綾戸智絵の『マイ・ライフ』 「躊躇というゴミが体に悪い。常にポジティブに」で 希望・勇気(ポジティブに生活する)(坂本哲彦先生)

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目次

1 はじめに

この記事は、坂本哲彦先生が運営されているホームページ、「坂本哲彦 道徳・総合の授業づくり」から引用させて頂いたものです。

坂本哲彦先生のホームページはこちら→ http://sakamoto.cside.com/

2 対象

小学校5・6年生

3 ねらい

「ポジティブ」について話し合うことを通して、自分自身の努力と周囲の助け、双方の大切さについて考えを深め、希望をもってポジティブに生きようとする態度を高める。

4 学習内容

(1)自分自身の努力と周囲の助けの大切さを考えること

  • カッコ2にいけない綾戸さんの気持ちや溺れている綾戸さんの気持ち
  • 客席にいた母や先生の気持ちや足をつかまれた若いお姉ちゃんの気持ち
  • 「ポジティブ」=「自分の努力」+「周囲の助け」

(2)希望をもってポジティブに生きようとする態度
* 自分が努力していることとそれを支えてくれている周囲の人の助け
* 自分自身の希望や夢

5 使用する資料 

綾戸智絵さんの小学校の頃のエピソードが2つ短くまとめられたお話。
5年生のときのピアノ発表会。「息を呑むような静寂の中、おおむろに『モーツァルト ケッヘルなんたら』を弾き始めました。第一楽章の繰り返しも終わり、カッコ2に行って第二楽章へ……ところがカッコ1にしか行けません。繰り返し、また繰り返し。客席はどよめきだし、母も先生も真っ青になっています。……」が1つ目のエピソード。「『ええい、この音が悪いんだ』私は勝手な編曲で無理矢理終止音に飛んで、ニタッと笑って第二楽章へ。」と機転を利かせてその場をやり過ごした綾戸さん。

「小学生のとき、海で溺れたこともあります。怖かったね。もがいてももがいてもぶくぶく沈んでしまい、少し気が遠くなり、暗くてじんじんしてきました。……」が2つ目のエピソード。周りで泳いでいた若いお姉ちゃんの足を掴んで助けてもらったのでした。
(P.25 L1 – P.27 L11)

6 6.学習課程(50分授業)

①ポジティブの意味について発表する。(5分)

※はじめに、黒板に「ポジティブに行動する、生きる」と書いて問います。

※発問1:「『ポジティブ』とは、どんな意味だと思いますか?」

※高学年でもあまり意味は知らないと思われます。手を挙げる子どもを2、3人指名して発表させます。この言葉を考えることで、次の資料への期待感を高めます。あまり時間をかけません。

※「ポジティブとは、『積極的』とか『前向き』などの意味があります。@<color>{#ff0000,自ら進んで何かをするときの気持ちや心構え、考え方}などを指すことが多い言葉です。

※「今日は、そのような「ポジティブ」な生活、生き方に必要なことについてみんなで考えてみましょう。」と課題を示して、資料提示に移ります。

※時間がとれるようなら、作者の「綾戸智恵さん」について概説してもかまいません。写真やビデオを提示すれば、思い出す子どもは少数でしょうが、学級に2、3人いると思われます。

②ピアノの発表会でのエピソードについて話し合う。(15分)

※小学校5年生の発表会の方を読み聞かせます。まず、P25 L11まで(「何度繰り返してもカッコ1の最後の音は終止形の音ではなく、また頭のパートへと戻るような音」まで)を読みます。

※発問2:「このときの綾戸さんはどんなことを考えていたでしょうか?」

※実際にピアノの発表会に似た事柄を経験した子どもなら、このときの心情を共感的に理解できるでしょう。おそらく、そのような経験をしたことがある子どもは少数でしょうから、同じような経験を教師の方から提示してやる必要があります。

※たとえば、「サッカーのPK合戦で4対4、最後のキッカーでピッチに立つ自分」「ノーアウト満塁、一打逆転の場面で投げるピッチャーが自分。ノーストライク、スリーボール。ストライクが入る気がしない……場面」「逆に、同点、九回裏、ツーアウトランナー三塁、最後のバッターの自分、ここでヒットが出れば、サヨナラ勝ち。しかし、二度の空振りでツーストライクと追い詰められている……場面」「運動会のリレー、最後のランナー。1位でバトンを受け取ったものの、途中で転ぶ。急いで立ち上がるも、2位のランナーとほぼ並んで走ることに……の場面」「運動会の騎馬戦、一対一で戦う決勝戦。自分は紅組の最後の騎馬。ついに自分の番がやってきた。相手も最後の騎馬。この戦いで勝負が決まる……の場面」などなど。

※このような似た場面を子どもたちの経験を想起させて発表させるという活動を取り入れるのも、綾戸さんへの共感的な理解を可能にする方法の一つでしょう。

※①「緊張し過ぎて、頭が真っ白。何も考えていない。考えられない」②「何とかしてこの場面を乗り越えなくてはならないので、何度も何度も思い出そうと頭をフル回転している」③「誰か助けてくれないかなと、周りの助けを待っている」など、子どもたちの意見を分けながら板書します。どれが正解ということもないのですが、どれも「あきらめないで頑張ろうと思っていた」とまとめます。

※そして、「くじけず、あきらめず、何とか頑張っているその気持ちが『ポジティブ』の意味するところである」と押さえます。

※その後、「ええい、この音が悪いんだ」私は勝手な編曲で無理矢理終止音に飛んで、ニタッと笑って第二楽章へ……子供の頃から常にポジティブだったのかな。」(P.26 L3)までを読み聞かせます。

③海で溺れたときのエピソードについて話し合う。(15分)

※P.27 L5 「……意識が無くなったって掴んどけ、アヤドォ~」まで読み聞かせます。

※発問3:「気が遠くなりかけたとき、『もうあかん』とは思いませんでした。『これ、これに摑まれば……。このままふぅーっとなったら負けるで。意識が無くなったって掴んどけ、アヤドォ~』とあります。発表会のエピソードと溺れたエピソードでの違いは、どんなところでしょうか?」

※同じような場面が並んでいる場合には、それらの相違点か共通点を考えさせることが「思考を深める」ことにつながります。またそれは、「学ぶ内容を得させる」ことにもなることが多いものです。ここでは、双方の場面の「違い(相違点)」に着目させ、本時の学習内容を獲得させることにしましょう。

※①発表会は命にはかかわらないが、溺れたのは命にかかわるくらい重要だということが違う。②発表会は見せる場面だけど、泳ぐのは人に見せるものではなかったということが違う(これはあまり出ない意見ですね…)。③発表会は大勢の人の中で起こった出来事だけど、溺れたのは周りに知った人がいないくらい少数の人の中で起こった出来事だということが違う。④発表会は自分が解決したが、溺れたのは掴んだところまでは自分の行動だけどそれ以後は人の助けで解決されたということが違う……。などの意見が出てくるでしょう。着目させるのは③の人の助けによって危機的な場面が解決されたことです。

※それぞれの違いを対照的に板書して、比べさせながら、「ポジティブに生きる(積極的、前向き、意欲的に行動する、生きる)ためには、
「自分の努力、考え方、行動」+「周りの人の助け、支え」が必要、と話します。そして、更に付け加えて教師の思いを伝えます。

※「発表会の場面で何とか乗り切れたのは、普段から一生懸命ピアノの練習をしていたからで、決して『適当(テキトー)』に練習をしたり、『適当(テキトー)』にその場をやり過ごしたりしたのではないのです。普段の練習をいい加減にしている人は、綾戸さんのように機転の利いた乗り越え方さえもできなかったと思います。それだけ『普段の自分の努力は大切』です。」

※「さらに、溺れた場面でのことを考えると、『ポジティブに生きる(積極的、前向き、意欲的に行動する、生きる)』ためには、普段の努力や心構えだけではだめで、それに加えて『周りの人の助け、支え』が必要だと考えられます。『ポジティブとは、一人一人の考え方だけにとどまらず、周りの人との関係も含めた生き方』と考えることができそうですね。」とまとめます。

④自分の生活を振り返る。(10分)

※発問4:「(もうだめだとあきらめたりくじけたりしそうになるような)『自分が努力していること』にはどんなことがありますか?それをプリントの(1)に書きましょう。そして、くじけそうになるとき、自分を助けたり支えたりしてくれる人やその助けを(2)に書きましょう。その二つがあってこそ、自分の夢や希望が叶っていくのです。」

※スポーツ少年団の活動、学習や習い事の内容が出てくるでしょう。教師はどんな努力事項が書かれても、それを丸ごと受け止め、「そうだね、、○○さんは、一生懸命頑張っているんだね。そして、それを助けてくれている□□さんにも気付いているんだね。すごいよ、それ。」などとつぶやきながら、教室を回ります。

※教師の経験があれば、それを話すのも効果があると思います。

実践者プロフィール

坂本哲彦(さかもとてつひこ)
山口県山口市立徳佐小学校教頭。
1961年生まれ。
山口大学卒業、山口大学大学院修了。
山口県内公立小学校教諭、山口大学教育学部附属山口小学校教諭、山口県教育庁指導主事等を経て、現職。

自身の経験を活かして、道徳実践をHP、メルマガで数多く配信している。
坂本哲彦 道徳・総合のページ
http://sakamoto.cside.com/

(編集・文責:EDUPEDIA編集部 坂本一途)

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