アクティブ・ラーニングの基盤となるリーダーシップ

36

学び方とリーダーシップ、一見すると無関係に思えますが、実は、最新のリーダーシップ理論が、アクティブ・ラーニングの基盤となっていることをご存じでしたか。

目次

1 能動的な学びとリーダーシップ

児童生徒が能動的に学ぶなるためには、何が必要なのでしょうか。まずは、安全で安心できるクラスの雰囲気、先生やクラスメイトとの信頼関係でしょう。次に必要なのが、リーダーシップです。

リーダーシップは、ごく一部の限られたリーダーの資質や能力であると考えられてきましたが、最近のリーダーシップ理論では、全ての人に必要な、基礎的・汎用的能力であると考えられるようになりました。子どもが、何で遊ぶかを決めて行動することや、高齢者が老人会の出し物を考えて練習することも、全てリーダーシップの発揮が必要です。

授業でも同じことがいえます。従来の授業では、リーダーである先生の強力な指導力のもとで、児童生徒は従順なフォロワーであることを強要されてきました。

しかし、アクティブ・ラーニングでは、考えること、グループワークすることなどに、能動的、主体的、自律的な姿勢や態度が必要となります。自らの学びに責任を持ち、自分を律し、協同するためには、リーダーシップの発揮が不可欠です。

この意味で、リーダーシップは、安全や信頼と同様に、アクティブ・ラーニングの基盤を形成する、インフラであるといえます。

2 最新のリーダーシップ理論とは

最新のリーダーシップ理論は、「分散型リーダーシップ」と呼ばれます。従来のリーダーシップを野球型とたとえると、分散型リーダーシップはサッカー型といえます。野球選手ががんばることは、監督の出したサインを正確に理解し、いかに忠実に実行できるかということです。それに対して、サッカー選手は、ゲームが始まったら、いちいち監督のサインに従っているわけにはいきません。瞬時に自分の置かれた状況、期待、責任を把握し、最適なプレーを選択し、実行しなければいけません。

ロンドンオリンピックのなでしこジャパンの活躍をきっかけに、実業界のトップ
の多くが、佐々木則夫監督の指導法に注目した理由がここにあります。だれかに指示されなくても、的確に自分のすべきことを判断し、果敢に実行できるようになるためには、どうすればいいのか。これが、現在のリーダーシップ理論の中心テーマです。

授業でも同様です。自分は何を学ばなくてはならないのか、そのために何をしなければならないのか、グループのメンバーとともに何に取り組まねばならないのか、グループの中で自分の責任分野は何なのか、などに対して、一人ひとりがリーダーシップを発揮しなければ、アクティブ・ラーニングはうまく機能しません。

3 最強のチームとは

この分散型リーダーシップとグループワークの関係を説明する際には、欧米のアウトドアのインストラクターの話を利用するといいでしょう。アウトドアのインストラクターは、チームでの活動を支援しながら、最終的に次のことを体得させます。

最強のチームは、リーダー以外のメンバーが、リーダーシップを発揮できるチームである。

リーダーとは役の名前であり、行動や技能ではありません。リーダーシップとは、チームの目標達成のために発揮する影響力のことです。誰でもがリーダーになれるわけではありませんが、誰でも、チームのためにリーダーシップを発揮することはできます。そして、全員がリーダーシップを発揮したとき、相乗効果が生まれ、チームは奇跡を起こすことができるのです。

4 アクティブ・ラーニングとリーダーシップ

アクティブ・ラーニングを取り入れた授業を行う場合には、いきなり教科学習で始めるよりも、教科外で練習した方がスムーズに導入できるようです。例えば、総合的な学習の時間や道徳の時間などが考えられます。その際に、ゲームや創作活動、探究活動などの際に、リーダーシップの考え方を、きちんと児童生徒に理解させるとよいでしょう。

前述のアウトドアの教えにならえば、次のようになります。

  最強の授業とは、先生や特定のリーダー以外の生徒がリーダーシップを発揮している授業である。

  最強のクラスとは、先生や特定のリーダー以外の生徒がリーダーシップを発揮できるクラスである。

もちろん、学年や学校全体で、リーダーシップやアクティブ・ラーニングの考え方を共有することは、とても重要です。

そして、それらの活動や授業の振り返りの際には、次のような自己評価をするとよいでしょう。

□ 自分の学びに対して、自分をコントロールすることができましたか。

□ グループワークの際に、自分の責任を理解し、役割を果たして、
   グループに貢献できましたか。

□ グループワークの際に、課題や問題を解決するために、自分ができる
   ことを考え、提案し、実行することで、グループに貢献できましたか。

5 さいごに

キャリア教育における基礎的・汎用的能力の中には、リーダーシップ、ファシリテーション、プランニング、プレゼンテーション、コミュニケーションなど、今までは社員教育や管理職研修などで取り上げていたことが含まれています。つまり、これらのマネジメントスキルは、生きる力、21世紀型能力には、どの人にも全て必要な能力であるということを表しています。

しかし、今回取り上げたリーダーシップについては、その中でも、最も一般的であり、最も間口が広く、だからこそ、もっとも分かりにくいものではないでしょうか。

しかし、今後アクティブ・ラーニングの導入と成果が求められるようになると、避けて通れないのがリーダーシップの指導です。早急に、カリキュラムの中に、きちんとリーダーシップを位置づけ、児童生徒の発達段階に応じた指導プログラムを導入すべきではないでしょうか。

【参考】分散型リーダーシップに関する詳細は、以下をご参照ください。
    「これからの学校組織に必要なリーダーシップとは」(山口明彦)
     https://edupedia.jp/article/53b1576a03de53289d165dc7

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次