。

お笑い芸人は、「つかみ」や「鉄板ネタ」が重要であると言います。とりあえず場が和んで観客との関係をつかみ取ることの「つかみ」や、必ず笑いが取れる「鉄板ネタ」は、教師としての自分にとって何なのかをはっきりとイメージしておくとよいでしょう。重厚な研修・自己研鑚も必要であることは間違いないですが、まずは鉄板ネタをモノにして、速く早く成果を出す事(つかみ)は教師にとっても重要であると考えています。「すぐ、楽にできてとりあえず成果が挙がる指導を見極め、優先順位をつける」という手法をもっと取り入れられるよう、学校現場は発想転換をしていく必要があると思います。

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