学力は短期間の指導で伸びる 定義編(陰山英男先生)

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作成者: EDUPEDIA編集部 (Edupedia編集部)さん

1 【実践概要】

この実践では、徹底反復研究会の年末合宿勉強会で代表の陰山英男先生が講演された内容をご紹介しております。

学力向上には何が必要なのでしょうか。ゆとり教育やPISA型学力の向上のための教育方針が話題になっています。しかし、学力について世の中で先生方に常識だと思われている多くのことの中にはが間違っていることも多い考え違いだと陰山先生はおっしゃいました。この実践では、陰山先生の調査されたデータを基に、学力に何が必要か検証していきます。そして、保護者や校長先生に授業改善が受け入れられない場合は、データや実績を提示することが解決に繋がることが多いようです。結果がついてくれば、周りの方も賛同してくれるようになるとのことでした。

そして、下記の内容は『学力は短期間の指導で伸びる 実践編(陰山英男先生)』の記事の前編となっております。前述の記事では、反復学習、授業運営の実践例を紹介しております。ぜひこちらの記事もご覧下さい。
http://edupedia.jp/entries/show/1318
 

2 【徹底反復学習とは】

徹底反復学習とは、その漢字の通り、徹底的に反復し、完全に覚えきるまで学習する、というものです。ただ単なる『反復』とは違います。『徹底反復』なのです。

徹底反復学習をすることによって、子どもたちがある段階から、覚える能力そのものが高まり、反復学習しているものとは異なる科目までもが効果的に進むようになってきます。子どもたちの学習処理能力が高まり、確かな思考力や学力がつくのです。

実践をするときには、“高速に”学習ができるように注意が必要です。そうすることによって、学習効率が高まり、そこから得られる脳の力が、子どもたちの学習処理を高めていくことにつながっているのです。

つまり、徹底した反復学習をすることによって、子どもたちの学習能力を高め、多用な学習を支え、そして子どもたちの可能性を広げていくものだと考えています。

3 【実践内容】

これまでの学力向上の常識とは

私自身の学力向上の考え方について近年様々な変化がありました。以前までは学力を上げるための手段として集中力を上げようとしていましたが、今では勉強や生活で応用の利く集中力をどう上げるかが課題になってきました。読み書き計算の基礎学力が上がると、文章題などの応用問題の点数が上がることがわかってきたためです。

下記に今まで考えられてきた学力向上への考えの一例を上げていきます。これらの常識が本当かどうか考えていきます。

1.学力向上は息の長い取り組みでなければならない。

→×(間違った考え)

百ます計算を例に挙げてみます。百ます計算を児童に指導すると、2週間もあればタイムが上がることがわかっています。集中することが重要で、一瞬にしてタイムが上がることがあります。逆にやってはいけないことは、ダラダラと計算を解くことです。

正しい方法で取り組めば、短期間で子ども達の学力はグンと伸びます。

2.日本はPISA型学力がもともと弱い。

→×(間違った考え)

学力低下問題が話題になった当時の学力調査では、数学と理科で1位2位をとるほど高かったのですが、学力向上のために応用力を鍛えようと、基礎基本を抜いたなどの指導をしたために順位が低くなっていった経緯があります。
 

3.遅れる子のため、ゆっくり丁寧な指導が必要である。

→×(間違った考え)

もし、出来ない子をそのまま出来ないまま置いていくとその児童はどう思うでしょう。児童は周りに置いていかれていることを自覚し、焦り出すのではないでしょうか。この焦りが重要なことで、児童は周りに追いつこうと必死に集中するようになります。また、理解の遅い子を中心に授業を進めると、理解が早い子は暇になり、集中力が切れてしまいます。ですので、一回目の授業は、理解できていない子を一旦置いておいて、授業を進めます。すると、授業が早く進んだ分、復習に十分な時間があてられ、遅れている子にもフォローすることができるのです。二回目は一度授業を行っているので、理解も早まります。
 

4.学力を高めるには授業改善がいちばん重要である。

→×(間違った考え方) 

この10年間授業改善を現場の先生方が行ってきて、劇的に児童の学力は高まったでしょうか。残念ながら、答えは否です。もちろん授業改善も大切ですが、児童が自分に適した教材で勉強しているかが大事だと考えています。先生方は、今までどれだけ児童に合ったプリントを作ってきましたか。売っている教材をもちろん使っていいのですが、そのクラス、時期に適した教材があります。先生の作るプリントをすることによって成績があがることがわかれば、児童たちは進んでプリントをこなすようになっていくのです。
 

5.知能指数は変えられない以上、授業改善が一番必要である。

→×(間違った考え方) 

知能指数は向上させていくことができます。そのためにどうすればいいか。下記の内容をご覧下さい。

学力向上の基礎

学力向上に必要なものとは何でしょうか。それは、日常の生活習慣の改善です。

1.睡眠時間

近年の調査では、学力と睡眠時間が密接に関わっているデータが出ています。 小学生を例にあげてみると、睡眠時間が7~9時間の児童たちの学力は一定の水準を保てています。しかし、6時間以下しか寝ていない児童の学力はみるみると低下していくのです。また、睡眠時間が10時間以上の児童の学力は7~9時間睡眠の児童よりも低いことがわかりました。つまり、適切な睡眠時間を取ることが必要ということです。  
 

2.就寝時刻

適切な睡眠時間をとることだけでなく、就寝時刻にも気をつけなければいけません。成長ホルモンは脳の記憶に関わってくる重要なものですが、この分泌は12時前に最高点を迎えます。調査によると小学生は、8時から9時までの間に就寝している児童の知能指数が最も高く、12時以降や8時までに就寝する児童の知能指数は最も低いデータが出ています。9時までには布団に入り、6時頃に起床する生活が最も規則正しい生活と言えるでしょう。
 

3.食育指導

睡眠だけでなく食事の改善により学力が上がることや朝食の有無での学力の差があることがわかっています。1食当たり12品目以上を摂取している児童たちの偏差値と4品目以下しか摂取していない児童たちの偏差値の平均を比べてみました。なんと、その差は10以上もの差があったのです。そして、朝食を毎日食べる児童とそうでない子でも歴然とした差がありました。このデータを保護者のみなさんに提示したところ、その日の夜からご飯のメニューが豪華になったと、翌朝子ども達が教えてくれました。
 

4.長時間のディスプレイは学力低下の原因

前述のものだけでなく、現在の生活リズムに関わってくるものにテレビやゲームが挙げられます。そこで、ディスプレイを見ている時間と学力が関係していることを示すデータが出ています。長時間テレビなどを見ている児童は、学力が他の児童に比べとても低くなっています。しかし、見せることを全面的に禁止しなければならないわけではありません。ストレスの発散は必要ですし、テレビのニュース等を見ることで得るものもあるからです。

反復学習、授業運営の実践例はこちら

http://edupedia.jp/entries/show/1318

4 【編集後記】

陰山先生は、この授業運営のお話をされているときに、結果を出せば保護者や校長は付いてきてくれるとおっしゃっていました。また、データを基に論理的に説明すれば納得してくれるとも話しておられました。参加されていた教員の方は、「これらの言葉は現場の先生には深く共感できる」とうなずいておられました。お読みいただいた先生方にもこのことを頭の片隅に置いて、授業改善をしてくだされば幸いです。基礎学力ができることで人間としての基礎力も身についてくると思います。先生が児童の歩む先を考えるならば、先生は生徒の考える力の基礎をつけなければならないと学びました。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 坂本一途)

5 【講師プロフィール】

  • 1958年兵庫県生まれ。岡山大学法学部卒。
  • 兵庫県朝来(あさご)町立(現朝来市立)山口小学校教師時代から反復練習で基礎学力の向上を目指す「陰山メソッド」を確立し脚光を浴びる。
  • 2003年4月尾道市立土堂(つちどう)小学校校長に全国公募により就任。

百ます計算や漢字練習の反復学習を続け基礎学力の向上に取り組む一方、そろばん指導やコンピューターの活用など新旧を問わず積極的に導入する教育法によって子どもたちの学力向上を実現している。

  • 立命館大学 教育開発推進機構 教授(立命館小学校校長顧問)。
  • 文部科学省・中央教育審議会 教育課程部会委員。
  • 内閣官房「教育再生会議」元有識者委員。
  • 大阪府教育委員会教育委員長。
  • NPO法人日本教育再興連盟理事
  • 徹底反復研究会代表

*著書:「このままでは学校はもたない!みんなで考えたい、学校教育のこれから」(教育開発研究所)「学力は1年で伸びる!」(朝日新聞出版)「若き教師のための授業学」(日本標準)「親が伸びれば子は伸びる」(朝日新聞出版)「陰山メソッド たったこれだけプリント」(小学館)「隂山メソッド 徹底反復 ニガテ  克服シリーズ」(小学館)…他多数

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