学級目標は「宝島」〜海賊船○組号の目指すもの〜(松尾英明先生)

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この記事は、2015年3月30日に文部科学省情報ひろばにて行われた、第1回EDUPEDIAセミナーの松尾英明先生による講座内容を、当サイト編集部が編集・加筆したものです。

《講座動画》

目次

1 はじめに

4月は先生が意識して子どもたちを引っ張っていく時期から、子ども主体の時期へとシフトする時期です。初めは教師主導でも、学級の成熟度が上がると、どんどん子どもが自主的に活動するようになっていきます。高学年ほど、この教師主導の時期が短い傾向があります。

2 「学級目標」設定の意義とは?

さて、みなさんの担当されるクラスでは、学級目標を作っていますか?また、学級目標は必要だと思いますか?
今回のセミナーの参加者に伺うと、『学級目標はお題目になってしまい、作っても無意味だ』という声が聞かれました。けれども、学級目標がないと教師主導の時期をいつまでも脱することができません。学級目標は子どもたちが「こんなクラスしたい」と思える原動力です。ほうっておくとやりたい放題になるので、学級目標によってみんなで目指す方向をつくる必要があります。

(1)海賊船○組号の目指すものは?

クラスを一つの船に例えると、どこへ漕いで行けば良いでしょうか?
目的地がわからないと同じところをグルグル回ってしまいますね。また、某少年マンガのように、クラスのメンバーはかなり個性的なことでしょう。しかし、全員が目的地を知っていれば、船長がいちいち指示を出さなくても、自分たちで動いて目的地を目指すようになります。学級目標はこのためにあります。

(2)学級目標でチームになる

学級は、初めは「群れ」、つまり「そこにいるだけの状態」です。子どもたちは、たまたま同じ学年の同じクラスという理由で集まっただけです。しかし、チームならばサッカーチームのように役割分担があり、明確な目標があります。学級が群れからチームになるためには、学級目標が必要です。

(3)学級目標はいつ頃作るべきか?

船を漕ぐのは早い方がいいので、なるべく早めに作ります。私の場合は4月のうちにだいたい決めてしまい、ゴールデンウィークまでに掲示物を作ってしまいます。

3 学級目標作成の手続き

それでは学級目標はどうやって作るのか。先生が「あそこへ行きたい」という学級目標は成立しません。なぜなら「それは先生の決めたことで、わたし・ぼくはそこ(目的地)へは行きたくない」となってしまいます。学級目標はみんなで作らなければいけません。今回はその手順を説明します。

(1)担任の方針を伝える

自己紹介クイズ等で担任の方針を伝えます。
自己紹介クイズに関しては、こちらの講座内容をご参照ください。

学級開きはテイクオフへの滑走路〜ここだけ絶対外せない3要素〜 (松尾英明)
https://edupedia.jp/article/5530ede2c8d202000056f19d

(2)アンケートで一人一人の願いを吸い上げる

学級を良くするためのアンケートをとります。低学年では紙に書かせるやりかたでも構いません。下記の質問は資料の抜粋です。

① どんな学級になれたら最高ですか。

② どんな学級になってしまったら最低ですか。

記入が終わったら回収し、後日名前がわからないようにみんなで内容を見られるようにする旨を伝えます。

(3)全員で一度全ての願いを共有する

内容を集計してすべて一覧にし、全員がアンケート結果を見ることができるようにします。このようにして理想の学級のすがたを共有します。

(4)キーワードを選ぶ

アンケート結果から、「最強のクラスになるためのキーワード」を各自3つずつ記入してもらいます。これは宿題にします。
また、学級目標の作成とは別に「これは絶対できてほしい!」を表すキーワードを書く欄も設けます。例えば、「掃除をやらない」「負けたときなどにねちねちしつこく言う」という意見が出たということは、そういうことで嫌な思いをしている仲間がいるということです。苦しい声を吐き出させ、共有することで、自分の知らないところで悩んでいる仲間の存在を知り、自分の行動を振り返ってもうやらないようにしよう、と考えさせるねらいがあります。

(5)合い言葉と目標を文章化する

学級通信に(4)の集計結果と、結果をベースにした学級目標の原案を掲載し、保護者にも共有します。

(6)学級目標を作成・掲示する。

掲示用に作成します。目標の上部にキャッチコピーを入れます。このキャッチコピーは、キーワードから考案しています。また、なるべく全員で作成し、みんなの学級目標だということを位置付けます。

4 学級目標を学級づくりにこう活かす

(1)学級目標がクラスの在り方を決める

事あるごとに、学級目標から逸れていないか、ずれていないか、常に指を差して照らし合わせます。

(2)朝の会は学級目標からスタート

朝の会で、みんなで声を出して読み上げます。毎日1回言えば、200回くらい言うことになるので、嫌でも覚えます。

(3)帰りの会で学級目標の振り返り

「今日の学び」という名前で3分間時間を取り、日記を書かせます。
低学年では連絡帳へ書かせ、子どもだけでなく、保護者にも見てもらえるようにします。これは、低学年は保護者との関係が強く、保護者が子どもの様子を知りたがるためです。
高学年では、教師と子どもとのつながりを大切にし、連絡帳とは別にもう1冊、秘密のノートを作ります。

(4)学級通信でも学級目標〜学級目標に保護者を巻き込む〜

学級目標を学級通信に掲載し、保護者に共有します。

(5)行事で学級目標をフル活用〜行事ごとのテーマを作って〜

行事の時は、テーマをさらに深め、行事ごとの目標を作ります。
例えば、市民縄跳び大会では、「クラスの団結力を深める」「一人一人の心と体を強くする」という目的を立て、「大会の優勝」を目標に掲げました。
目的は最終的に目指すものですので、目標をフルに活用して目的を達成できるようにできると良いでしょう。

講師紹介

松尾 英明(まつお ひであき)
教師生活14年目の小学校教員。内10年間は高学年を担任。「教育を、志事にする」という言葉を信条に、自身が志を持って教育の仕事を行うと同時に、志を持った子どもを育てることを教育の基本方針としている。野口芳宏氏の「木更津技法研」で国語、道徳教育について学ぶ他、原田隆史氏の「東京教師塾」 で目標設定や理想の学級作りの手法についても学ぶ。メルマガ「二十代で身に付けたい!教育観 と仕事術」が「2014まぐまぐ大賞」教育部門大賞を受賞。 平成27年度より千葉大学教育学部附属小学校に勤務。

編集後記

松尾先生の熱い語り口から、学級目標を通して良いクラスにしたいという強い意気込みを感じました。学級開きの際は、自分なりのアレンジを加えて実践されてみてはいかがでしょうか。また、実際のお話では学級経営に役立つ小ネタも盛り込まれていますので、ぜひ動画も併せてご覧ください。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 佐原志麻)

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