わたしたちのくらしと食料生産 ―導入でおさえるポイント―(はなまるサポート)

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目次

1 概要

この実践は(株)教育同人社の許可を得て、「はなまるサポート」の学習指導ポイント一覧より転載しています。

実践の続き(無料)は最下部のURLからご覧ください。

また、以下より実践をPDFでダウンロードできます。

わたしたちのくらしと食料生産 —導入でおさえるポイント—.pdf

2 はじめに

5年生の社会科の目標は、3つ示されています。(以下、文部科学省「小学校学習指導要領(平成10年12月)」より引用)

(1) 我が国の国土の様子,国土の環境と国民生活との関連について理解できるようにし,環境の保全や自然災害の防止の重要性について関心を深め,国土に対する愛情を育てるようにする。

(2) 我が国の産業の様子,産業と国民生活との関連について理解できるようにし,我が国の産業の発展や社会の情報化の進展に関心をもつようにする。

(3) 社会的事象を具体的に調査するとともに,地図や地球儀,統計などの各種の基礎的資料を効果的に活用し,社会的事象の意味について考える力,調べたことや考えたことを表現する力を育てるようにする。

(3)は能力に関する目標なので、(1)(2)の2つが理解と態度にかかわる目標です。(1)は、内容(1)にかかわる理解と態度に関する目標、(2)は内容(2)から(4)にかかわる理解と態度に関する目標です。教科書では、(1)の目標を受けて、国土の様子について2つの大単元で学習し、(2)の目標を受けて、産業の様子について3つの大単元で学習します。

上記は、東京都社会科研究会の単元配列ですが、どの教科書も同じような単元配列です。

5年生の学習が、「産業学習」といわれるのは、5年生の社会の多くの時間を産業にかかわる学習に充てているからです。

では、今回私は、次の2点を紹介します。

(1)「食料生産」について、学習指導要領ではどのように示されているか。

(2)導入の時間に使う具体的な資料や授業の注意点などについて。

3 内容

(1)学習指導要領の内容がしめすもの

下記は、学習指導要領 5年 目標(2) と 内容(2) です。

(2)単元の導入のポイント

①様々な食料生産につながる食卓(献立)を導入の資料に

この単元では、農業、水産業について学習します。特に、内容ウの「食料生産に従事している人々の工夫や努力について」は具体的事例を通して学びますが、稲作は必ず扱います。また、野菜、果物、畜産物、水産物から一つを選択して取り上げます。つまり、稲作ともう一つは地域の実態に合わせて選択して学習するということです。

第1 時間目テーマは「食べ物(食材)はどこから来るの」です。出来るだけ多くの食料(食材)をつくる産業とわたしたちの生活を結びつけるために、下のような資料を使います。

②学習で使われる用語をしっかりと認識することが大切

<食料(食材)をつくる産業=食料を生産している産業の説明>

農業

  • 稲作=田で稲を育て、日本人の主食である米をつくっている。
  • 畑作=畑を耕して、キャベツやほうれんそうなどの野菜や、麦、大豆などをつくっている。
  • 果樹栽培=みかんやりんごなどの果物をつくっている。
  • 畜産=食肉用の牛やぶたを育てたり、乳牛を育て、乳をしぼって生乳を生産したりしている。
  • 他に、花やきのこ、植木などを育てる農家がある。

水産業

  • 漁業=海や川、湖などで魚や貝、海そうなどをとったり、育てたりしている。
  • 水産加工業=生の水産物に手を加え、干物やかまぼこ、冷凍水産物のような水産加工品をつくっている。

食料品工業

  • 大豆から豆腐をつくるなど、原料を加工し、製品をつくっている。水産加工品も入る。

上記の用語の説明は、副教材として、希望する学校の5年生に配布している「農業とわたしたちのくらし」(JA バンクアグリ・エコサポート基金)に書かれている説明を参考にしました。とても分かり易く用語を説明しているからです。子どもたちに説明するときは分かりやすいことが大切なのです。社会では、用語の理解が大切です。でも、そのことだけ取り上げると社会が難しく感じられ、きらいになる要因にもなりかねません。かといって何となくの理解では正しい理解や考えるための基礎知識にはなりません。ですから、このような導入の時間に資料を読み取りながら自然に正しく認識できるように工夫することがよいと思います。

③学習問題づくりと次の学習につながる実物を

用語を確認した後は、資料から次は何を調べたいかを話し合います。

最初の資料を給食の献立にすれば、「給食の食材のふるさとは・・・」という学習問題になると思います。導入の資料を、資料集の写真、給食の献立、ある家庭の夕食の何にしようとよいのですが、できるだけ多種類の産地につながる食材が見える資料を使ってください。そうすれば、食材の産地調べにつながると思います。

次の時間は、産地調べになりますが、初めの時間にある程度興味をもたせておく必要があります。左の写真は、子どもたちが家庭で産地調べをするためのヒントで、資料集にある写真です。スーパーマーケットの売り場で見つけられる産地、新聞のチラシ、野菜を包んでいるラップに印刷されている産地等々。「スーパーで見たことある」「うちにもありそう」など、身近に見つけられそうだと子どもたちの意欲は高まります。資料集の写真のほか、先生が実際にそのうちの何かを見せれば、さらに意欲が高まると思います。わたしは、よく給食室に頼んで段ボーを用意しておきました。授業後、わたくし場合、子どもたちに呼び掛けて、1週間ぐらいの期限を区切って、米の袋や野菜の入っていた袋やプラスチックの容器の産地が分かるものを持ってこさせました。

次は、子どもたちが集めて来たものをどのように掲示するかの準備です。 教室の後ろの掲示版に、全紙大の日本地図を貼っておきます。朝、教室に来た子どもたちは、持ってきたものを米、野菜と産地のところにシールを貼っていきます。都道府県の位置と名前は、4年生で学習しているので復習になります。袋やラベルは周りに貼ってもよいし、社会の時間に活用してもよいでしょう。1週間すると、かなりのシールが貼られ稲作や畑作の特徴につながることが表れてくると思います。海外からの食材は輸入品です。

この 「みんなで作った資料」 は、次の時間に、地図帳や統計資料から農産物の産地を調べるときの導入に使います。その時は、後ろの掲示板ではなく、前に移動して使ってくださいね。

④これからの学習のつなげる導入になるように

導入の学習は、小単元の導入であると同時に、大単元の導入でもあるのです。ですから、農業の分野だけではなく、食料生産の単元で扱う、水産業のこと、これからの食料生産で考える輸入品のことに繋げられるように仕組んでおくようにします。農産物だけでなく、水産物や輸入品もシールを貼るのはそのためです。時々の学習で、初めにみんなで作った産地調べの資料が使えます。単元全体を見通して、よりよい導入の時間になるように、そしてよりよい 「みんなで作った資料」 になるように期待します。

4 編集後記

導入の学習はどの教科においても大切なことだと思います。また、導入の学習を通して子どもたちに興味、関心を持つ機会を作ることはこれからの単元学習をするうえで重要なことだと思います。導入の学習のポイントがまとめられているのでぜひ実践してみてください。

5 実践者紹介

加藤 良子

元公立小学校教諭、23年3月末で退職。

38年間に4区5校で勤務する。各区で社会科部に所属。地域教材を開発して、各学校で実践してきた。

趣味は、江戸の歴史や文化に親しむこと。月に数回、江戸東京博物館で展示ガイドボランティアをしている。

6 サービス紹介

教育同人社の「はなまるサポート」では、若い先生のための授業ヒント集として、毎月の学習指導ポイントを細かく解説をしています。また、不明点や疑問点などを無料で相談できます。

http://www.djn.co.jp/support/

(編集・文責:EDUPEDIA編集部 川原悠成)

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