伝統文化と外国語学習を融合した実践 -英語劇「KEIYO SPRIT」の実践を通して-(村上正昭先生)

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作成者: EDUPEDIA編集部 (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

本記事は、中日新聞東京本社と受賞者から許可を得て、第16回「がんばれ先生!東京新聞教育賞」の受賞論文を掲載させていただいております。
http://www.tokyo-np.co.jp/event/kyoiku/
また、他の受賞論文もご覧いただけると幸いです。
第16回「がんばれ先生!東京新聞教育賞」の受賞論文 まとめのページ
http://edupedia.jp/entries/show/1730

2 伝統文化と外国語学習を融合した実践 −英語劇「KEIYO SPRIT」の実践を通して−

3 実践に当たって

本論文は、平成22年度に品川区立京陽小学校で教職経験12年目の主幹教諭が39名の4年生の児童と共に取り組んだ「伝統文化と外国語学習を融合した実践」をまとめたものである。実践に取り組んだ経緯としては、2つのポイントを挙げることができる。

一つには、学校長の学校経営方針の中心に伝統文化が据えられ、様々な実践が重ねられる中で、その重要性を感じ、学習単元を開発したいという強い思いをもったことである。勤務校の伝統文化に関する内容では、「江戸しぐさ」を通して大切にされてきた人々の心遣いや所作を学ぶことで「粋な子ども」に成長してほしいという思いがあった。折しも学習指導要領の改訂主旨には、「伝統と文化の尊重、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛し、他国を尊重、国際社会の平和と発展に寄与」という内容がある。4年生として、学んできた伝統の文化を振り返り、国際的に伝わる言葉で表現することは、現在の教育に求められていることであり、子どもたちの成長の中で良い機会になると考えた。

もう一つは、品川区教育委員会が主催する4年生を対象とする英語成果発表会において、学校の取り組みを他校や保護者等に伝える機会に恵まれたという点である。品川区では、平成18年度より小学校1年生から「英語科」が系統的に行われており、勤務校でも、ALTと担任により、区の研究会資料に学年の実態を合わせて工夫を加えた実践がなされてきた。

以上のことから、京陽小で取り組んでいる伝統文化の学習を英語成果発表会で発表できないかと考えた。4年生で、英語での伝統文化について発表は、難しいことであるが、劇であれば全員が主役になれて、学校の重点的な取り組みを学べるとともに、広く伝えることができるまたとない機会であると捉えた。また、将来的、日本の良さや自分の考えを多様な文化の中で伝えることのできる人に育てたいという担任の思いから、伝統文化について英語劇で発表するという伝統文化と外国語学習を融合した実践に取り組むこととした。

4 英語成果発表会に向けて

1学期は、全校11学級中、唯一の単学級を新たに担任したということで、子どもたちとの関係づくりや実態把握を行った。同時に、江戸しぐさや英語の学習に取り関連する資料集めを行った。そして、1学期を終え、夏季休業期間に台本の執筆に取り掛かった。

作成した台本は、学習してきた内容を整理し、「江戸しぐさ」「京陽しぐさ」「メッセージ」「文部省唱歌の富士山の英訳での合唱」の4部構成とした。各場面の原稿を、日本語でまとめ、学校長に指導を仰いだ。学校長は、児童の生活に結び付ける必要性に関する助言と励ましの言葉を与えてくれた。その助言をもとに、京陽小で伝統文化を大切にすることで育まれている心を表すという意味から英語劇の題名を「KEIYO SPIRIT」とした。ここから、和英辞典をもとに、原稿の英訳を試みた。念頭に置いたことは、できるだけ児童が学習してきた単語やキーワードを活用すること、一文を簡潔にまとめること、一人一文以上担当できること、他国の人に内容を理解してもらえることである。

一通り英訳した後に、確認の作業を行った。まず、施設分離型小中一貫校であった戸越台中学校の副校長先生が英語科の専門であり、演劇にも堪能であったことから、スペルチェックから文表表現まで、丁寧な指導を受けることができた。さらに、副校長先生が歌った富士山の英語バージョンを保存したデータをいただいた。これは、後の練習に大いに役立った。そして、この原稿をALT(Assistant language teacher)に、文章と内容の確認を行い、授業時間の中で効率的に学習を進められるよう計画を立てた。本番の1か月半前に原稿を子どもたちに配布し、児童との実践に入った(資料①②)。

5 実践の内容と様子

第1場面の「江戸しぐさ」では、「傘かしげ」と「かに歩き・肩引き」の紹介を行った。「傘かしげ」では、雨の日に路地ですれ違いざまに、傘の水滴が相手にかからないよう自分の傘を傾ける様子を表現した。子どもたちは、ビニール傘に雨水を見立てた青いスズランテープを張り付けたり、皆で雨粒を描いたりと工夫をし、演じることができた(写真①)。

「かに歩き・肩引き」では、狭い道を歩く際にお互いの肩がぶつからないための心遣いについて紹介した。2人が、かに歩きの際にかにの手をつけて歩き、そこにもう1人が突っ込みをいれるというコミカルの演技の工夫がみられた(写真②)。

第2場面の「京陽しぐさ」では、「かめ見習い」、「喧嘩しぐさ」について扱った。「京陽しぐさ」とは、担任が21年度に担当した6年生と江戸しぐさをベースに作成した京陽小で大切にしたいしぐさのことである。ここでは、2つの内容について寸劇を通して、「京陽しぐさ」の大切さを伝える場面となった。「かめ見習い」では、廊下を走ったことから、ぶつかってけがをする寸劇から、亀を見習って、ゆっくりと安全に歩くことを伝えた。3人の児童が亀の甲羅を作り、「かめ」の童謡を英語で歌いながら、かわいらしく表現することができた。「喧嘩しぐさ」では、喧嘩の場面のロールプレイングで、喧嘩を止めてくれた相手の顔を立てて仲直りすることを演技した。

第3場面のメッセージでは、これまでに学んできた「百人一首」「茶道」や京陽小が伝統文化を大切にしていることについて伝えた(写真③)。メッセージには、難しい単語や表現が含まれていたため、子どもたちは、イラストを描いたり、何度も発音したりして一生懸命自分の役割を果たそうと努めていた。

最後に「富士山」の英語バージョンに取り組んだ。選曲に当たって、音楽専科の同僚に相談したところ、3年生で学習し、伝統文化に関わりが深い「富士山」を進められた。その際に、英訳した歌詞が難しい内容となってしまうこと、音楽専科の同僚が発表会当日は授業でピアノの伴奏者がいないことという2つの課題が挙がった。ピアノ伴奏は、担任が特訓を重ねた。それにこたえるように子どもたちは、朝や帰りの会に歌って、あっという間に歌詞を覚えた。数人の児童は、なかなか覚えきれず、放課後に練習を行った。

以上の内容を、ALTの発音練習や友達との教え合いなどで子どもたちは着実に身に付けていった。

発表会の1週間前には、音楽会があり、ここでも富士山を日本語と英語で2番まで歌いあげた。発表会直前に、交流事業で訪れていたオークランドの先生の前で発表をする機会にも恵まれたことは子どもたちの大きな目標となった(写真④)。全校での発表の機会もあり、計画的に様々な発表の機会を作ったことが、内容の充実と児童の意欲の向上につながった。

本番は、11月に品川区の荏原文化センターで実施された。練習の成果が表れ、あたたかい大きな拍手に包まれた子どもたちは誇らしそうであった。(写真⑤)どの子の感想にも、「緊張したけれど、大きな声で発表できてよかった」「一番よくできた」等の満足感や達成感がまとめられていた。また、感想には他の学校の発表から学んだという内容も多く有意義な機会となった。

6 おわりに

本実践は、伝統文化を英語劇で伝えるとい挑戦的な実践である。学習内容の価値は、どれほど子どもたちを高めることができるかにあると考える。実践を通して子どもたちは大きな成長を見せてくれ、その姿から担任は、多くのことを学ぶことができた。この実践は、伝統文化をともに研究していた同僚、快く力添えをしてくれた一貫校の副校長先生とALTの先生、成長という感動を与えてくれる子どもたちの存在があったからこそであった。心より感謝し、今後も前向きに実践に取り組むことを期す。

7 実践者プロフィール

昭島市立中神小学校 主幹教諭 村上正昭 
第16回「がんばれ先生!東京新聞教育賞」受賞

8 引用元

第16回「がんばれ先生!東京新聞教育賞」受賞論文『伝統文化と外国語学習を融合した実践 −英語劇「KEIYO SPRIT」の実践を通して−』(昭島市立中神小学校 主幹教諭 村上正昭)より引用
「がんばれ先生!東京新聞教育賞」
http://www.tokyo-np.co.jp/event/kyoiku/

本論文は中日新聞東京本社と受賞者から許諾を得て転載しております。
他の受賞論文はこちら→( http://edupedia.jp/entries/show/1730

9 東京新聞教育賞について

「がんばれ先生!東京新聞教育賞」は、東京都教育委員会の後援を受け、平成10年に東京新聞が制定したものです。

学校教育の現場で優れた活動を実践し、子どもたちの成長・発達に寄与している先生方の実像は、ともすれば教育に関わる様々な問題や事件の陰に隠れ、社会一般には充分に伝わっておりません。本賞は、子どもたちの教育に真摯に取り組む「がんばる」先生の実践を募集し、それを広く顕彰・発表することで、先生自身の更なる成長と、学校教育の発展に寄与することを目的としています。

募集は6月から10月中旬にかけて行われ、教育関係者らによる2段階の審査を経て、翌年3月に東京新聞紙面紙上にて受賞作品10点を発表します。受賞者には、賞状・副賞ならびに賞金(1件20万円)が贈られます。

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