「国際協力と日本の役割」指導のポイント-元青年海外協力隊員の話を具体的事例に-(はなまるサポート)

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目次

1 概要

この実践は(株)教育同人社の許可を得て、「はなまるサポート」の学習指導ポイント一覧の実践(2012年3月号)を転載しています。 実践の続き(無料)は最下部のURLからご覧ください。 また、以下より実践をPDFでダウンロードできます。
添付ファイル

2 はじめに

6年生の社会の学習を締めくくる最後の小単元です。学習指導要領社会編6年内容(3)の解説では、調べる内容を示し、さらに「・・・具体的事例を通して調べ、・・・」とあります。適切な具体的事例を見つけられるということも、社会科の指導力の大きな要素です。今回は、青年海外協力隊の経験者であるY先生(都内の公立小学校の先生)へのインタビューを取り上げます。青年海外協力隊の活動は、各社の教科書に取り上げられています。教科書と合わせて、授業の資料としてぜひ使ってみてください。

3 (1)学習指導要領の内容と解説より

「調査したり地図や地球儀、資料などを活用したりして調べ、」とは、この単元での学習の仕方を示しています。また、イを指導する留意点として次のようにあります。

4 (2)青年海外協力隊での活動とは

① 青年海外協力隊とは

JICAは「独立行政法人国際協力機構」のことで、ODA(政府開発援助)の二国間援助のうち技術援助を担う組織です。(図1外務省HPを参考に)青年海外協力隊は、JICAから派遣され、発展途上の国々でその国の要請に応え、技術の援助を行っている人々です。正に、顔の見える国際協力をしています。

※外務省HP
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/hyouka/kunibetu/gai/seinen/th01_01_index.html

② 元隊員Y先生へのインタビュー

Q1.協力隊になろうと思ったきっかけは?

A.なぜだか覚えていませんが、子どもの時から、海外でボランティアをすることに興味がありました。

自分のことを全く知らない人たちの中で、どれだけできるか挑戦してみたかったからです。

Q2.いつ頃どこの国に派遣されたのですか?

A.平成16年12月~平成18年12月。西アフリカのガーナです。

Q3.仕事の内容は?

A.首都アクラから車で4時間ほどのアッシン・ファソという町で、公立高校(オビリ・イエボア高校)の理数科教師をしていました。 実際には、1年生、2年生の総合理科を担当しました。総合理科は、日本の中学校の理科のように、物理、化学、生物、地学が混ざっていて、さらに、保健・衛生の内容もありました。「生活に役立つ科学」がコンセプトです。

Q4.生徒たちの様子はどうでしたか?

A.日本と変わりません。まじめな子はまじめだし、勉強熱心ではない子はだらだらしていました。その中でも、高校への進学率が二割程度という状況を理解し、熱心に勉強している生徒もいました。授業の中では、たとえ間違っていたとしても、堂々と自分の意見を発表できる生徒が多くいてすばらしいと思いました。自宅から通っている生徒(約6割)は、ほとんど家の手伝いや家計を支えることをしていました。学校に来る前、毎朝2時間ほど、家族全員のために井戸から水くみをしている生徒もいました。放課後、マーケットで物売りをしている生徒もいました。家族のご飯をつくるのは当たり前です。寮生活している生徒は、自分で学費を払ったり、家事をこなしたり、生活に必要なことは自分でやっていました。また、お金がなく、お昼ご飯代を節約していて、いつもお腹をすかせている生徒もいました。

Q5.生活をしてみて驚いたことは?

A.生活では、水を買うことです。日本のように、水道がしっかりしていません。水道が通っているのは大都市だけです。地方では、井戸を使用します。水がきれいではないので、そのまま飲むことができません。売っている水にも値段によるちがいがありました。

食事は、道ばたで売っていたり、手で食べたり、初めはびっくりしましたが、そのうちに慣れて、ガーナ人のまねをして食べていた自分に驚きました。

天候は、暑い!それも蒸し暑い。ただ、そこにいるだけで体力を消耗します。気温は30度以上。寒いといわれている雨季でも20度はありました。

時間については、少し遅れても気にしません。2時間遅れは基本です。「アフリカンタイム」などといって、実におおらかです。様々な原因があるので、そのうち、気にしたり、いらいらしたりすることが無駄なことに気づきます。

病気では、マラリアがあります。蚊取り線香を毎日焚いて、蚊帳の中で寝ました。日本では使うことのない道具を生まれて初めて使用しました。

Q6.日本と違うことは多々あったと思うのですが、「同じだな」と感じたことはありますか?

A.同じというか意外だったことです。経済的に貧しい国なので、たくさんの人が困っていて、笑顔が少ないのかと思っていました。確かに、経済的に、或いは不便な生活に困っていることは多いですが、それ以上に、たくさんの笑顔が見られました。思っていた以上に、前向きに、日々の生活を生き生きと過ごしていました。

Q7.派遣された国のために役立つことが使命だったと思いますが、実際に行ってみて成果はありましたか?

A.教育の成果を2年という短期間ではかることは非常に難しいと思います。 はっきりとしたものは示しにくいですが、個人的には・・・

1つ目は生徒たちに対してです。時間を守ること、約束を守ることの大切さを伝え、生徒たちにその大切さを実感させることができたことです。特に始業時間やテストの時間を守ることは厳しく指導しました。それから、普段、あまり行われない理科の実験を行ったり、見せたりすること、模型や図など、あまり活用されていなかった教材を活用した授業をすることができました。また、長期休みを利用して、複数の学校を訪れていろいろな実験を行う「実験ツアー」を行ったり、学校を借り切ってサマースクール行ったり、普段とは違う学習の機会を与えることができました。

A.2つ目は、同僚に対してです。ガーナとは違うスタイルの授業を提案できました。教材の活用法、テスト問題の作成の仕方なども提案しました。

3つ目は、ガーナの教育省に対してです。二年間の活動のまとめとして、同期隊員たちと協力して、私たちが見つけた教育の問題点をレポートにまとめ、直接、首都アクラにある教育省に行き、報告と意見交換を行うことができました。

実践の続き

続きは以下のURLよりご覧ください。
http://www.djn.co.jp/support/special/point/docs/2012/3/4/4.php

5 実践者紹介

加藤 良子
初等教育研究所。
元公立小学校教諭、23年3月末で退職。
38年間に4区5校で勤務する。各区で社会科部に所属。地域教材を開発して、各学校で実践してきた。趣味は、江戸の歴史や文化に親しむこと。月に数回、江戸東京博物館で展示ガイドボランティアをしている。

6 サービス紹介

教育同人社の「はなまるサポート」では、若い先生のための授業ヒント集として、毎月の学習指導ポイントを細かく解説をしています。また、不明点や疑問点などを無料で相談できます。
http://www.djn.co.jp/support/

(編集・文責:EDUPEDIA編集部 水島淳)

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