学び合いの授業とは?―社会科授業・授業運営の工夫―(立命館小学校 柳沼孝一先生)

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作成者:Nanae Mori (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

立命館小学校の柳沼孝一先生に、社会科の授業と授業運営について、インタビューを行いました。「学び合い」の授業を1本の柱として展開される柳沼先生の社会科授業・授業経営のポイントを紹介します。

2 社会科授業の工夫

①変わるわたしたちのくらし—”将来を考える”社会科授業

社会科は「今を見つめながら将来どうあるべきかを考える」教科です。例えば、「変わる私たちのくらし」の単元では、昔から今までのくらしの変化を見て、次の時代の変化をも考えることができるような視点を育てることが大切です。そのためには、昔の道具などの「ものの変化」を、環境や社会背景とのつながりで捉えることが必要です。ものが変化したことだけではなく「なぜ変化したのか」を考えると、環境や社会とのつながりが必ず見えてくるのです。
このように変化を見る視点を育てれば、今の時代の環境や社会の状況から、「これからの時代、社会はどう変化していくか」、そして「どう変化するべきなのか」を考えることが出来ます。

この単元の具体的な授業案については、こちらの記事を参照してください。
「割り箸で社会の変化を捉えようー考え、意見を言える授業ー(柳沼孝一先生)」
http://edupedia.jp/article/5462080a4bad9b19b9a2fc8a

②グラフの先を選択させる

これからの変化を考えさせる方法の一つとして、「グラフの先を選択させる」というものがあります。何かの量の変化を表すグラフなら、その量は今後「減っていくのか」「増えていくのか」「変わらないのか」を予想させます。その際大切なのは、どういう理由・根拠でそうなるかまで考えさせることです。ここでは、「なぜ変化したのか」を考える視点を応用することが出来ます。そしてさらに発展させ、「本当はどうなるべきなのか」そして、「そのためにはどうしたらいいのか」について考えさせることも大切です。

③グラフの学習ポイント

そのような変化を見るために重要なグラフの学習のポイントを紹介します。

1、基本:「型」を教える

(1)表題は何か
  (2)縦軸と横軸はそれぞれ何を表すか
を必ず確認する。

2、グラフを読む

(3)「全体としてどうなっているか」を考えさせる。

3、読みを深める

(4)「一番変化の大きいところはどこか」見つけさせる。
  (5)「なぜ大きく変化しているのか」根拠を考えさせる。
 →「どんな社会背景があるか」
 →「その社会の動きがなぜその変化につながるのか」

4、大切なこと

グラフの学習では変化を捉えるだけでなく、その変化の理由を考え、変化と社会とのつながりを考えることが大切である。これにより、社会とのつながりで将来の変化を考える視点
を養うことが出来る。

④実社会に働きかける社会科

今現実の私たちが生きている社会の仕組みを理解して、そこにどのような人間の知恵があるかを学び、私たちはこれからの社会をどう作り上げていくべきかを考えていくことで、「学んだことを基に実社会に働きかける社会科」授業をつくることが出来ます。

3 授業運営の工夫

①資料を持ってこさせる

■子どもに資料を持ってこさせる

授業の終わりに、「次の時間資料を持ってきたい人は持ってきてください」と伝えます。これは例えば、議論をする授業などの最後に実践すると効果的です。先生やほかの友達が、自分と違う意見を言っていると、「どうして自分と違うことを言うのか」「彼らの言うことは本当にそうなのか」気になります。そこで、「資料をもってきてください」と持ち掛けると、子どもたちは自分の意見、友達や先生の意見がほんとうかどうかを確かめる根拠となる資料を持ってきます。

■追究する意欲を育てる

この取り組みは、気になることを自分で調べ「追究する意欲」を育てることが出来ます。子どもたちが、与えられたものだけを消化するのではなく、自分から「なんでだろう」と問いを見出し追及するようになるのです。こうした意欲・追究力は、社会に出ても必要となる意欲的に学び続ける姿勢を生みます。それは、大学に入って、社会に出て何をやりたいのか、常に追究し学び続けるための基礎となる姿勢です。授業では最後に一つにまとめても「でもこれって次どうなるのだろう?」とまた次の問いが連続していくものです。子どもが調べてきたり、新たにわかったことを次の時間に持って来ることで、授業はどんどんつながっていきます。

■互いにより良い価値観を作り上げる

どの資料がいいのか考えながら、まずは自分で見てみます。次に他人の選んだ資料も見て、それを認め、それにまた自分が何かを加えます。そうして子どもたちは価値観をより良いものに作り上げていくのです。つまり、子どもたちによる「学び合い」ができるのです。

■褒める

「資料を持ってきて」といってもみんなが持ってくることはなかなか難しいことです。そこで、資料を持ってきた子どもを「褒める」ことが大切です。そうすることで、「この次は僕もやってみよう」と、周りの子どもにも広がります。

■資料を通して伝えたいこと

資料を持ってきて、それを棒読みするだけでは子どものためになりません。資料に対する自分なりの解釈、資料を通して伝えたいことを子どもたちが必ず持つべきです。そのためには、わからないことは教師に聞くこと、おうちの人とも話し合うことなどを促すことが大切です。

②意見を言い合う授業

意見を言い合う授業の目的は、「いろんな見方、考え方ができるようになること」、そして「価値観を交流すること」です。

ポイント1:教材選定

価値観の交流のためには、議論の起こる教材の選定が大切です。「AなのかBなのか」答えがはっきりしない、議論になる教材提示が必要です。

ポイント2:ほかの人の意見を受け入れる学級風土づくり

意見を言い合う授業の前提として、「ほかの人の意見を受け入れる学級風土づくり」が必要です。相手の考えを認めたうえで自分の意見を言えるようになる必要があります。
そのための取り組みとして、「前に発言した人のいいところを見つけて発表する」というものがあります。自分の意見を言う前にまず前の人の意見を褒めるのです。相手が自分の意見を受け入れてまず認めてくれて、その上で自分の意見を述べるため、クラスにいい空気が流れます。

③学び合い

相手の見方や考え方を受け入れながら自分の意見を述べたり、考えたりする、それが学び合いの授業です。学び合いの授業は、様々な価値観の中から新しい価値観を創造することを目的としています。

④子どもと正対する

教師と子どもでも同じ人間として、この社会を生きていく仲間としてどうしたらいいのかという姿勢でいることが、授業では大切です。これが子どもと正対するということです。子どもと正対し、教師も子どもの意見を認める姿勢がなければ学び合いも深まりません。

⑤称賛の仕方

子どもの「発言」を称賛するのではなく、その子の人間性も含めて「その子自身を丸ごと」称賛することが大切です。「いい考え方だね」より、「こんないい考え方をした○○さんってすごいよね」というふうに褒める方が、子どもの「またやろう」というやる気を引き出したり、充実感や達成感を高めることが出来ます。

⑥人間関係づくり

授業の楽しさは、「自分がまずは考える、次にお友達の考えに気づく、そして新しいものが生まれる」というところにあります。このように、「相手を認め受け入れる人間関係性」を作っていくことができるのが、授業です。このような授業の中での人間関係性は、授業の延長線上にあるともいえる休み時間など授業外での人間関係性にも影響します。そのような人間関係の基礎となる、「話を聞く姿勢」「他人を認める姿勢」というものを、授業の中で育んでいくことも、授業運営において意識しておくとよいポイントです。

⑦ズレをつくる

どの教科においても、議論が起きます。それは、意見のズレがあるからです。教材とのズレ、友達とのズレ、教師とのズレなどです。そのズレを起こすことがとても大切です。なぜなら、そのズレにどのように折り合いを付けていくか、というそこにこそ学びがあるからです。その過程の中で多面的な見方ができるようになります。

⑧授業前に布石を打つ

割り箸の授業(記事URL)の前の時間にはグラフの見方を学習したそうです。学び合いのためには子どもたちが最低限の基礎知識を共有しておくことが大切です。グラフの学習はそのための布石です。これがあってこそ子どもたちはグラフをみて議論することが出来るのです。「布石」にはこのような知識理解面の布石だけではなく、関心意欲に対する布石・思考面の布石などもあります。関心意欲に対する布石では授業前に、問いを投げておいて子どもたちに調べてこさせるなどがあります。例えば、バスの運転手の仕事についての学習をする際、「バスの運転手さんってどこを見ているの?」という疑問を投げかけておいたり、郵便ポストのはたらきの学習をするとき、「郵便ポストをつくってみよう」という取り組みを先にやっておいたりします。このように、その授業をするためにはどんな布石が必要かを考え、それを必ず投げかけた上で、授業をすることが大切です。

4 実践者プロフィール

柳沼孝一先生
立命館小学校教諭
著書に、『授業の工夫がひと目でわかる!小学校社会科板書モデル60』がある。

5 編集後記

「学び合い」の授業のお話を聞いて授業のもつ可能性を感じ、ワクワクしました。また実際見せていただいた授業でも、子どもたちの生き生きした様子から「学び合い」のよさを感じました。「学び合い」の授業を受けた子どもたちは、その先も自ら考え、周りの人と価値観を交流しながら、学びを深めていくことができるのではないかと思います。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 森七恵)

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