1 はじめに
こちらの記事は、静岡県で30年間以上続く教員サークル、シリウスのホームページに掲載されている教育実践法の一つをご紹介しています。
http://homepage1.nifty.com/moritake/
2 実践内容
(1)修学旅行の班ぎめ~子どもにとっての「ここ一番」~
1.修学旅行実行委員会で、学年共通で班編制の方法を決める。
2.実行委員会で、次のように決まる。(学年会で決めた方向に誘導)
(1)アンケート(気の合う子、苦手な子、養護学級の子と同じ班でもいいか)を取る。
(2)同性のペアを教師が決める。
(3)異性同士のペアは、子どもがちが決める。告白方式(なってください→いいよで成立)
3.ホテルは二人組なので、気の合いそうな子を教師が決める。
4.遊園地は絶叫系が得意か苦手かでグループ作り=好きな人同士。
班が決まったあと、「楽しさってね…」(山本真吾)を読み聞かせました。下記は詩の一部。
あの人がほんのちょっとがまんして
みんなでほんのちょっとをがまんすると
みんなが八十パーセント楽しいんじゃないかな
みんなで楽しいと、百二十パーセント楽しいよ
人と人が生きていくって、そういうことじゃないかな
(2)目的地を決める
教師から一方的に決められる。修学旅行ではなく子どもの希望や声を生かしたいと次のように進めている。
まず初めに尋ねたのが旅行の目的である。
どんな修学旅行にしたいですか。( 遊び中心の旅行 ・ 目的のある旅行 )
18人中16人が〈目的のある旅行〉と答えた。私たち教師もそう願っている。
- 遊びもしたいけれど、ちゃんと勉強もしたほうがいいと思うから。
- 遊んでばかりでは、修学旅行にはならない。
- 遊びも少しはしたいけれど、学習的な目標も決めて旅行したい。
- 東京でしか体験できない学習もあるから。
このような意見が続き、学習の目的を入れる修学旅行にすることにした。そこで、どんな修学旅行にしたいか、旅行の目標につながることを尋ねた。
- 東京でしかできないことをする。
- 自分が興味のあることをして、自分たちで思い出を作る。
- よく考えて行動して手際よくする。
- 自分たちで東京でしかできない勉強や思い出を作る。
- 何をどうすればいいのか、正しく判断する。
とても素敵な言葉がたくさんあげられた。そこで、その言葉を使いながら、修学旅行の目標を教師側で作らせてもらった。
修学旅行の目的
- 自分たちの計画に従い、東京でしかできない貴重な体験や学習をする。
- 何をどうすればいいのか正しく判断し、班別活動の計画を立てたり、安全に活動をおこなったりする。
- 仲のよい人だけでなく友達の新しいよさに気づく。
- 学区と東京の違いを感じ、学区の特徴についていろいろな面から理解を深める。特にお茶や川については、地域のよさを改めて感じてくる。
さて次の時間は、子どもたちにどのような分野に興味があるのかを尋ね、それに基づいて班づくりをすることにした。自分の興味のある分野について、東京でしか体験できないことを学ぶ学習の機会にしてほしいと考えた。
興味のあるのはどの分野ですか。これに基づいて班別活動の班を作ります。
子どもたちに提示したのは〈スポーツコース〉〈環境平和コース〉〈社会コース〉〈理科コース〉〈スポーツコース〉〈文化芸術コース〉である。それぞれ代表的な見学場所いくつか示したうえで、選択させた。
〈スポーツコース〉 国技館・東京ドームツアー
〈環境平和コース〉
〈社会コース〉 ANA機体整備工場・東京江戸博物館
〈理科コース〉 科学技術館・日本科学未来館・水族館
〈文化芸術コース〉 NHK・フジテレビ・美術館
子どもたちの選んだものは〈社会コース〉〈理科コース〉〈文化芸術コース〉に集中した。
人数のバランス等を考慮した結果、全員が第一希望にすることができた。メンバーの顔合わせがすんだところで、旅行の概略について説明した。
1日目は、終日班別活動で、夕方に東京タワーに集合すること。
2日目は、一斉行動で、教師が中心になって計画を立てること。
特に1日目について、終日班別活動であることを告げると「おーっ」というどよめきが起こった。目がキラキラと輝いている。こうして旅行を共にするメンバーで、見学場所の計画を立てることにした。
(3)班別活動の目的地が決定
6年間の学習の総まとめとして自分が興味のある分野を選び、東京でしかできない貴重な体験や学習をするという主旨のもと班別活動の目的地を選んでいった。最終的に4つのグループができた。
- 社会コース:社会の仕組みや歴史的なものに触れる。
- 自然コース:水や星など理科的なものを学ぶ。
- 科学技術コース:科学技術を含む理科的なものを学ぶ。
- 文化芸術コース:文化的なもの芸術的なものを学ぶ。
こうしてグループができたところで、班別活動の目的地を決めていった。
班の人たちで相談しながら、班別活動の場所を決めよう。
いくつかの候補地の中から修学旅行の目的に合うかどうか。目的の文を何度も読み返しながら場所を選んだ。本当は行ってみたいだけれど、目的とは合わないからと候補から外れたものもあった。恨めしそうに目的を読み返していたが、正しく判断できたと思う。
遊園地については、全員が〈行きたい〉なのだが、
自分が興味がある分野と、長い時間を必要とする遊園地(ディズニーランドを想定)では、どちらを優先させたいですか。
と尋ねると、全員が〈自分の興味がある分野〉と答えた。そこで班別活動で十分な時間を取り、遊園地は2~3時間で楽しめるような場所(東京ドームシティアトラクションズを想定)にすることにした。
3 プロフィール
静岡県教育サークル シリウス
1984年創立。
「理論より実践を語る」「子どもの事実で語る」「小さな事実から大きな結論を導かない」これがサークルの主な柱です。
最近では、技術だけではない理論の大切さも感じています。それは「子どもをよくみる」という誰もがしている当たり前のことでした。思想、信条関係なし。「子どもにとってより価値ある教師になりたい」という願いだけを共有しています。
4 書籍のご紹介
「教室掲示 レイアウトアイデア事典」(明治図書2014/2/21発売)
「学級&授業ゲームアイデア事典」(2014/7/25発売)
「係活動システム&アイデア事典」(2015/2/27発売)
「学級開きルール&アイデア事典」(2015/3/12発売)
5 編集後記
子どもたちが与えられた旅行を受け身でこなすのではなく、どのような目的で、何を学びたいか、といったことを主体的に考えられるような実践です。自分たちで目的を考え、計画した旅行は学びも大きく、楽しみも別格になるだろうなと思いました。ぜひご活用ください。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 安井愛弓美)
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