子どもの作文能力がめきめきと伸びる国語科指導(岩下修先生)

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目次

1 はじめに

本記事では立命館小学校の教諭である岩下修先生による「説明的作文の書き方」と、「説明文の読解」の指導法を取り上げます。
作文には説明的作文の他にも物語風作文と小論文があります。
「それらの指導法も知りたい」と思われた方は、岩下先生が出版された作文ドリル『作文の神様が教える:スラスラ書ける作文マジック』(小学館)(http://goo.gl/leQTFW)をぜひ御覧ください。

2 説明的作文の書き方の指導法

4段落で書く

説明的作文を書くときは、徹底して「はじめ」「なか1」「なか2」「まとめ」の4段落構成で書かせてみてください。

「はじめ」…自分の好きな○○について書く。これならば必ず書けるという仮のテーマを決めさせる。

「はじめ」は書き方をテンプレートにして教える
(テンプレート例:わたしは○○が好きです。では、私の好きな○○を二つあげます)

「なか1」…「はじめ」で提示したものを1つずつ紹介する。自分の考えは入れない。
「なか2」…「なか1」と同じ。
「まとめ」…「なか1」と「なか2」の両方のまとめ(似たところ・共通部分・気づき・意見)
(→この手法は市毛勝雄氏から学んだこと)

本当のタイトルはすべて書き終えた後で「まとめ」を見て考えます。「まとめ」のなかで最も伝えたいことをタイトルにしましょう。

例:「いつか乗りたいE5系と500系」

それでは、実際にこの手法で5年生のTくんが書いた作文を見てみましょう。

————————————————

(仮題 ぼくの好きな新幹線車両)
題「いつか乗りたいE5系と500系」
(はじめ)

ぼくは鉄道が好きだ。其の中でも特に新幹線が好きだ。では、ぼくの好きな新幹線車両を二両あげる。 
(なか1)

一両目は、主に東北地方で「はやぶさ」として使われているE5系だ。緑に赤色のラインが入ったE5系。それは、鉄道が好きでなくてもかっこいいと思うだろう。そして何よりすごいと思うのは最高時速だ。三百二十キロ。初代新幹線0系は二百二十キロ。今主力のN700系でさえ三百キロだ。これでE5系の早さがわかるだろう。

(なか2)
もう一つは500系だ。カワセミのようなノーズをもった500系。そして丸みをおびたボディ。日本で初めて、いや世界で始めて時速三百キロを出したのはこの車両だ。いまでこそTGVにぬかされてしまったが、車両高速化の火付け役は500系だろう。

(まとめ)
二両とも京都駅で見ることができない車両だ。この二両に、いつかのってみたいと思う。

——————————————

この作文でTくんは、まず「ぼくの好きな新幹線車両」という仮題をつけ書き出しています。
 
「はじめに」でテンプレートに従い自分の最も好きな新幹線を二両提示し、「なか1」と「なか2」で詳しく紹介しています。本来は「なか1」「なか2」では自分の考えを入れなくてもよいのですが、Tくんは「なか1」で「それは、鉄道が好きでなくてもかっこいいと思うだろう」と自分の考えを述べています。E5系への愛を抑えきれず、思わず書いてしまったのでしょう。
 
「まとめ」ではまずE5系と500系の新幹線の共通点、「京都駅では見ることができない」ということを述べています。そして最後に「この二両に、いつかのってみたいと思う」という自分の考えを書き、作文を締めくくっています。
 
作文を書き終えたTくんが「まとめ」を見ながらつけたタイトルが、「いつか乗りたいE5系と500系」です。Tくんがいつか乗る日を夢見て、わくわくしながらこの作文を書いている様子が目に浮かぶようですね。

このように、子どもたちが自分の好きなものについて4つの構成で筋道を立てて紹介できるよう、説明的作文指導を行ってみてください。もちろん、誰も彼もがいきなりこのような高いレベルの作文が書けるわけではありません。

説明的作文を書く力を伸ばすには、説明文の読解の指導もまた重要となってきます。

3 説明文の読解の指導

①段落に数字を打つ

単純な作業だけに、子どもたちがぐっと集中する瞬間です。あらかじめ形式段落は□(四角)で囲んだ数字を打つと決めておくと、あとで意味段落を打つときに○に変えるなどの工夫ができます。

②文章の構成を考える

作文と同じように、文章は必ず「はじめ」「なか」「まとめ」でできています。そこで問題となるのは、「なか」がいくつあるかということです。まずは子どもたちに初見で予想させてみましょう。

③キーセンテンス(柱)を探す

次に、段落のキーセンテンスを探していきます。
1つの段落は「キーセンテンス(=柱になる文)」とそれ以外でできています。キーセンテンスはそれがなければ段落が成り立たない、という文のことです。
キーセンテンスを探すことで、その文章が何を伝えたいのかを知ることができます。
キーセンテンスに指示語が入っていた場合は、その指示語に当てはまる語句をキーセンテンスの前後から探し、当てはめてください。

③キーワードを考える

キーセンテンスを見つけた後は、その中から3つから4つのキーワードを探します。キーワードを見つけること自体が重要なのではありません。もし子どもたちがわからないようならば、すぐ教えてしまいましょう。ここに時間をかけすぎないようにしてください。

④見出しを考える

この「見出しを考える」作業がとても重要です。この「見出しを考える」作業がとても重要です。キーワードを組み合わせてうまく接続し、見出し文をつくることが、子どもたちの読解力の形成に繋がります。
見出しを考えるときは15~20字以内というように字数の制限を必ずつけましょう。字数の制約は子どもたちの考える一つの支えとなります。

⑤もう一度構成を考える

見出しを見ながら、もう一度構成を考えてみましょう。

4 編集後記

自分の好きなことがテーマならば、普段作文に苦手意識を抱いている子どもたちの筆も進むのではないでしょうか。
岩下先生の穏やかな笑顔や話し方、そして的確な指導法にわくわくが止まりませんでした。 「岩下先生の授業を受ければ子どもは作文を好きになる」という話を耳にしたことがありますが、まさにそのとおりだと思います。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 平野愛)

5 実践者プロフィール

岩下 修(いわしたおさむ)
立命館小学校教諭 1973年愛知教育大学社会科卒業。
1988年に出版された『AさせたいならBといえ』(明治図書)(http://goo.gl/ZB4j7)は教師のバイブルとされ、ロングセラーとして今も新任教師からベテラン教師まで多くの教師に読み継がれている。この他にも『国語の授業力を劇的に高めるとっておきの技法30(21世紀型授業づくり)』(明治図書 2006年)や2010年『国語科「言語活動の充実」事例』(明治図書 2010年)など、数々の優れた国語科指導の実践を記している。

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