1年生での“徹底反復学習”~難しくて楽しいという1年生たち~(山下隆行先生)

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作成者:Nanae Mori (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

平成26年12月27日、徹底反復研究会の年末勉強会を取材しました。1年生で徹底反復学習に取り組んでいる山下先生の低学年実践を紹介します。

2 実践内容

■徹底反復学習をはじめたきっかけ

これまでどの学年でも、教科書が読めない、課題がつかめないという理由で、学び合いや問題解決的な学習がなかなか成り立ちませんでした。そんな中、具体的な手立てを講じずに問題解決学習を進めることに、問題意識を持っていました。そこで、徹底反復によって基礎基本を十分に子どもたちに身につけさせた上で、学び合いや問題解決的な学習を進めるべきだと考えました。今年初めて1年生を担当することになり、1年生でもできるかどうかは不明でしたが、子どもの実態と相談しながら手立てを講じていけば十分にできるとわかりました。

■教材

児童の実態と相談しながらスモールステップで始めていくことが大切です。初めは数の合成(9と□で10など)の問題を何度も繰り返す学習に取り組みました。教科書の内容の徹底反復、足し算プリント、と進んでいきます。「1年生で百マス計算をいきなり行ったところ子どもが百マスアレルギーになってしまった」という先生の話を聞きました。児童の実態と相談しながらスモールステップで始めることが大切です。
                

■1学期の実践

①見直し指導

はじめタイムは計らず、早く解くことよりも正確に解くことを指導しました。
「本当に全部合っているかもう一度解いて確認するんだよ。」「何度も確認することを“見直し”というんだよ。」などと教えます。しばらくしたら「できた人、見直しをして持ってきなさい。」と言いますが、1度目は受け取りません。受け取る前に「本当にまちがいはない?」と確認し、しつこく見直しの習慣を養いました。

②タイムトライアル

1年生ではまだ時計が読めないため、カウントダウン方式でタイマーが鳴るまでに終わりにするという方法を取ります。こうしてタイムの伸びをつかめるようにします。「何分までに終わりにできるかな?」と問い、みんなで目標時間を決めます。自分で目標を決めるとやる気が出ました。「タイマーが鳴るまで、赤い丸が完成する前に終わりにできるようにしよう。」と言って始めます。これを子どもたちがタイムトライアルと名付け、「よーし、タイムトライアルをやるぞー!」が算数の時間の導入となりました。1回目、例えば7分で挑戦すると、2回目は同じ問題に時間を早めて6分で取り組みます。1回目と同じ問題なのでタイムが上がります。あらかじめ見直し指導をしているので、早く終わった子には見直しをさせて時間調節をします。

④伸びを実感させる

同じ問題に繰り返し取り組むので、タイムが伸びて意欲が上がります。タイムが伸びない子には、解けた問題数に着目させるなど、その子自身の伸びを実感できるようにし、励ましていきます。自分が伸びているということをどんな形にせよ実感させることができれば、意欲が出ることがわかりました。

⑤観察する

2回目以降は、同じ問題だから質問も出ず、つまずいているところもはっきりしてくるため教師も集中して効率的に個別指導ができます。子どもの様子をじっくり観察することで、細かい問題点が発見できます。

■子どもたちの様子

・意欲、広がる

家にプリントを持ち帰り勉強したいという子が現れ、じわじわ周りが触発される形で家庭学習の輪が広がっていきました。キッチンタイマーを購入し貸し出したところ自分で時間をセットし取り組み始めました。できるかできないかの時間をセットして挑戦します。心地よい欲求不満状態が子どもの意欲を刺激しました。カウントダウン方式は分、秒を少し変えるだけで簡単に難易度が変えられるところがよかったと思います。家でも学校の隙間時間にも取り組む子も現れました。

・プラス思考

1か月間同じ問題を繰り返したある日、問題を変えてみました。クラスの多くが思うような結果を出せず、「どよん」とした空気が漂いました。しかし、丸付けが終わった時、子どもが「家で練習してくればいいんだよ」とつぶやきました。これまで数の合成から同じ問題を徹底的に繰り返し、タイムを縮めてきた経験から、「今はできなくても練習を重ねれば何とかなる」という時間軸を持つことができるようになっていました。このようにプラス思考で考えられるようになることが極めて重要です。

・難しくて楽しい!

学期の最後、子どもたちにタイムトライアルをやってどうだったかインタビューをしてみたところ、「解けるようになって楽しかった。」「早くできるようになって楽しかった。」などの感想が聞かれました。「ちょっとできなかったけど楽しかった」と言った子もいました。確かに他の子に比べるとタイムは遅かったかもしれないが自分が伸びていくことを感じ、楽しかったのだと言います。また「難しくて楽しかった」という子もいました。「みんなはどう?」と全体に返したところ、「難しい方が楽しい」ということを口にする子が何人もいました。このような情意面を育てていくことが大切です。

■ここまでの成果

①時間軸を持ち、プラス思考で考えられるようになった。
②カンニングをしなくなった。(自分の伸びを実感できたから)
③手を使って計算をする子が減った。(手を使っていたらタイムが縮まらないと気づき、自ら手を使わないでやるようになった)
④届きそうで届かない心地よい欲求不満状態が子どもの意欲を継続させることがわかった。
「チャレンジしがいがある!」と思わせたら勝ち。
→届きそうで届かない目標設定はタイムで簡単に調節が可能

■2学期の実践

①音読で集中力をあげる

2学期以降、タイムトライアルに取り組む前に全力で音読をさせました。すると集中力が上がっていくのがわかりました。音読で発散すると子どもの集中力が向上していくことがわかったので他の授業にもこの流れを取り入れました。音読→タイムトライアル→教科書の問題、課題の思考→文章問題の音読→思考というような流れで進めると子どもの集中力が途切れないのです。45分フル集中できるので授業効率が上がり、1時間に扱える学習内容も自然と増えます。まるで子どもたちが馬力のある優秀なエンジンを手に入れたようでした。

②カウントダウン方式からタイム方式へ

2学期からタイムを計測しても子どもが伸びを理解できるようになりました。10マスたし算、10マスひき算、50マスたし算と次第に難易度、量をあげながら1秒でも前の自分に克とうと集中力を磨いています。

■徹底反復で伸びを実感する

子どもは自分の伸びを感じることができれば意欲的に学習に取り組みます。しかし、次々に新しい問題に取り組む従来の方法では、問題に慣れるためにかなりの時間を費やしてしまうため、伸びを実感する時間が短くなってしまいます。
一方、徹底反復では問題に解答することに慣れる時間を圧縮し、伸びを実感する時間がたくさん確保できます。伸びは、できるようになってきて初めて実感できます。だから、まずできるようになることが必要最低条件なのです。同じ問題を徹底的に繰り返し子どもの中の「できるかどうか」という不安をなくすことで、自分の伸びを実感する以外の余計な要素を排除することができるのです。

■勉強とは集中する練習である

勉強とは手段であって目的ではない、目的は集中力を養うことである、こう考えると何をすべきかがすっきりと見えてきます。勉強させようとするから「早く集中しなさい」と言いたくなってしまうが、身につけさせたいのは集中力で、勉強は集中する練習なのだから、それを第一に子どもを徹底的に観察して集中できるものを与えるのです。

■観察の視点

子どもたちが、勉強できない、集中できない、楽しくないというときに、いくら「集中しなさい」といってマイナスな要素に働きかけても効果は上がりません。そこで、「なぜか」と観察する視点をもち、子どもが集中しちゃうものを考え、与えることで徐々に成果が出て好循環に入ります。教材に合わせるのではなく、子どもに合わせるという視点を教師が持つことが大切です。これも勉強は集中する練習であるという発想から来ています。

■子どもの集中を引き出すために最も重要なこと

子どもを観察し、分析と対策を行うことが大切です。例えば、ある子どもを観察しているうちに、8を書くのに時間がかかっていることがわかりました。計算以前に、8という数字を書くことが苦手なのです。そこで、8選手権を行いました。時間を計って、全員で一斉にとにかく8をたくさん書きます。どれだけ多くの8を書けるかの競争です。8を書くところでつまずいてしまっている子どもに対して、早く正確に書けるようにするための一工夫です。

■徹底反復のポイント

“1回1回のトライを全力でやらせる。”
  ←余計な不安を取り除いて集中を引き出す。
   ←伸びを実感させ、意欲を引き出す。(タイムの縮まり、回答数の伸び)

■集中力の先にあるもの

集中力が高まってくると知的好奇心が高まってきます。目に入るものが違ってきて考えることが変わってきます。集中を条件として量を積み重ねることで、質を変えていくことができるのです。そうして、学び合いなどが行えるようになります。
よく言われる「変化の激しい時代を生き抜くスキル」を子どもたちに身につけさせたいと思います。しかしいきなり活用力を問う問題を解かせるのではなく、「集中力を養って高速で多様に動く脳を作り上げていく中で、思考力や問題解決能力が育まれていく」→「それから活用力を問う問題に挑戦させる」という順番なのです。子どもの思考が回らないのに教師の思いで一方的な理想像を押し付けても子どもはフリーズするだけです。
脳を活性化し、日々自分と向き合う中で自分を観察する目が研ぎすまされ、見方、考え方が変わってきます。徹底反復学習は集中する練習に最も効果的であると考えます。

3 実践者プロフィール

埼玉県飯能市原市場小学校 教諭
山下隆行 やました・たかゆき
教師歴6年。課題が山積していく中、精神論が主な解決策になっている。「常識」から発想された従来の方法では成果が上がらないという問題意識を持つ。「常識」にとらわれず、教師の理屈に寄らない「普通の感覚」を大切に子どもの本来の力を引き出す方法を日々勉強中。

4 編集後記

同じ問題を繰り返して力が付くのか、答えを覚えてしまうし、飽きてしまうのではないか、私も初めはこう考えていました。しかし、タイムを縮めるという目標を自らもって意欲的に学習に取り組むことができたり、集中力が養われたり、自信を付けることができたり、自分と向き合えたり、徹底反復学習には大切な要素がたくさん組み込まれていることがわかりました。徹底反復学習で土台固めをしている子どもたちのこれからの学びがとても楽しみです。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 森七恵)

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