一言時代をまとめよう(染谷恭平先生)

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目次

1 はじめに

この実践は、世田谷区立塚戸小学校教諭である染谷恭平先生の社会科の授業実践です。染谷先生の授業を取材させていただいたことをもとに記事を作成しました。今回は、室町時代のまとめの授業でした。

2 今回の授業に入る前に

今回は、「学習問題を解決し、室町時代についてまとめよう」という、室町時代の最後の授業でした。このまとめの授業につながるよう、それ以前の授業では以下のような授業が展開されていました。

①金閣と銀閣を比較し、室町時代について調べる学習問題を作る

<扱った内容>
・金閣 ・銀閣 ・足利義満 ・足利義政 ・東求堂同仁斎 ・書院造
<学習問題>
室町時代に栄えた文化は、どのような文化だったのだろう

②室町文化について調べる

<扱った内容>
・茶の湯 ・生花 ・お伽草子 ・盆踊り ・能・狂言 ・連歌 ・ひな祭り・水墨画(雪舟)

ここから、「今につながる文化」であるとまとめておきます。

3 授業内容

単元のねらい

室町時代の特徴について話し合い、キャッチフレーズ(一言時代)にまとめる

授業の流れ

①本時の課題を確認する


課題…学習問題を解決し、室町時代についてまとめよう
学習問題…室町時代に栄えた文化はどのような文化だったのだろう

②個人でまとめる

  • 「室町時代とは        。」をまとめる
  • その際、理由も一緒にまとめる
  • 各自、以前の授業のノートや資料集、プリントを使う

③近くの友達と話し合う

  • グループでの意見交流…一気に個人から全体での話し合いにすることによって、何も意見を話さず終わってしまう子が多く出てきてしまうことを防ぐ

④個人で発表、議論

  • 発表は、どうまとめたかだけでなく、その発言の根拠まで発表する

染谷先生が発表を始める前に、「発言をつなげていってください」と指示していました。子どもたちが「~と考えました。他にありますか?」「〇〇さんはこう言っていましたが、私は~と考えました。」と、発表していたのが印象的でした。

⑤一言時代にまとめる

  • 発表されたものから、キーワードをつなげていく

染谷先生は、似たような意味でも言葉が違うものについて、なぜその言葉を使ったのか、その根拠、こだわりを聞いていました。
(例)今でも続く/今でも伝わる/今につながる/今に受け継がれる

<子どもの反応>
今でもやっているから「続く」「伝わる」/まるっきり同じわけではないから「つながる」「受け継がれる」

  • 「これははずせない」というものをまとめる

今回は「今に受け継がれる文化が生まれた時代」という、最後の部分から決まっていました。そこから、どうして今まで残っているのかを考えていました。

<子どもの反応>
守ってきた・伝えてきた人がいるから/民衆はどの時代にもいて、その民衆に親しまれたから 等

  • 「民衆にも親しみやすい今に受け継がれる文化が生まれた時代」

今回は、最終的にこのようにまとまりました。

室町時代の文化は、貴族や武士の文化が合わさったものが民衆に広がっていったものです。そこから、貴族にも武士にも親しまれたという意味も込め、「民衆にも」という言葉が選ばれました。また、全員が親しんだわけではないということから、「親しみやすい」とまとめられました。

4 この授業でのポイント

室町時代に関する授業の内容においてポイントとするところを染谷先生に伺いました。

「今につながる」ということをおさえようと思っていました。

今につながるということは、今まで継承してきている人いるということ。そして、これからも残していくためには、人が必要だということに気がついてほしいと願っていました。もう一つは「庶民に親しまれた」ということです。それがまた今につながる理由のひとつですよね。

今回の学習内容では、そこまで行き着かないとは思いますが、児童の中には、「600年も続いている文化があるのはすごい。これからも残していけるかは私たちにかかっている。」というようなことを書いている児童もいました。』(染谷先生)

5 授業をする上で意識していること

授業を進めるうえで染谷先生が意識していることを伺いました。

『今回のように、「一言時代にまとめる」授業の際は、特に既習事項を根拠とする発言を求めています。当てずっぽう、根拠のない発言ではなく、学んだことを生かした発言からまとめたいと思っていました。

また、学んだことを生かした発言というのは、「児童がまとめに書く言葉」を指すのではなく、その言葉を選んだ理由です。まとめの言葉は自分らしい言葉でいいと思っています。例えば、授業に出てきた「今につながる」「今に受け継ぐ」こういった言葉は授業で扱っているわけではありません。調べた事実をもとにそう考えているので、根拠がしっかりしていれば、まとめの言葉にこだわりがでてくると思うのです。「時代の特徴を自分の言葉でまとめる」ことにこの活動の価値があると思います。ただ室町時代と覚えるのではなく、「今に受け継がれる庶民に親しまれた文化が生まれた時代」と捉えた方が、どんな時代だったかを理解できると思うのです。そんなことをさせたいと考えています。』(染谷先生)

6 プロフィール

染谷恭平
教員11年目、世田谷区立塚戸小学校(4年目)において主任教諭
多摩市立連光寺小学校(7年)
東京都社会科研究会(都小社研)5年部会副世話人
世田谷区社会科研究会(世小研)研究部会副委員長

7 編集後記

短い言葉の中に一つの時代をまとめるということは、子どもたちが本当にその時代について知っていないとできないことだと思います。今回の取材の中で、子どもたちがノートやたくさんの資料を見直している姿が印象的で、きちんと調べるということの重要性を感じるとともに、染谷先生の授業ではそれがなされているのだなということを実感しました。

歴史をただ暗記するのではなく、自分で考える時間があることで、楽しく、より理解が深まった学びができるのではないでしょうか。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 大堀彰華)

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