学級開きはテイクオフへの滑走路〜ここだけ絶対外せない3要素〜 (松尾英明先生)

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この記事は、2015年3月30日に文部科学省情報ひろばにて行われた、第1回EDUPEDIAセミナーの松尾英明先生による講座内容を、当サイト編集部が編集・加筆したものです。

《講座動画》

目次

1 「学級開き」の意義とは?

(1)学級開きはテイクオフへの滑走路

飛行機の離陸のように物は動かしはじめる時が一番力を要し、大変です。後から挽回することも可能ですが、最初の1日をおろそかにせず、準備して頑張れば、とりあえず軌道に乗せることができます。そこで、学級開きの1日目をどう過ごすかお話しします。

(2)学級開きで伝えたいこと3つ

「安全・安心」、「ルール」、「楽しさ」の中で、一番大切なものは何でしょう?もしも仮にこのうちのどれか1つしかないとしたら子どもをどの学級に預けますか?
もちろん安全・安心が最優先事項です。学校は危ない目に遭うことのない、安全な場所でなければなりません。ヒエラルキーで言うと、安全をベースに、その上にルール、そしてそのまた上に楽しさがあるようなクラスです。よくありがちな、楽しいけどぐじゃぐじゃなクラスは、真面目な子が安心して生活することができません。
そこで私は以下の3つを子どもたちに向けて宣言します。

①「安全・安心」の教室宣言

みんなの「安全・安心」を守ります。いじめは絶対許しません。

②「ルール」が通る教室づくり

ルールのないクラスの状態は弱肉強食、無法地帯です。実際に、いじめの起こる荒れた教室には、ジャイアンのような身勝手で横暴な子どもがいますが、その力関係を壊すのは担任にしかできません。ルールを通して自分が子どもたちを守ることをしっかり伝えましょう。

③「楽しさ」のある教室の演出

読み聞かせやマジックをします。(後述)

2  私の学級開き「完全シナリオ」

私は以下の著書を参考に学級開きを行っています。
出典:赤坂真二著『一人残らず笑顔になれる学級開き 小学校~中学校の完全シナリオ (学級を最高のチームにする極意)』(明治図書出版)

(1)自己紹介で「安心感」と「楽しさ」を(動画10:26〜)

自己紹介クイズ(担任の先生自身を題材とした○×クイズ)を行います。
クイズの用紙を配って記入してもらいます。書けたら、「できましたー」、「かけましたー」と返事をしてもらうようにします。私はその都度「はい」と返答しています。

全員記入が終わったら、1問ずつ解答・解説します。

クイズは問4、問5のみ○です。1問1問答え合わせをしながら自分の自己紹介をしていきます。また、体育以外得意ではなかったことなど、自分が小学校の頃に苦手だったことのエピソードを紹介し、今苦手なことでも、いつか取り戻せることや得意・不得意があることを伝えられます。
問4、問5の問題は先生が掃除や歌が好きであり、「掃除しようね」「歌を歌おうね」というメッセージをさりげなく伝えています。
こうして、クイズに見せかけて、担任のクラスに対する考え方と、クラスづくりの方針を伝えます。

(2)名前を呼んで「ラ・ポール」を築く

「ラ・ポール」とは、安心を与え、関係性を築くことです。
まず、教師が、「○○さん」と一人一人子どもの名前を呼びます。
そして、子どもからは、『はい松尾先生』と返事をしてもらい、握手をします。握手を嫌がる子は、ちょこっとタッチする程度でも構いません。

このとき、「○○さんは●●が得意なんだってね!」と、あらかじめ名簿に仕込んでおいたその児童が好きなものや得意なことなどの話をします。

(3)本気で叱る3つの時で「安全・安心」「ルール」を宣言

「先生はみんなのことを守るために、本気で叱ることがある」ということを伝えます。

①命に関わる危険なことをしている時

②他人を傷付けて喜ぶようなことをしている時

③3回同じことを注意しても直そうとしない時

この3つは、最初の時にちゃんと伝えます。

(4)プリント配布で「ルール」の基礎作り

プリントを回す時に、「どうぞ」「ありがとう」と言うルールを作ります。こうして、何かをするときや、してもらった時に言う型を教え、型を広めます。こうすることで、何かをしてもらった時に「ありがとう」を言える習慣づけの練習になります。

配布が終わった時に、「ちゃんとどうぞって言った人?」と確認し、褒めます。最初のうちはやらない子はほうっておき、やってる子を褒めるようにします。すると、次第に言える子が増えてきます。

(5)廊下の移動は「ゴキブリ」か「忍者」で楽しくルール学習

他の教室にうるさいと迷惑になるので廊下の移動の仕方は初めに学習しておくと良いでしょう。
まず、廊下はどのように歩くのがいいか、投げかけます。
すると子どもたちからは、「静かに、素早く移動する」と意見が出ますので、「足音がしなくて静かなゴキブリに変身しよう!」と呼びかけます。
「えー」と嫌がる子には、「忍者でもいいよ」とも言います。
子どもはすぐに忘れてしまうため、その日の1回2回だけでは身につかないので、後日も10回も、100回も事あるごとに小声で「ゴキブリ」と言い続けましょう。

(6)読み聞かせや遊びで「安心」と「楽しさ」をプラス

絵本の読み聞かせ

面白い絵本を読み聞かせるだけで、子どもに面白い先生だと思ってもらえます。有効活用してみてはいかがでしょうか。

『ありがとう、フォルカーせんせい』(岩崎書店)
岩崎直樹先生がおすすめしている本です。自分も頑張ろうという気持ちが持てる1冊です。

『3びきのかわいいオオカミ』(冨山房)
3びきのこぶたのパロディ作品。豚が悪役となり、爆笑を誘う内容です。

『りんごかもしれない』(ブロンズ新社)
ものの見方を変えて想像してみる面白さを伝えます。

マジック

① ペンが手にくっつく!瞬間移動!
初めに手にペンがくっつく、瞬間移動するだけのくだらないやつを披露します。
                                                 ② 読心術で引いてもらったペンを当てる
①でくだらないマジックを披露して笑いをとりつつも、②では、先生は魔法使いです、とアピールします。そして、②のマジックは子どもたちには一切ネタばらしはしません。
このマジックは実演する前に、あらかじめ協力者を選び(あまりしゃべらない、真面目な子)、引いたペンを示した時に目を合わせる打ち合わせしておきます。

なお、マジックについては、こちらの著書からネタを得ました。
出典:横田経一郎著『簡単!! 手品で子どもを引きつける 教室マジック24』(「教育技術MOOK」小学館)

3 まとめ

このように、学級開きは、担任が積極的にぐいぐい引っ張って行い、良いスタートダッシュを切っていきましょう。

講師紹介

松尾 英明(まつお ひであき)
教師生活14年目の小学校教員。内10年間は高学年を担任。「教育を、志事にする」という言葉を信条に、自身が志を持って教育の仕事を行うと同時に、志を持った子どもを育てることを教育の基本方針としている。野口芳宏氏の「木更津技法研」で国語、道徳教育について学ぶ他、原田隆史氏の「東京教師塾」 で目標設定や理想の学級作りの手法についても学ぶ。メルマガ「二十代で身に付けたい!教育観 と仕事術」が「2014まぐまぐ大賞」教育部門大賞を受賞。 平成27年度より千葉大学教育学部附属小学校に勤務。

編集後記

松尾先生が仕込む学級開きのネタの数々は、会場の先生たちを巻き込んで笑顔にしてしまう大変ユーモラスな内容でした。新学期1日目の雰囲気作りにぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 佐原志麻)

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