総合的な学習における教師の支援はどうあるべきか(シリウス)

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目次

1 はじめに

こちらの記事は、静岡県で30年間以上続く教員サークル、シリウスのホームページに掲載されている教育実践法の一つをご紹介しています。
http://homepage1.nifty.com/moritake/

2 実践内容

総合的な学習は、目標だけが示されて、内容が示されていない。何を学習するのか、どう活動するか、自由であるゆえに、混沌としている。ごちゃごちゃして分かりづらく、教師も子どもも先が見えず、立ち止まることがある。そこで、教師には次の4つの支援が求められると考えた。

1 方向づけをする

ある事柄(教師のしかけ)をもとに、子どもはいろいろな想いを持つ。その想いを具体的な活動に変えていかなければならない。この先、何を学習したいのか、子どもの想いを教師が整理していく必要がある。

その手だての一つが、イメージマップ(ウェビング)による手法である。あることがら(例「○○川」)を出発点としてその言葉から、想起する言葉をつなげていく。つながりあう言葉は、つなげていく。より多くの言葉と関連づいたものが、学習のキーワードになる。インターネットのリンクと同じ考え方。


↑中央にある「水を調べた」を中心に、思いついた言葉を次々とつなげていった。また、お互いに関係すると思うものは、線で結ぶ。こうすることで、自分の思考・したいことがはっきりしてくるので、次の活動の方向性が見えてくる。

2 活動を整理し、振り返る

内容が決まり活動を開始する。活動をしっぱなしではなく、記録し整理(分析)していく必要がある。絵や文を書くだけでは、整理にはならない。手だてとして、次のような学習カードを考えた。学習カードを書くことによって、授業は、活動→振り返り→活動→振り返り のようなスパイラル型の発展ができる。

<項目>
(1) したこと
(2) 思ったことや考えたこと
(3) 不思議に思ったこと
(4) これからしてみたいこと(学年の発達段階に応じて設定する)
(5) 絵

子どもの活動を項目ごとに記録させていく。行の左端に、項目の番号を書き、何について書いたか表示する。どの項目をいくつ書いてもいいとする。(1)→(4)と番号が増えるに従って、内容も高度になっていく。項目をつけることにより、その子のこだわり・思考が見やすいものになる。絵は、(1)~(4)のうち、一番心に残っていることを最後に描かせる。

項目を立てることで、子どもの混沌とした経験を整理し、活動の振り返りができる。また教師も、子どもの活動・思考をとらえやすいのではないかと考えている。

3 情報のありかを教える

情報化社会の到来によって、知識への価値観が変わった。

従来は、多くの情報(知識)を持っていることがよしとされたが、現在では、情報のありかを知っていることがより重要になった。つまり「○○については、□□に行けばわかる」ということである。

総合的な学習には、教科書がないこともあり、単元の初期段階では、自分で調べるという場面が多い。このとき、どこにいったら目的とする優良な情報があるか教師がアドバイスしてあげる必要がある。「休みの日に家の人と調べてみよう」などと言う安易な投げかけでいい情報は絶対に集まらないと断言できる。

4 再構成させる

集めた情報は、ポートフォリオBOXポートフォリオファイルに入れていく。ポートフォリオBOXとは、紙の大きさを問わない箱である。この箱の中に、集めた情報をとりあえずどんどん入れていく。項目ごとに、クリアファイルで分類しておく。

ある程度情報がたまったら、「○○の情報について取り出す」のように、資料を抽出する。データベースソフトの考え方と同じである。抽出条件によって自由に取り出せる必要があるから、ポートフォリオBOX内の情報は、物理的に固定しておかない。

取り出した情報をもとに、内容の再構成をさせる。集めた資料をもとに、何がわかったか自分の言葉で表現させる。


↑ポートフォリオBOX
ボックスの中にはクリアファイルを入れて、内容ごとに分類していく。クリアファイルに入らないような新聞紙、封筒、立体物なども、情報として一緒に蓄積することができる。各個人ごと教室のうしろの棚に、ずらっと並べる。前面には子どもの顔写真を貼っても良い。


↑ポートフォリオファイル
100円ショップに売っていたB4サイズの袋の中に、A4サイズのクリアファイルを入れている。こちらも、クリアファイルに入らない形式が違うものを一緒に入れて保管する。携帯性に優れ、この袋を持って外に出かけることができる。また管理もロッカーの中に入れて保存しやすい。

これは、学習カードについても同じことが言える。学習の振り返りをするときに、先にあげた項目の、どれについて自分は活動しているのか条件抽出をして、学習のまとめにする。

3 プロフィール

静岡県教育サークル シリウス
1984年創立。
「理論より実践を語る」「子どもの事実で語る」「小さな事実から大きな結論を導かない」これがサークルの主な柱です。
最近では、技術だけではない理論の大切さも感じています。それは「子どもをよくみる」という誰もがしている当たり前のことでした。思想、信条関係なし。「子どもにとってより価値ある教師になりたい」という願いだけを共有しています。

4 書籍のご紹介

「教室掲示 レイアウトアイデア事典」(明治図書2014/2/21発売)

「学級&授業ゲームアイデア事典」(2014/7/25発売)

「係活動システム&アイデア事典」(2015/2/27発売)

「学級開きルール&アイデア事典」(2015/3/12発売)

5 編集後記

総合の時間に何を学習させると良いかなかなか決まらず、苦労した先生も多いのではないでしょうか。イメージマッピングやポートフォリオ、学習ノートなど、日頃から興味のあることを書き留め、保存して蓄積していくことで、どんなことに興味があるのか、どんな風に学習の方向性を定めていったら良いのかが見えてきます。

(編集・文責:EDUPEDIA編集部 内藤かおり)

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