大仁田厚の『高校生日記』 「一通の手紙」で思いやりの心(坂本哲彦先生)

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目次

1 はじめに

この記事は、坂本哲彦先生が運営されているホームページ、「坂本哲彦 道徳・総合の授業づくり」から引用させて頂いたものです。坂本哲彦先生のホームページはこちら→http://sakamoto.cside.com/

2 この記事で紹介する実践

資料:『高校生日記』「第11章 一通の手紙」 P.159-163

著:大仁田厚 株式会社テイ・アイ・エス   2000年5月11日

概要

あらすじ

「いくつになっても青春はある!自分自身の可能性を求めて26年ぶりの高校生活に突入した大仁田厚。そこで彼は様々なことを体験し、感じ考えることになる。学校内でのとまどいと感動、生徒たちとの心の触れ合いと反発、先生たちとのやりとり、眠い目をこすりながらの試験勉強……。41歳の高校生として、その想いを胸いっぱいに綴った大仁田厚の青春記。」(表紙カバーから)です。

対象

小学校5・6年生

ねらい

「小さな達成感」について話し合うことを通して、思いやりの心と感謝の気持ちが互いに呼応することを知り、相手の立場に立って親切にしようとする心情を高める。2-(2)

3 学習内容

(1)人を思いやることのよさを感じ取ること

  • 入院生活を送る平山さんの気持ち
  • 平山さんの感謝の気持ち
  • 「思いやり」と呼応する「感謝の気持ち」

(2)相手の立場に立って親切にしようとする心情

  • 平山さんが教えてくれたもの
  • 誰かのために何かをやった経験、今後の意欲
  • 誰かに何かをしてもらった経験、感謝の気持ち

4 学習過程

①高校生日記の概要について説明を聞く。(10分)

大仁田厚さんについて知っている小学生は少ないと思いますから、人物の説明も兼ねて、40歳になって高校生活を始めた人の物語であることを話して聞かせます。

プロレスに詳しい教師なら、大仁田さんの実績や政治家としての経歴などに触れてもよいと思われますが、大切なのは、 40歳になって高校生活にチャレンジしたこと、また、それをやり遂げたことなどを伝えることです。

60分授業なら、また、朝読書の時間を活用して、第3章「26年ぶりの試験勉強」や、第5章「クラスになじめてきた」などを読み聞かせることもよいと思われます。

②入院生活を送る平山さんの気持ちについて話し合う。(15分)

短い資料ですから、一度にさっと、読み聞かせます。

発問1

「6年間の入院生活を送っている平山さんの気持ちを想像してみましょう。」

この資料は、平山さんの病気について詳しくは書かれていないので、具体的な事実や状況から心情を推し量ることはできません。「6年間入院」「27歳女性」「十万人に一人という難病」という手がかりしかありませんが、大仁田厚がけがの治療をしたときの状況も述べられていますので、これらをもとに、自分の病気やけがのときのことをしっかり思い出させ、また、家族や知り合いのそれについて感じたことなども思い出させながら発表させます。

言葉にすると「悲しい」「何で自分だけが…」「早く治したい」「治ったら○○したい」など短くてうまく伝わらない、まとまらない内容になると思われます。教師の補助説明や付け足しなども織り込みながら、少しずつ彼女の「苦しさ・つらさ・やるせなさ」などを感じ取らせます。

「自分だったら…」「今まで自分が病気だったとき…」などが補助発問になります。

③平山さんが教えてくれた物を話し合う。(15分)

発問2

「『そうした物を教えてくれたのは、実は平山さんだったのだと思う。』とありますが、平山さんが教えてくれた物とは何だと思いますか?」

直前の文章に書かれているので、国語的な読み取りになります。

  • 「小さな達成感」
  • 「誰かのために、何かをやることの尊さ」
  • 「全員で心を合わせることによる連帯感」

の三つをまず、黒板に書きます。そして、

発問3

「それを感じることができたのは、どうしてだと思いますか?」

「平山さんのために何かをやったから」「最後までやり遂げたから」「平山さんに喜んでもらえたから」「みんなで協力できたから」などが出てきます。そして、それらはすべて「平山さんの気持ちをみんなで思いやって、自分たちに何ができるのか考えて行動したから」「平山さんの感謝の気持ちをうれしく受け止められたから」とまとめます。教師がまとめる前に、それに関連した、あるいはよく似た意見が出たらそれを再度みんなに紹介してまとめます。

思いやりの心は、相手からの感謝の気持ちによって一層大きく深く温かくなることを伝え、黒板に

「思いやりの心」⇔「感謝の気持ち」

と書きます。

人を思いやることのよさは、それを受け入れ快く思ってくれる相手の感謝によって、一層強く感じ取れるのです。

④自分の生活を振り返る。(5分)

「思いやりや親切を受けた経験、あるいは反対にできた経験を思い出してみましょう。そして、受けたときには、素直にありがとうの気持ちが伝えられたでしょうか?」

書く活動を行わず、ゆったりと思い出す時間を取るだけでよいと思います。教師の経験があれば、それを話すのが効果的だと思います。

5 編集後記

思いやりや感謝の心を身につけていくことは、小学校高学年になる前に既に学んでいるかとは思います。しかし、高学年で改めてこの2点に関してそれぞれ確認し、その相関関係に気づかせてあげることが大切だと思いました。

本実践のような道徳の時間を通して、思いやりをもった行動とそれに感謝することができる子どもに成長していくきっかけになれば良いと思います。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 阿部由和)

6 実践者プロフィール

坂本哲彦(さかもとてつひこ)
山口県山口市立徳佐小学校教頭。
1961年生まれ。
山口大学卒業、山口大学大学院修了。
山口県内公立小学校教諭、山口大学教育学部附属山口小学校教諭、山口県教育庁指導主事等を経て、現職。

自身の経験を活かして、道徳実践をHP、メルマガで数多く配信している。
坂本哲彦 道徳・総合のページ
http://sakamoto.cside.com/

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