生徒同士の人間関係を改善する グリーンカードキャンペーン~お互いのいいところを見つけよう~(松尾奈保子先生)

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作成者: EDUPEDIA編集部 (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

本記事は、中日新聞東京本社と受賞者から許可を得て、第16回「がんばれ先生!東京新聞教育賞」の受賞論文を掲載させていただいております。
http://www.tokyo-np.co.jp/event/kyoiku/
また、他の受賞論文もご覧いただけると幸いです。
第16回「がんばれ先生!東京新聞教育賞」の受賞論文 まとめのページ
http://edupedia.jp/entries/show/1730

2 生徒同士の人間関係を改善する グリーンカードキャンペーン~お互いのいいところを見つけよう~

3 はじめに 

中学生という年代にある生徒たちは、自分に自信が持てず、不安な状態で他者と接してしまうため、自分と違う存在をなかなか認めることができません。その結果、他者を攻撃することによって、自分の弱さを隠そうとしています。それが、いじめの構造とも言えるのではないでしょうか。

しかし、他者を傷つけることは、言うまでもなく、あってはならないことです。ましてや、自分作りという、人生においてとても重要なこの時期には、自分の周囲の他者のさまざまな人格に触れ、それを受け入れ、自分を豊かにしていくべきです。調布市立神代中学校では、自分の周囲にいる他者の長所、美点を発見し、お互いに理解することを心がけようと、日本サッカー協会の取組を参考にして、『グリーンカードキャンペーン』という取組を第1学年生活委員会中心で、行うことにしました。

4 グリーンカードキャンペーンの取組

(1) グリーンカードとは… <日本サッカー協会HPより>

日本サッカー協会がU-12以下の選手の大会を対象にフェアプレーを推進するために導入しているカードで、審判がフェアプレー精神を発揮した選手に対してグリーンカードを示します。例えば、ケガをした選手への思いやり、意図していないファウルプレーの際の謝罪や握手などにグリーンカードが示されます。

(2) グリーンカードキャンペーンを行うまでの経緯 

本校の生活委員会は、クラスや学年の生活の規律をしっかりさせるために、生徒が活動する委員会で、主な仕事は、チャイム着席チェックや服装の乱れへの声かけ、挨拶運動などです。今回の対象学年は、中学1年生ということで、1学期は、それほど大きな生活の乱れもありませんでしたが、2学期になり、少々乱れが見え始め、後期の生活委員会で、そのことが話題となり、今の生活をより良くするにはどうしたらいいかを、生活委員会で生徒達と考えました。

特に、気になっていたのは、チャイム着席、服装などの規律の面もですが、それよりも、クラスメートに対する言葉遣いの乱れ、悪口、そして、放っておけば、いじめに発展しかねない友人への嫌がらせなどでした。しかし、直接、それを生活委員一人一人の生徒が呼びかけても、なかなか改善はしない上に、友人への態度などは、生徒同士では、チェックすることのできない難しい問題でした。また、いつも生活委員は何かを点検して、注意ばかりしているというのも、取組がプラスでなく、あまり良くないという意見が生徒から出ました。

さらに、友人への悪口や嫌がらせは、自分にとって不快だと思うことに対して、出てくるものだという視点に立って考えてみると、それとは反対のことを自分たちが心がけることによって、その学年の空気は変わるのではないかいう意見にまとまり、このグリーンカードキャンペーンに取り組んでみようということになりました。

(3) 寸劇によるグリーンカードキャンペーンの紹介

まず、今の学年の状態を一人一人の生徒に自覚してもらい、この『グリーンカードキャンペーン』の目的を知ってもらうために、学年集会において、生活委員会による『グリーンカードキャンペーン』を紹介する寸劇を行いました(図1)。

寸劇では、例えば、ゴミをポイ捨てする生徒、そのゴミを見て見ぬふりをする生徒、拾ってゴミ箱に捨てる生徒が登場します。その際、ゴミをポイ捨てする生徒にはレッドカード、見て見ぬふりの生徒にはイエローカード、拾った生徒にはグリーンカードが審判によって、提示されます。また、一番重要なのは、そのゴミを拾うというグリーンカードに値する行動をした人を見ている生徒です。その人のいいところを発見するのが、この取組の一番の目的であることを寸劇で強調しました。

練習する時間もあまり取れず、失敗あり、笑いありのドタバタ寸劇でしたが、学年の全員がとても温かい雰囲気で、この寸劇を観ていて、このキャンペーンは快調なスタートを切ることができました。

(4) グリーンカードキャンペーンの方法

毎日の学校生活の中で、グリーンカードに値するような行動をした人を、生徒一人一人が心に留めておきます。帰りの学活で、班ごとに自分が心に留めておいた人を出し合い、一人決めます。それを発表し、グリーンカードに値すると生活委員が認めた場合、その班にグリーンカードが発行されます。今回の取組で、大切なのは、グリーンカードに値する行動をすること以上に、それを発見することに意味があることを強調しました。そして、グリーンカードを廊下に掲示していきました(図2)。

また、ポスター作りも各クラスで呼びかけて、廊下に掲示しました(図3)。これも、生活委員会が作ってしまうのではなく、あくまで生徒全員で、学年全体を良くしていこうという取組の意図として、呼びかけたところ、クラスで2~3人ずつの参加があり、また、その完成されたポスターを見てみると、キャンペーンの意図がしっかり伝わっていることも、よくわかりました。

5 グリーンカードキャンペーンの成果

寸劇で、わかりやすくキャンペーンの導入ができたので、すぐに生徒たちは、このキャンペーンに、非常に素直に、積極的に取り組んでいました。中には、わざと良いことをして、クラスメートにアピールする姿もありましたが、生活委員会では、それでも、良い行いをして、みんなに認めてもらおうとするのは、いいことだと捉えることにしました。また、クラスや学年の雰囲気も日々良くなり、他者への見方がプラス志向になり、人との関わり方において、かなり成長していることが感じられました。

さらに、この取組を行っている生活委員も、悪いことの点検・注意をする役割ではなく、みんなの良い行い、その発見者の認定ということで、とても生き生きと仕事をしていたので、さらによかったと思います。

そして、一番の目的である、クラスメートの長所、美点を発見するという目的は十分に達成されました。3学期に行われた、中学で初めての移動教室である長野県木島平でのスキー教室の三日間も、全体的に温かい人間関係の中で、より友情や団結を深めることができました。帰校後、『グリーンカード in 木島平』というスペシャルバージョンの取組も行って、三日間の良い行いを発見し合いました。

最後に行ったクラスごとの集計では、予想をはるかに超え、ほぼ全員の生徒が、『グリーンカード』に値する行いもしていたし、その発見者にもなっていることがわかり、改めて、成果を確かめ合いました。また、1人1人の感想には、「自然に人のいいところを発見できた!」「人のことを思いやって行動できた!」と、このキャンペーンを通して、人間関係が大いに改善されたことがわかり、生活委員同士で喜びを分かち合いました。
1年最後の学年集会では、生活委員会の委員長が全員に協力のお礼と成果の発表を行い(図4)、いよいよ自分たちは先輩になるので、この気持ちを持ち続けていこうという話をし、2年生に進級しました。キャンペーンは1年終了まで、個人参加の形で続けました。

6  終わりに

学校は、教師も生徒も多忙極まりなく、授業、行事、部活動などで日々があっという間に過ぎ去ります。そのような大変な日々の中ではありますが、今回、このキャンペーンを生徒と一緒に取り組んで、本当に楽しく、充実した取組を行うことができました。

一番感じたことは、やはり学校は生徒が主役なので、その主役が大いに活躍しなければならず、ただ「いじめはいけません。」と教師が口で言うのは教育ではなく、こうした取組を生徒と試行錯誤しながら、教師も生徒もともに成長していくことが教育であることを、改めて強く感じました。今後も、多忙な日々を送りながらも、アイディアを活かした取組を通して、生徒と共に悩み、考え、実践し、笑顔の絶えない学校作りをしていきたいと思います。

7 実践者プロフィール

調布市立神代中学校 主任教諭 松尾奈保子
第16回「がんばれ先生!東京新聞教育賞」受賞

8 引用元

第16回「がんばれ先生!東京新聞教育賞」受賞論文『生徒同士の人間関係を改善する グリーンカードキャンペーン~お互いのいいところを見つけよう~』(調布市立神代中学校 主任教諭 松尾奈保子)より引用
「がんばれ先生!東京新聞教育賞」
http://www.tokyo-np.co.jp/event/kyoiku/

本論文は中日新聞東京本社と受賞者から許諾を得て転載しております。
他の受賞論文はこちら→( http://edupedia.jp/entries/show/1730

9 東京新聞教育賞について

「がんばれ先生!東京新聞教育賞」は、東京都教育委員会の後援を受け、平成10年に東京新聞が制定したものです。

学校教育の現場で優れた活動を実践し、子どもたちの成長・発達に寄与している先生方の実像は、ともすれば教育に関わる様々な問題や事件の陰に隠れ、社会一般には充分に伝わっておりません。本賞は、子どもたちの教育に真摯に取り組む「がんばる」先生の実践を募集し、それを広く顕彰・発表することで、先生自身の更なる成長と、学校教育の発展に寄与することを目的としています。

募集は6月から10月中旬にかけて行われ、教育関係者らによる2段階の審査を経て、翌年3月に東京新聞紙面紙上にて受賞作品10点を発表します。受賞者には、賞状・副賞ならびに賞金(1件20万円)が贈られます。

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