20分で指導可能な防災体験プログラム集

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目次

1 はじめに

本プログラム集は、都立高校や小中学校で実施した「防災体験学習」のうち、20分程度の短時間で指導可能なプログラムを整理し、指導目的や必要機材、指導内容、協力いただける指導者(防災関係機関)等をまとめたものです。

防災教育においては、指導目標を明確にしたうえで積極的に体験的プログラムを取り入れることが児童生徒の学習成果向上につながります。

本プログラム集が、これから防災教育を実施される教員の方、学校を支援する様々なボランティアの皆様の参考になれば幸いです。

*PDFのダウンロードはこちら→ 添付ファイル

2 プログラム集

以下、14個のプログラムを紹介します。

①起震車 / 煙体験セットによる災害模擬体験


目標:地震の揺れや煙を体験し、適切な安全行動をとることができるようになる。
根拠:地震発生時、火災(煙)発生時に適切な安全行動をとり、身を守るため。
物品:起震車、煙体験セット等
設営:校庭、体育館脇等 ※雨天時を考慮し屋根があると良い。
担当:消防署・防災課に指導協力を依頼する。車両貸出申請は早めに行う。
方法:□指導員の指示に従い整列し、説明を受ける。
□起震車・煙体験セットを体験する。
□体験の順番等については指導員の指示に従う。
指導:◆地震の揺れや煙についての理解を促す。
◆事前に具体的な安全行動を示す。
◆起震車、煙体験セット内で安全行動をとるよう指導する。
確認:(1)地震の揺れや煙について正しく理解しているか(揺れ方、煙の特徴等)
< Y・該当なし・N >
(2)安全行動について正しく理解し、行動できているか
< Y・該当なし・N >

②傷病者搬送体験


目標:多数の傷病者や火災発生に伴う、緊急搬送の必要性を理解する。
根拠:傷病者が多い場合や教職員だけでは対応できない場合、生徒の協力も必要。
物品:担架、毛布、その他消防からの指示による。
設営:体育館、オープンスペース、武道場等
担当:消防署に指導協力を依頼する。
方法:□指導員から、担架搬送の方法について展示説明を行います。
□数人1組程度で、実際に生徒を担架へ乗せ、上げ下げ及び数歩の移動を体験。
指導:◆ふざけて落下させたりしないよう、十分に注意してください。
◆出来るだけ多くの人で運ぶよう指導してください。
◆可能であれば、徒手搬送(引き摺る)についても展示・指導してください。
確認:(1)指導員の説明を聞き、傷病者搬送の必要性を理解したか。
< Y・該当なし・N>
(2)適切な方法、姿勢で搬送法を行っているか。
< Y・該当なし・N>

③三角巾を用いた応急手当体験


目標:負傷者に対して、積極的な声かけと応急手当が行えるようになる。
根拠:生徒による率先した応急手当が傷病者のいち早い苦痛の軽減につながるため。
物品:三角巾、その他消防からの指示による。
設営:体育館、オープンスペース、武道場等
担当:消防署に指導協力を依頼する。
方法:□指導員から、三角巾による応急手当の必要性を説明します。
□三角巾を配置し、展示・体験による負傷者に対する応急手当を体験します。
□2人~3人1組(男女別)を原則としますが、三角巾の枚数により多少前後します。
指導:◆三角巾による適切な患部の保護、被服、固定等を指導します。
◆三角巾処置の最中は傷病者役の患部を意識して、声をかけるなどの配慮もできるよう、指導します。
◆三角巾は衛生を保つため、床に広げたり、丸めたりせずきれいに扱うことを心がけるよう、指導します。
確認:(1)三角巾による応急手当の必要性を理解できているか。
< Y・該当なし・N >
(2)三角巾による適切な応急手当ができているか。
< Y・該当なし・N >

④災害時のトイレについての体験学習


目標:災害時におけるトイレの大切さ、体調管理の重要性がわかる。
根拠:被災後の健康維持のため、トイレ・排泄について正しい理解が必要であるため。
物品:緊急トイレ(携帯型トイレ)、プロジェクター・スクリーン
設営:体育館、オープンスペース、武道場、AV教室等
担当:防災課、またはNPO法人日本トイレ研究所(03-6809-1308)に指導協力を依頼する。
方法:□指導員から災害時のトイレについて説明します。
□簡単な展示・体験等で災害時のトイレについて指導します。
指導:◆災害時のトイレの必要性、体調管理の重要性についての指導をお願いします。
◆複数人で協力して作業することの大切さについての指導をお願いします。
確認:(1)災害時におけるトイレの重要性について理解できているか。
< Y・該当なし・N >
(2)健康維持との関係、よりよいトイレ環境について具体的にイメージできるか。
< Y・該当なし・N >

⑤非常食づくり、試食体験


目標:ストレスでなくなる食欲をカバーできる、おいしい非常食について理解する。
根拠:食事を取る行為がリラックスにつながるため、食事の大切さを伝える必要がある。
物品:各種非常食、はし・皿・手指消毒液等(分量は随時調整します)、ポット2台
設営:①1クラスにつき必要量のお湯を用意します。※ポット1台程度
②1クラス1セットになっている非常食を取り出し、作ります。
③前のクラスが次のクラスの非常食を作り、自分たちで配食・試食します。
(複数のクラスで実施する場合は①~③のローテーションで実施してください)
担当:教員等で指導可能、防災課・自主防災会等に指導協力を依頼する。
方法:□希望者に「配食」「非常食作り」等を依頼し、残りは展示内容の見学、試食
□非常食の中にスプーンが入っていますので、それを使って取り分けます
□作られた非常食は可能な限り、食べきってください。また紙コップ等は可燃物、その他のものは不燃物など、分別を徹底してください。
指導:◆災害時でも、しっかり食事をとることの大切さを伝えてください。
◆いろいろな種類があること、おいしいものもあることを伝えてください。
確認:(1)非常食を正しい手順で安全に作ることができるか。
< Y・該当なし・N>
(2)限られた量を適切に配分することができるか。
< Y・該当なし・N>

⑥災害時におけるあかりの大切さ体験学習


目標:災害時における光(あかり)の大切さを理解する。
根拠:災害による停電時等に備えた備蓄や、冷静な行動ができることが重要であるため。
物品:ケミカルライト「防災用簡易ライト」、化学発光学習キット「ルミキット」ほか、長机×2、ホワイトボード×1、洗浄済みペットボトル×生徒数
設営:体育館等 ホワイトボード、机、ライトのセッティング
担当:株式会社ルミカ(03-5569-6080)に指導協力を依頼する。
方法:暗闇の怖さ、あかりの大切さについて説明を行います。停電時(震災時)にあかりをとる方法について考えます。ケミカルライトを実際に設置し、夜間に備えます(できれば生徒、または指導員)
指導:◆光源としてケミカルライトという選択肢があることと、その有効な活用方法を
伝えます。
確認:(1)あかりの大切さとそれぞれの光源の長所・短所を理解できているか。
< Y・該当なし・N >
(2)ケミカルライトを有効に活用できるか(実際の設置等)。
< Y・該当なし・N >

⑦応急救助・救出体験


目的:近隣地域の負傷者救護等について、高校生が協力できることを理解する。
根拠:大規模災害における応急救助・救出には若い力が必要となるため。
物品:人形・机・イス・木材・ジャッキ・バール・ブルーシート等
設営:体育館 ※床面を傷つけないようブルーシート等を敷いて実施する
担当:消防署、消防団に指導協力を依頼する。
方法:□負傷者(人形)の安全を確保しながら、バール・ジャッキ等で救出する
□机・イス・木材等は人力では持ち上げられないという想定の元で行う
□クラスから希望者数名のグループで行い時間があれば数グループ行う
指導:◆応急救助の必要性についての指導をお願いします。
◆可能な範囲で結構ですので、なるべく多くの生徒に体験をお願いします。
◆資器材の安全な取り扱いについて指導をお願いします。
確認:(1)負傷者の安全に十分配慮しているか。
< Y・該当なし・N >
(2)グループ内で協力し、声をかけあって救助作業を行っているか。
< Y・該当なし・N >

⑧災害時の情報収集伝達とコミュニケーション体験


目的:災害時の情報収集伝達とコミュニケーションの難しさについて理解する。
根拠:各種の支援活動で重要な情報収集と伝達が正しく行えることが重要であるため。
物品:災害情報収集伝達ゲーム用カード
設営:体育館等
担当:災害救援ボランティア推進委員会(03-6822-9900)に依頼する。
方法:生徒に災害情報が記載されたカードを配布し、制限時間内にペアとなるカードを探し出せるかどうか、ゲーム形式で情報収集伝達とコミュニケーションの難しさ、大切さについて学習します。
指導:◆災害時の情報収集伝達で起こりやすいミスマッチや、ミスコミュニケーションの事例を紹介します。
◆生徒1人につき1枚のカードを配布します。カードはペアになっており、クラス内にペアとなるカードを持つ生徒がいるので、声かけ等をしてペアとなるカードを探します。全員見つかるまでの時間をクラス対抗で競います。
確認:(1)災害時の情報収集と伝達について、正しく理解しているか。
< Y・該当なし・N >
(2)積極的にペアづくり(課題解決)に取り組むことができているか。
< Y・該当なし・N >

⑨避難所開設体験


目的:学校が避難所となることを理解し、避難生活での体調管理ができるようになる。
根拠:帰宅困難や自宅の被害で体育館や教室に寝泊りを余儀なくされることもある。
物品:体育用マット、ダンボール、毛布、ブルーシート等
設営:体育館等 物品を指定エリアに配置します。
担当:防災課等に指導協力を依頼する。
方法:□指導員から避難所で想定される睡眠、プライバシーについて説明します。
□マットや毛布、その他その場にある資材を使って、自分たちで寝るスペースや着替えスペースを考えてもらいます。
□全員、一度はマット等の上で寝てもらいます(床の固さ、寒さの体験)。
指導:◆睡眠はとても大切ですが、体育館や教室では難しいことを伝えてください。
◆外部から避難者を無条件で受け入れた場合、プライバシーや安全の確保が難しいことも伝えてください。安易に教室を施錠することはできません(非常の際の対応や、勝手な教室利用を避けるため)。
◆少ない資材でも、工夫をする(床側を断熱する、毛布等は隙間をなくす、新聞紙を衣服や毛布の間に詰める等)ことで暖をとれることも伝えてください。
確認:(1)避難所の特徴、避難生活の厳しさ等について正しく理解できているか。
< Y・該当なし・N >
(2)体育館等での就寝体験に、限られた資材でも取り組むことができているか。
< Y・該当なし・N >

⑩非常持ち出し袋作成体験


目的:自分や家族にとって適切な非常持ち出し袋を作成することができる。
根拠:防災グッズは各家庭、各個人において必要なものが異なるため。
物品:教材「うさぎ一家の防災荷造り」ほか(EDUPEDIA に掲載※予定)
設営:物品を指定エリアに配置します。
担当:教員で可能
方法:指導員が非常持ち出し袋には個別性(家庭や個人の状況に配慮)することが重要であることを伝えます。その後教材を使って展示・説明をします。
指導:◆教材が全員に見える位置で指導を行って下さい。
確認:(1)非常持ち出し袋の個別性について正しく理解できているか。
< Y・該当なし・N >
(2)教材を使った指導に積極的に参加できているか。
< Y・該当なし・N >

⑪災害ボランティアセンター体験


目的:災害時に設置される災害ボランティアセンターを通じての災害ボランティア活動の流れを理解する。
根拠:生徒、教職員ともに、災害時のボランティア活動における仕組みと留意事項を学ぶ必要がある。
物品:ホワイトボード2機、マグネット、机1、椅子6、筆記用具、ポストイット等
設営:ボード等を体育館やオープンスペースに設置します。
担当:社会福祉協議会、ボランティアセンターに指導協力を依頼する。
方法:□災害ボランティアセンターの役割、ボランティア活動時の注意事項を説明します。
□災害ボランティアセンターでの登録、活動の選択を体験してもらいます。
□活動終了後の報告について説明します。
指導:◆災害ボランティアセンターでの登録、活動の選択、活動、報告の流れがわかるように指導します。
◆災害時特有の活動内容や留意点について、想定事例を掲示、資料を配布して指導します。
確認:(1)災害時のボランティア活動上の留意点が伝わり、リスクマネジメントを意識し活動にのぞめるか
< Y・該当なし・N >
(2)災害時のボランティア活動にも多様な種類があるため、自分の健康状態や特性を考慮しながら、自分で判断し選ぶことができるか
< Y・該当なし・N >

⑫避難所の公平・平等な配分について理解する


目的:避難所における配分の難しさを理解する。
根拠:災害時においては、貴重な飲料水等を無駄にすることなく、適切に配分することが重要であるため。
物品:非常時用飲料水×複数箱、ワークシート等
設営:飲料水のケースを指定位置に用意します。
担当:災害救援ボランティア推進委員会(03-6822-9900)に依頼
方法:□各クラスの班ごとにワークシートを配布します。
□ワークシートには「健康な成人、高齢者、幼稚園児、消防団、千早高校生、病院」の6つの避難所の状況と、必要な水の量が記載されています。
□必要な水の量は避難者の特性によって異なります(例:高齢者1人につき、健康な成人の1.5倍の水が必要等)。また、人数構成も班ごとに異なります。
□生徒は「給水可能な全体の水の量(※ワークシートに記載、1,000リットルなど)を基準に、全ての避難所に適切な水の量を話し合いながら計算し、班ごとにワークシートに記入し教員に提出します。(続く)
指導:◆クラス単位で正答までの時間を競います。
◆ワークシートは他の班の人には見せないよう指導してください(コミュニケーションを重視するため)。
◆学校に備蓄されているのは避難者用の「500ml×24本/8箱」です。水を大切に扱わなければならないことを、ポイントとして伝えてください。
確認:(1)避難所における公平、平等な配分の難しさを理解できているか。
< Y・該当なし・N >
(2)教材を使った指導に積極的に参加できているか。
< Y・該当なし・N >

⑬停電・ガラス破損体験


目的:発災直後に直面する可能性の高い状況を体験的に理解する。
根拠:変電施設や設備の被害による停電、窓ガラスの破損は発生する可能性が高い。
物品:ペットボトル破片・ブルーシート2枚・懐中電灯10個(教員用を除く)
設営:①舞台にブルーシートを敷きペットボトルの破片を散乱させます。
② ①の上に机やイス等を不規則に配置し、破片の少ない避難ルートを作ります。
③舞台に幕を下ろし、照明を消して暗闇を再現します。
担当:教員で対応可能
方法:□1クラスにつきライトを渡します。誰が持つかは自由ですがグループに分かれてもらいます(男子は男子、女子は女子で)。
□中は真っ暗で、ガラスが散乱し(ペットボトルとは言わない)、障害物もある状況で安全に脱出するというルール説明を行います。
□決まったグループから上履きを脱いで順番に左から舞台へ入り、破片を踏まないよう右袖から抜けます。全てのグループが抜けてきたら終了です。
指導:◆暗い中での行動ですのでふざけて転倒したりしないよう、注意します。
◆ガラスは絶対に踏まないよう注意します。大きな破片は上履きでも危険です。
◆自宅での停電やガラス対策の重要性を伝えてください。

⑭災害時要援護者体験


目的:高齢者・障害者・妊婦・小児等、災害時要援護者への配慮について理解する。
根拠:避難生活で困難が想定される要援護者への配慮も重要であるため。
物品:高齢者体験セット(ゴーグル・ヘッドフォン・足サポーター)7セット、体験ゲーム用キット(ゴーグルペア用避難者名簿×7枚、ヘッドフォンペア用避難者名簿7枚、クリップボード14枚、ペン14本)、段差用マット等
設営:高齢者疑似体験セット等を用意します。作業用の机、筆記用具等を用意します。
担当:社会福祉協議会等に依頼
方法:□クラスであらかじめ6人1班のグループを作ります。班に各1種類ずつ体験セットとゲーム用キットを配り、2人1組になります(男子は男子、女子は女子と、余ったら1名+ボランティア)。
□ペアのどちらかに体験セットを装着してもらいます(目・耳・足いずれか)。
□ペアでそれぞれの部位に応じたゲームを行います。
目=ゴーグル装着者が避難者名簿に記入するのを非装着者が補助
耳=非装着者がヘッドフォン装着者に聞き取り調査(氏名・住所・年齢・性別・家族の状況等)
足=サポーター装着者が段差を超える等の作業を非装着者が補助
□一定時間が経過したら装着者を交代します。
指導:◆非装着者は、装着者の作業をサポートしてあげてください。
◆自分に当たり前にできることも、要援護者には困難であることを伝えて下さい。
◆要援護者には高齢者や障害者だけでなく、赤ちゃんや妊婦も含まれることを伝えて下さい。

3 【参考】

防災体験の前に実施するとより効果的です。

事前学習


目的:体験学習全体の流れをイメージできるようにする。
根拠:災害時に想定される状況に即した体験学習であることを事前に伝えるため。
機材:スクリーン・プロジェクター・ノートパソコン
会場:会議室(教員)、大教室(生徒)
担当:消防署、防災課、災害救援ボランティア推進委員会等に依頼
方法:□パワーポイントによる座学説明
□動画等による、防災・避難所等についての説明
□防災体験学習の流れ
□事後学習の方法

事後学習


目的:防災体験学習を振り返り、災害想像能力を高める。
根拠:災害時に自発的に行動できるようになるために、次の事態を想像する力が必要。
設営:教室
物品:専用ワークシート(説明用紙を含む)
担当:教員
方法:□ワークシートにより感想文等と合わせて行います。
(1)災害時の状況をイメージする映像を見せます。
(2)ワークシートの記入ルールを説明します。
(3)ワークシートに記入します。
(4)生徒同士で話し合い、振り返りを行います。
(5)講評・まとめをして終了です。

4 資料ダウンロード

添付ファイル

5 資料提供

災害救援ボランティア推進委員会
http://www.saigai.or.jp/

6 編集後記

いつ起こるかわからない自然災害に備えるために、防災教育は非常に重要なものとなります。本プログラム集の実践を通じ、多くの児童・生徒が災害発生時に想定される様々な場面に適切に対処出来るようになるのではないかと思います。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 薗田誠也)

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