「広げ読み」と「まとめ読み」(今井成司先生)

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目次

1 はじめに

東京作文教育協議会・会長、元杉並区立公立小学校教諭の今井成司先生の実践です。
『虫は道具を持っている』(2年東書)、『タンポポのちえ』(2年光村)を読む授業です。

2 実践内容

『虫は道具を持っている』 東京書籍 小学校2年生国語

概念的な文章はとても大切です。低学年では多くの場合「まとめ」の文にあたります。そのような文章は、言い換えや、具体化をして理解します。『虫は道具を持っている』(2年、東書)では、次の文です。
 
「虫たちは棲む場所や食べ物や暮らし方に合うように体の形や働きを変えてきたのです。」

ここは、具体的に言い換えさせます。これを「広げ読み」と言います。
「チョウの場合はどう言うことですか。カマキリの場合はどう言うことですか。それをノートに書きましょう。」
(前の方は子どもの発表です。それに対し、矢印以下を先生が補います。)

・チョウは、花の中の蜜をうまく吸えるように口が長くなったのです。
→食べるものに合わせて口が変わったということですね。

・カマキリははっぱの上で虫を素早く捕まえられるように前の足が大きくなりました。
→場所やどんな餌かに合わせて前足が変わったんだ。
 
 このようにして、具体的に話したことを少し抽象化し、半具体的に理解していくようにします。そのあとで、「この二つをまとめるとどうなりますか。」と聞くことで、概念的なまとめの文章、「虫たちは棲む場所や暮らし方に合うように体の形や働き方を変えて来たのです。」に戻ります。これを「まとめ読み」と言います。「広げ読み」と「まとめ読み」を両方やることで、概念的な文を具体的な例をもとに理解できたということができます。

『タンポポのちえ』 光村図書 小学校2年生国語

「タンポポのちえ」(2年光村)では、まとめ読みが多くなります。

ここを押さえた後で「これを何と言いますか。」と聞きます。すると、言い換えは次のようになります。

これが「まとめ読み」です。

どちらがいいでしょうか。このまとめはどちらも間違っていません。しかし、ここではBをとります。もうお分かりでしょう。Bは狭いまとめ読みです。この部分のまとめです。Aは広いまとめ方です。全体のまとめです。広ければ多くを含むので間違いとは言えませんが、適切かどうかは問われます。「タンポポの知恵」では次のところで、「種を遠くへ飛ばす知恵」とまとめることできます。その次は「天気によって飛ばし方を変える知恵」となります。この3つ合わせて、「タンポポの知恵・子孫を増やすための知恵」と最後に、まとめることができます。タンポポの知恵では二重のまとめ読み(部分まとめと全体まとめ)をすることになるのですね。

まとめ

説明文ではこのようにして「広げ読み」と「まとめ読み」を意識的に取り入れていくことで思考力・表現力も高まることが期待できます。

3 実践者プロフィール

今井成司先生
 杉並区教育研究会、元国語部長
 東京都杉並区三谷小学校を2007年に退職
 杉並区浜田山小・久我山小、立川第8小などで講師をした。
 現在、東京作文教育協議会・会長。日本作文の会会員。
 杉並区作文の会会員

 主な著書に
 ・「国語の本質がわかる授業1,2」(日本標準、編著)
 ・「楽しい児童詩の授業」(日本標準、編著)
 ・国語「教科書教材の読みを深める言語活動」 1年生
 ・国語「教科書教材の読みを深める言語活動」 2年生
 ・国語「教科書教材の読みを深める言語活動」 3年生

 などがある。

4 編集後記

広げ読みとまとめ読みという言葉は今回初めて知りましたが、どちらも文章を理解していくための有効な方法であると思いました。概念的な文章の根拠を見つけていく広げ読みは、具体例の列挙によって難しい抽象的な文章もすんなりと頭で理解することを可能にします。反対に、まとめ読みでは具体例を集約して概念的な文章で表現しますが、個々の事象の共通点を見つけ出し、自分の言葉で表現することで体系的な理解ができるようになります。高学年になると広げ読みは抜き出し、まとめ読みは要約・記述の形で問題として出てきますが、低学年のうちからこの2つの読み方に触れることで、読み方の感性が養われるだけでなく、読んで文章を理解することの楽しさに気づくこともできるのではないかと感じました。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 内藤かおり)

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