3つの場で国語科をつなげよう

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作成者: EDUPEDIA編集部 (Edupedia編集部)さん

3つの場で国語科をつなげよう

  • 福島県公立小学校教諭 高橋尚幸

現行の学習指導要領において、「言語活動の充実」が求められています。皆さんは、各教科において、どのような言語活動を行っていますか。その活動内容はどうのようにして決めていますか。
 「言語活動の充実に関する指導事例集【小学校版】」(H23 文部科学省)では「各教科等においては,国語科で培った能力を基本にそれぞれの教科等の目標を実現する手立てとして,知的活動(論理や思考)やコミュニケーション,感性・情緒の基盤といった言語の役割を踏まえて,言語活動を充実させる必要がある」と述べられています。つまり,国語科の学習を他教科へと繋げていくことが求められているのです。
 でも、国語科の学習が他教科に繋がっている事例って、どれくらいあるでしょう。自分の授業を振り返ると、国語科の学習内容を生かして、他の教科で書いたり、読んだり、話したりすることは、ほとんどありませんでした。国語科の学習と他教科との繋がりが不明瞭な場合や,他教科との関連を図っても年に1・2回しか場を設定できないことが多かったように感じます。以前のわたしは、
「まあ、多分、どこかで生きているだろう。」
そんな程度の感覚でした。せっかく国語科で学んだことが、他教科での学習に生かしきれていないなあ、もったいないなあ。そう反省しています。
 私はこの反省から,国語科の学習と他教科の学習を日常的に繋げたいと考え,ここ数年,国語科で学んだ書き方を使って他教科において学習レポートを書く,という活動に取り組ませています。学習レポートとは、こんな感じです。

これは6年生の算数のレポートです。こういったものを、児童は1年間に何十枚、何百枚と書き重ねていきます。しかも、学級全員が、です。もちろん、個人差はありますが、書けない子はいません。
 なぜこんなに書けるようになるのか。それは、算数や社会、体育といった他教科において、国語科で学習した「書き方」を活用しているから。言い換えるなら、他教科と国語科が繋がっているのです。
 そのための具体的な方法を、「3つの場」と「学び合う学級づくり」をキーワードに説明します。

1.書き方を学ぶ場

当たり前のことではありますが。書き方を学ぶ場とは国語科の授業です。国語科において、児童は作文の書き方を学びます。
 ここで大切なのは、「書き方とは具体的にどういうことなのか」を児童にも分かるように、簡潔に明示すこと。それがないと児童は何を身に付ければ良いのか分かりませんし、その後に活用することができません。
 例えば、わたしは今年の3年生には、身に付ける書き方として、次のことを伝えています。

(1)はじめ・なか・終わり の構成で書くこと
  (2)この3つは、段落を分けて書くこと
  (3)自分のやったこと(行動)だけではなく、その時に感じたことや理由も書くこと
 
特に力を入れているのは、構成です。
今年の3年生には、基本型として、

  • 「◯◯について、説明します。まず、…。次に、…。最後に、…。このように…。」
  • 「◯◯について、説明します。1つ目は、…。2つ目は、…。3つ目は…。このように、…。」

という2つの基本形を指導しました。また、昨年度担任していた6年生には、「みなさんは、◯◯を知っていますか。◯◯とは、〜ということです。まず、…についてです。…。次に、…についてです。…。最後に…についてです。つまり…。」という基本形を指導しました。さらに、結論を書くコツとして、教科書を元に「キャッチフレーズでまとめる」という方法を指導しました。

こういった指導をすることで、児童は「他教科でも使える書き方」を身に付けることができます。
 基本型のポイントは、シンプルであること。シンプルな方が、応用が利くのです。こういった指導は、時として「型にはめた指導」として批判を受けます。けれど、それは複雑で応用の利かない型だから起きる問題でしょう。少なくともわたしのクラスでは、同じ基本型を使っているからと言って、画一的なレポートが出来るなんてことはありません。それに、最終的には「型破り」できる力を身に付けさせれば良いのです。
 そして、もう1つ大切な事。国語の時間だけで全員が完璧に書き方を身に付けることは無理です。わたしは
「ここで完璧じゃなくても大丈夫。まだまだ書くんだから、まだまだ上手になるチャンスはたくさんあるよ。」
とよく語っています。そして、そう言ったからには、子供達に、成長の機会を用意しなくてはなりません。それが、次の「活用する場」です。

2.書き方を活用する場

国語科で学習した基本形を、他教科において活用します。社会・算数・理科はもちろん、図工や体育といった技能教科でもレポートを書くことができます。
 例えば、3年生の社会科で、「スーパーマーケットで働く人々」について学習したら、そのまとめとして、
「これから、スーパーマーケットで働く人々の仕事について説明します。わたしは、4つ見つけました。
 一つ目は、レジの仕事です。レジの仕事は、・・・」
というようなレポートが書けます。
 6年生の保健で煙草の害について学習したら、
「みなさんは、タバコにはどんな害があるか知っていますか。タバコには非常に多くの害があるのです。では、具体的にどんな害があるのでしょうか。これから説明していきます。
 まず、血管への害です。これは、・・・。」
といったレポートになります。
 シンプルな形だからこそ、様々な場で活用して書くことができるのです。
 大切なことは、徹底的に繰り返すことです。わたしは、この学習を取り組み始めたばかりの時期には、集中的に書く場を設けるようにしています。国語だけではなく、算数、社会など、他教科でも書きます。最初の2週間で10種類くらい書いた年もあります。3年生の1学期には、この基本型を元にして32種類書きました。
 これだけ書くのですから、得意な子は、すぐに書けるようになります。また、書くことが苦手だけれど、その教科が得意な子も、何度かやっているうちにスラスラと書けるようになります。そして、苦手な子でも、繰り返し書いているうちに、徐々に書けるようになるのです。
 ポイントとして、以下の3点をあげておきます。

(1)書くことの良さを伝えること。
 書くことで頭が整理される、分かったつもりでもよく分かっていないことが浮き彫りになる、話し言葉と違って後に残しておける、といったメリットをしつこいくらいに何度も語って伝えないと、「やらされ感」がどんどん強まってしまいます。

(2)何度も繰り返すこと。
 繰り返し書くことで、上達していきます。何度も書かせてあげましょう。ただし、「書き直し」はおすすめしません。その子にとって、そのレポートは書きにくい内容だったから書けなかったのです。書きにくいものを何度も書かせる時間より、書きやすい内容と出会えるチャンスを探したほうが、児童の成長に繋がります。

(3)やさしくしないこと。
 できていないのに褒める必要はありません。わたしは、「C」や「D」という評価を付けることもよくあります。その代わり、こう言うのです。
「大丈夫。また書くんだから。最初から全員がAを取れるような学習なら、わざわざ学校でやらなくていいじゃん。」
 書くことが得意な子にも、簡単にAは付けません。クラスで最も得意な子であってもBやB+といった評価になるような基準を示しています。

3.書いたものを交流する場

子供達は、教師の説明よりも、友達同士で説明しあった方がよく分かります。教師が個別対応をすると表情が曇る子が、友達の一言の方で明るい表情になる、ということも珍しくありません。
 わたしは、友達のレポートを読んで、感想を付箋に貼る、という活動をよくやります。この時に指導しているのが、レポートの良さを具体的に指摘すること。「上手だね。」「がんばったね。」といった感想では、自分が何を真似し、どこを取り入れるのか考えられていない可能性が高いでしょう。「図の使い方が上手だね。」「説明が短くまとめてあって、わかりやすい。」というように、どこが良いのかに目を向けさせると良いでしょう。
 また、なるべく多様な友達の作品を読むように勧めています。多くの教師は、学習班の中で読み合うように言うかもしれませんが、しかし、班の数名の作品しか読めないのでは、勿体無いと思いませんか?こういった時に、「一部の人だけではなく、なるべく多くの人のレポートを読みなさい。自分の参考になるレポートを書いている人が同じ班に居るとは限らない。仲良しの友達とは限らない。普段はあまり話さないような人とこそ、読み合いなさい。」と指導しています。
 多様な友達と交流できるクラスは、自然と、レポートの質も高まってきます。色々な友達と良さを認め合い、助け合いながら書くことができるからです。
 それができるようになると、わざわざ交流の時間を設けなくても良くなります。3学期になると、わたしが特に指示を出さなくても、書き終わった子同士で見せ合ったり、どう書くか悩んでいる子に自分のレポートを見せてあげたりする姿が見られます。そうなれば、教師があれこれ言わなくても、どんどん良いところを吸収していきます。

4.学び合う学級づくり

わたしの学級で、すべての子供達がレポートを書けるのは、仲間外れを作らない学級だからです。全員が仲間だと感じている学級で、周囲の子が全員書いていれば、どの子も書こうという気持ちになれます。また、相談する、レポートを見せ合う、という活動でも、分け隔てなく全員で取り組むことができています。
 なぜそんなことが出来るのかというと、教師が求めているからです。全員がレポートを書けること、それは今すぐ出なくてもいいから、諦めずに学び続けること、そのために力を合わせて助け合う学級であること。そういうことの大切さを繰り返し語って、求めています。教材や教師の発問だけで学習には取り組めない子も、友達との関わりがあれば勉強できます。そういう学び合う学級なら、何十枚、何百枚ものレポートが書けるようになります。
 「学級づくり」というと、授業とは別の時間、例えば、特別活動や道徳の時間に行われる場合が多いでしょう。けれども、授業の中で取り組む方が、はるかに効率良く、時間も長く確保できます。結果として、学習レポートもモリモリ書け、その上、誰とでも関われる分け隔てのない学級が出来るのです。
 わたしは学び合う学級づくりを進める上で、上越教育大学教職大学院の西川純教授が提唱している『学び合い』の理論を参考にしています。関係書籍も多数出ているので、興味のある方はぜひ、読んでみてください。

実践者プロフィール

  • 福島県公立小学校教諭 高橋尚幸

学習レポートと3つの場で作る『つながる国語科』の実践で、第29回東書教育賞優秀賞を受賞。

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