自分と社会を見てみよう(シリウス)

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目次

1 はじめに

こちらの記事は、静岡県で30年間以上続く教員サークル、シリウスのホームページに掲載されている教育実践法の一つをご紹介しています。
http://homepage1.nifty.com/moritake/

2 実践内容

自分や友達に当てはまるキーワードを見つけながら、自分や社会、障害を持つ人に対する理解を深める授業をした。

「私は( )です」という文を10個考えてみよう。

 
私は(ぼうず)です。
私は(背が低い)です。
私は(勉強が嫌い)です。
私は(泳ぐのが苦手)です。
私は(偉い)です。
私は(ハンサム)です。
私は(横長)です。
私は(タプンタプン)です。

一人ずつどんな人なのか発表してもらった。

いろいろな「私は( )です」が出された。自分でも認めているからのだろうか?「私は( )です」というたびに、明るい笑い声が起こった。

「みんなは、私のことを( )と言います」に文字を当てはめよう。

他の人は、私・ぼくをどんな人だと思っているのだろうか。「みんなは、私のことを( )と言います」に文字を当てはめていった。思い出して書くのは大変なので、友達に聞きながら( )に当てはめさせた。
 
みんなは私のことを(よく食べる)と言います。
みんなは私のことを(細い)と言います。
みんなは私のことを(チビ)と言います。
みんなは私のことを(面白い)と言います
みんなは私のことを(鼻が高い)と言います。
みんなは私のことを(ゲームやりすぎ)と言います。
みんなは私のことを(黒い)と言います。
みんなは私のことを(出っ歯)と言います。

こちらもたくさんのものが出された。でも先の「私は( )です」とは異なる。言われたことを少し仲間わけすることにした。

言われたことを3つに仲間わけしてみよう。

言われてうれしかったものは○、イヤだったものは×、別に何ともなかったものや反省したことには△の印をつけてみよう。

〈うれしかったもの〉
  ・優しい      ・ぼーっとしている  ・サッカーがうまい
  ・面白い      ・球がすごい     ・明るい
  ・ソフトボールレギュラー選手       ・背が伸びる
  ・足が速い     ・楽しい人      ・カッコイイ
  ・料理がうまい   ・しゃれがうまい   ・すごい
  ・ゲーム天才

〈嫌だったもの〉
  ・まるい      ・出っ歯       ・鈍い
  ・外人       ・バカ        ・おばさん
  ・泣き虫      ・細い        ・怖い人
  ・小さい      ・お化けが怖い人   ・鼻が高い
  ・黒い

〈何ともない、反省した〉
  ・テレビを寝てみるな ・うるさい
  ・ふざけすぎ     ・ゲームをやりすぎ

子どもたちは上のように仲間わけをした。

嫌だったものの共通点は何だろう。

3つに分けたものの中で〈嫌だったもの〉と感じるのは何に関係するものだろうか?

体に関係があるもの
とすぐに気づいた。体に関係あることをあれこれ言われるのはイヤなものである。

自分の周りにはどんな人がいるかな?

「( )には( )な人がいます」を考えよう。
 
自分の周りにはどんな人がいるだろうか?
クラスにはサッカーのうまい人がいます。
学校には面白い人がいます。
世界には小さい人がいます。
世界には国の特徴を持った人がいます。

たくさんの人が出たところで、これも仲間分けをした。

〈心に関係するもの〉〈体に関係するもの〉〈その他〉に分けてみよう。

〈体に関係あるもの〉だけを特に書き出してみると
  ・水泳がうまい    ・背が高い     ・野球がうまい
  ・元気な人      ・運動が好き    ・小さい
  ・細い        ・強そう      ・国の特徴を持った
  ・目が見えない    ・耳が聞こえない  ・手がない

〈心に関係があるもの〉の中でも、特に自分ではどうしようもないものはどれかを聞くと、次のものが自分ではどうしようもないものとしてあげられた。
  ・細い        ・強そう      ・国の特徴を持った
  ・目が見えない    ・耳が聞こえない  ・手がない
  ・小さい

そこで自分ではどうしようもないものの一つに障害(機能障害)があることを伝えた。

目が見えない・耳が聞こえない・手がないなど事故や病気、生まれつきの原因で体の動きや働きが十分でないこと障害(機能障害)と言います。

「みんながさっき、人に言われてイヤだったが〈体に関係すること〉ことを言われた時でしたね。障害を持つ人も〈体に関係すること〉ことを言われて嬉しいでしょうか?

障害と一口に言っても、その扱いは難しいものだと感じている。WHO(世界保健機構)の考え方をみると、障害・ハンディは次の三つに分けることができる。
 
1.機能障害
交通事故で体の一部が麻痺してしまうことや病気で機能が低下してしまうことなど、事故や病気が原因で、体の動きや働きが十分ではないこと。
2.能力障害
体の麻痺や目が不自由なことが原因で起こる、日常生活や学習をするときの困難。「腕に麻痺があるので字が書けない」や「下半身に麻痺があるので歩くことはできない」など体の動きや働きが十分でないために起こる「~できない」という状態。
3.生活上の不利や溝
一つ目の機能障害と二つ目の能力障害によって、一般の人々との間に生まれる障害。車いすに乗っているためにバスでの移動が難しいことや耳が聞こえないために人とのコミュニケーションが難しいこと、人と見た目が違うので冷たい目で見られることなど。

さて次の場合、障害になるのであろうか、ならないのだろうか考えてみた。

眼鏡をかけている人、補聴器をつけている人は障害を持つ人だろうか?

子どもたちの考えは以下の通り。

  障害をもつ人だと思う   障害ではないと思う
眼 鏡       3人       11人
補聴器       11人         3人
 
眼鏡
〈障害を持つ人〉3人

  • 障害者は眼鏡が必要だから。
  • 目が悪いというのはやはり障害がある。

 
〈障害ではない〉11人

  • 全然見えていないということではないから。
  • 元は良かったんだから障害者ではないと思う。

 
補聴器
〈障害を持つ人〉11人

  • 生まれつき耳がちょっとしか聞こえなかったり事故で聞こえなくなったりした人は障害者だと思う。

 
〈障害ではない〉 3人

  • ただ聞こえにくいだけで少しは聞こえるし、あまり区別をするとかわいそうだから。

私たちが育てたいのはこのような考えである。自分とは少し違う人をつい色眼鏡で見てしまうことははないだろうか。心のバリアフリーに気づかなくてはいけない。子どもたちには次の文を読み聞かせた。

コラム「眼鏡と補聴器」

目がよく見えない人は眼鏡をかけ、耳がよく聞こえない人は補聴器をつけます。しかし友達の眼鏡は気にならないのに、補聴器には特別な感じを持つ人がいるのではなぜでしょう。それは眼鏡をしている人より、補聴器をしている人の方が少ないからです。つまり人間には多数であるというだけで仲間意識と優越感を持ち、残りの少数派を特別だと考える傾向があるのです。このような考え方は正しいのでしょうか?いいえ、決してそうではありません。なぜなら私たちは一人一人みんな違っているのです。違ってることは欠点ではありません。

授業の感想を書こう。

  • 友達に黒いとか言って失礼だったと思いました。これからは人の悪口を言わないようにしようと思いました。障害者にはやさしくしようと思いました。
  • 人は見かけで判断してしまうんだなと思いました。そしてそんな言い方をされた人はイヤだなと思うことがわかった。
  • 人は見かけで分けたり、人が少ない方が嫌だと思っている人が多い。みんなはやっぱり嬉しいことが多い。体のことで嫌だと思っているところが結構多かった。
  • 人それぞれ特徴があるのは悪いことではないし、自分のしたことや生まれつきというふうに事情があるので、障害者の人たちも変わりはない。
  • 数の少ない人は全部特別な人、気を遣おうってずっと思っていた。でも逆に人を傷つけているんじゃないかと思う。
  • 自分がどう思われているか考えたことはなくて、悪く思われていると勘違いしてしまうこともありました。でも自分の特徴の悪いところを言われるといやでした。だけど私も言っていたのではないかと思います。なので自分が言われてイヤなことは絶対に言わないようにしようと思いました。
  • 体で細いとかいうのは自分でなりたくてなったわけじゃなく、なってしまったことなのです。なので人の体への悪口はいけないことです。みんなそれぞれ違うのだからみんな体への悪口はやめようと思った。

3 プロフィール

静岡県教育サークル シリウス
1984年創立。
「理論より実践を語る」「子どもの事実で語る」「小さな事実から大きな結論を導かない」これがサークルの主な柱です。
最近では、技術だけではない理論の大切さも感じています。それは「子どもをよくみる」という誰もがしている当たり前のことでした。思想、信条関係なし。「子どもにとってより価値ある教師になりたい」という願いだけを共有しています。

4 書籍のご紹介

「教室掲示 レイアウトアイデア事典」(明治図書2014/2/21発売)

「学級&授業ゲームアイデア事典」(2014/7/25発売)

「係活動システム&アイデア事典」(2015/2/27発売)

「学級開きルール&アイデア事典」(2015/3/12発売)

5 編集後記

自分は何気なく他人の外見や性格について思ったことを言っていても、言われた相手は傷ついているということはよくあります。こういった問題は大人になっても続くと思うので、学校で意識付けさせることができるのはとても良いと感じました。

補聴器をつけている人が必ずしも全員障がい者であるとは限りませんが、補聴器をつけている人が周りにあまりいない場合、「この人は耳に障がいを持っている人なのかな」と思い込んでしまうこともあると思います。マジョリティと違う点を特別視し、さらにそれを「劣っている」と認識してしまうのはよくないことなのではないでしょうか。子どもたちに考えさせることのできる実践です、ぜひお試しください。

(編集・文責:EDUPEDIA編集部 内藤かおり)

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