1 はじめに
この記事では、仙台市の小学校の先生であり、多くのセミナーを主催するなどしている鈴木優太先生の実践を紹介します。「会社活動」というクラスづくりにおけるユニークな実践で、クラスが良い雰囲気になる一助となるものだと思います。
2 「会社活動」とは?
この記事ではクラスづくりのヒントとして会社活動について 紹介します。 会社活動とは、給食当番や掃除当番、また 日直などのクラスになくてはならない当番制の仕事とは別に、なくても困らないけれど、あるとクラスの雰囲気がもっと良くなり、楽しくなる仕事のことを指します。
また、会社活動の総まとめとして、“お給料日”という振り返りの時間を年4回程度(7月、9月、12月、2月)頃合いを見計らって告知し、実施します。そこで、“学級通貨”というクラス独自の通貨を児童に配布し、それをクラスの中で児童それぞれが良いと思った会社に渡します。
3 会社活動を進める上での3つのポイント
会社活動を進める上で大切なことは3つあります。
- することを明確にする
- なぜそれをするのかという意図を明確にする
- それをする価値を明確にする
また、上記3つのポイントを児童に最初に説明することも大切です。
そうすることで、 会社活動に停滞感が起きたときや、トラブルが起きた時、そして最後の振り返りの時に役立ちます。
ポイント1:することを明確にする
児童に“会社活動とはなにか”という説明を含め、 活動のやり方を示します。
会社活動を、鈴木優太先生は以下の3つのような活動であるとしました。
- なくても困らないけど、あるとクラスがもっと楽しくなる仕事
- なくても困らないけど、あるとクラスがもっと幸せになる仕事
- なくても困らないけど、あるとクラスが学級目標に近づく仕事
これらのことはホワイトボードなどに書いて、子どもたちの目に留まるところに置いても いいかもしれません。
進め方
最初にアイデアの種まきをする。
「こんな仕事あったら面白そうだね。」と言って会社名を羅列していきます。
たとえば、“仮面会社”“福引会社”“迷路会社”“漫画会社”などです。
その羅列された会社名を元にどのようなことをするかは児童自らに考えさせましょう。それ自体を考えることも会社活動です。もちろん、羅列したもの以外に児童が思いついたものを行 ってもいいです。
この時、「得意なことを活かせたらいいね。」というアドバイスをしてあげることも大切です。
ポイント2:なぜ会社活動をするのかという意図を明確にする
会社活動をはじめるまえに、児童に 活動の目的・意図を説明することが大切です。
鈴木先生はここでは、 「学級目標である、“友達をつくれるクラスにする”ことを達成するため」としました。
ポイント3:会社活動をする価値を明確にする
会社活動をする価値 は、児童自ら得意なことを活かし、自分なりに考え動いていくことで自主性などが育まれることです。これも明確にしておきましょう。
さらに、その価値をより高めるため、“お給料日”という振り返りの時間を年4回程度(7月、9月、12月、2月)頃合いを見計らって告知し、実施します。
時期の目安は、大きな行事の隙間を埋めるようなタイミングです。
4 お給料日
お給料日 のポイントは3つあります。
- 正当な他者評価をすること
- 今までの自分たちの活動や他の友達の活動を振り返ること
- 振り返りをもとに新しいチャレンジに繋げること
この3つのポイントをもとにお給料日をマネジメントします。
お給料日の進め方
最初に、それぞれの会社に最終アピール をさせます。最終アピールでは、これまでどんなことをやってきたか、みんなに喜んでもらうためどんな工夫をしてきたか、また最後に自分の会社のデモンストレーションなどを行います。それをもとに児童は5枚の学級通貨 をどの会社にあげるか考え、選んだ会社に渡しにいきます。
やはり学級通貨という目に見える形で自分の活動を評価してもらうことは児童としても嬉しいですし、次の学期も頑張ろうと思い、“新しいチャレンジ”に繋がります。
また、学級通貨以外にお給料日にあげるものとして“言葉のお給料”があります。学級通貨はあげられる枚数に限りがありますが、“言葉のお給料”はあげ放題です。そのため、その時間に多くの児童にお互いに言葉のお給料をあげ合うように促しましょう。
言葉のお給料は紙に書いて渡します。
書く内容は以下の2つです。
- ほめ言葉
- 前向きなアドバイス
このほめ言葉とアドバイスを同時に渡すことで児童に前向きな活力を生みます。
学級通貨と言葉、2つのお給料をあげ終わったあとに、児童に今までの活動とお給料日での体験を通した感想を書かせてまとめとします。
また、この活動の中ではトラブルが起こることもありますが、その場合は児童同士で解決できるように立ち回り、最後になぜトラブルが起こり、それをどう解決したかもみんなでシェアしましょう。
5 学級通貨を使って
学期を進めるごとに学級通貨が貯まり、児童がこの通貨をなにかに使いたいと言い始めるかもしれません。(あくまで先生からはこのことを提案しないことがポイントです。)その時も、「おもしろそうだね。」と言ってあげ、どう使うかは児童に考えさせましょう。
ちなみに鈴木先生のクラスでは、ドッジボールの際に通貨を払ってボールを2個もてるルールをつくったり、ボールに当たっても通貨を払えば戻れるルールを作ったりしました。
そのほかにも、フリーマーケットとして家からいらなくなったものを持ってこさせ、それをその通貨でやり取りするということも行いました。
6 実践者プロフィール
鈴木優太(すずきゆうた)先生
仙台市の小学校で教員をしながら、「仙台教育縁太会」という教育実践発表会を主催されている他、多くのセミナーを主催、また講師としてもたくさん参加されている。とてもパワフルであり、真面目であり、教育について深く考えていらっしゃる先生。
7 編集後記
会社活動というものを知らなかった自分としてはとても新鮮で楽しい講座でした。なにより、「ただやるだけではなく、会社活動をしてから学期末のお給料日である振り返りの日を大切にしてください。」ということを強調していた姿に、この活動をよく考え企画されている背景が見え、とても勉強になりました。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 岸 剛志)
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