農家のしごと(後編)「社会・3年生」(シリウス)

GOOD!
1948
回閲覧
26
GOOD

作成者:Mana Tanaka (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

こちらの記事は、静岡県で30年間以上続く教員サークル、シリウスのホームページに掲載されている教育実践法の一つをご紹介しています。
http://homepage1.nifty.com/moritake/

2 実践内容

お茶農家のしごと6~お茶の木はどうして横にのびるのか~

班ごと出し合ったハテナ?の中で、自分たちでは解決しなかった問題が3つありました。その問題を全員で考えることにしました。

なんでお茶の木は上に伸びないで横に長いのだろう。

よく考えると、お茶の木だけが横に伸びたカマボコ型になっています。そのほかの木は普通は上に向かって伸びています。当たり前と言えば当たり前ですが、改めて考えると不思議です。学校前にあるお茶畑を見ながら考えました。

  • もし木が上に伸びていると、木に登って刈ったりしなくてはいけないから。横に伸びていると刈りやすい。
  • 上に伸びていると、機械で刈るのが大変でお茶摘みができないから。上に伸びるとお茶の葉っぱが刈れないので枯れて落ちてしまう。お茶が取れないで木を育てるだけになってしまうから。
  • お茶の木が上に伸びていると摘むのが大変で、機械を使うのも無理だから。横に伸びていると、お茶を取りやすいから。
  • 上に伸びていると、お茶刈りが大変になるから。上に木が伸びていると消毒や肥料が大変になるから。
  • お茶は木が真っすぐだと採るのが大変だけれど、木が横だと取りやすいから。

子どもたちはお茶の木が、手入れされていることを意識しながら発表していました。そこで、

お茶の木はそのまま自然に放っておいても横に長くなっていくと思いますか。

と問いかけます。
子どもたちは〈そのままでは横に長くならない〉と考えました。どうして横に長くならないのか、Kさんの「お茶の仕事カレンダー」を見て、木を刈る仕事が1年に5回もあることがわかりました。
また、もし木をそのまま伸ばしっぱなしにするとどうなるのか、県立美術館前にある「やぶきた原木」の写真を見せました。写真を見ると、まさしく大木になることがわかります。

もしも、お茶の木を刈らなかったらどうなるのだろう。絵で描いてみよう。

もしお茶の木を生やしっぱなしにしたら、お茶摘みはどうなるのかを想像させました。子どもたちはこのような活動が大好きです。ユニークなお茶摘みの絵がたくさん描けました。

お茶農家のしごと7~扇風機は何のためにあるのだろう~

お茶畑の見学で生まれた疑問の2つ目は防霜ファンです。この扇風機のようなものは何のためにあるのだろう。このことについて考えました。

この扇風機は何のためにあるのだろう。

子どもたちの考えは〈暑い時に涼しくする〉〈寒いときに霜が降りないようにする〉〈虫やゴミを飛ばす〉〈目印として使う〉の4つに分かれました。

〈暑い時、茶畑を涼しくする〉

  • 暑い時にちょっと下に扇風機が向いているから風が当たる。
  • 暑くて風が吹かないときに茶畑に風を当ててあげる。

〈寒いときに霜が降りないようにする〉

  • 霜がかかった時、霜を飛ばさないとお茶が凍って傷んじゃうから。
  • 霜を扇風機で飛ばしている。

〈虫やゴミを飛ばす〉

  • 紫外線をさけたり、虫を飛ばすためにあると思う。
  • ゴミを飛ばしたりする。風が来ると汚いものを飛ばしてくれるから。

〈目印として使う〉

  • 台風の時とか扇風機が回るのを見て、どのくらいの台風かがわかる。

近い考えの者同志で集まって相談した結果を発表しました。
さてそこで、

この扇風機についてインターネットで調べよう。

と投げかけました。
防霜ファンについて説明されたサイトを見せて、どんなものなのかを調べます。その結果、

  • 防霜ファンという名前であること。
  • 寒いときに霜を防ぐものであること。

が分かりました。

防霜ファンは霜を防ぐためのものであることが分かったということは、ファンが動くのは寒い季節であるといえます。このファンが動く時期とその理由について考えたました。

防霜ファンは春夏秋冬のうち、いつ回ると思いますか。

時期を勘違いしている子もいたので、霜が降りる=冬であることを確認しました。

ここで平成15年の静岡市(静岡地方気象台、曲金)における最低気温の月別グラフを提示します。これを見ると、季節ごとの温度の移り変わりがよくわかります。

防霜ファンが回るのは何月頃が一番多いと思いますか。また月に何日くらい回るでしょう。

と問いかけました。

〈1月〉5人    〈2月〉3人  〈3月〉2人
〈4月~10月〉0人 〈11月〉1人 〈12月〉1人

1ヶ月のうちでファンの回る日数については、〈26日~30日〉8人と最も多く、次いで〈21日~25日〉3人〈16日~20日〉3人であった。月の2/3は回っていることになります。
そこで今度は12月~4月の日ごとの最低気温一覧表(標高を考慮したもの)を配り、実際にファンの回った日を数えてみました。結果は、3月に3日、4月に4日のみです。「えー?」という声があがりました。

お茶農家のしごと8~防霜ファンを回す回数が少ないわけ~

前回の授業で防霜ファンが回ったのは3月に3回、4月に4回だけということがわかりました。あまりの少なさに子どもたちは驚きの声をあげていました。もっと少ないと思っていたのです。なぜこれだけしかファンが回っていないのか、ファンを回す本当の目的について考えました。

防霜ファンをたったこれだけしか回さないのはなぜだろう。これでは霜が降りてしまわないのか。

まずノートに自分の考えを書かせてみると〈薬〉〈風〉〈時期〉の3つに大別されました。

〈薬〉

  • 寒いとき薬をまいておくから大丈夫。
  • 寒くても平気みたいな寒さに強い薬をまいているから。

〈風〉

  • 12月から2月は寒くても風があるから、霜が降りない。
  • 12月から2月は風が強いから、ファンは3月4月の3~4回でいい。
  • 風が吹くから霜は大丈夫。

〈時期〉

  • 4月は一番茶をとるからファンを回している。2月は木をかっているから霜が降りない。
  • お茶はこのころ新茶の準備をしているから、3~4回でいい。

12月~2月は寒い風が吹いているから霜は飛ばされるだろう、というのはとても子どもらしい考えです。この日はここで時間となってしまったので、

防霜ファンをあまり回さない理由を家の人にも聞いてみよう。

と、投げかけておきました。さて次の時間、もう1度同じ問題について話し合います。すると今度は、時期に関する発表が続きました。

〈時期が関係している〉

  • 4月になって霜が降りると、困るからファンを回す。
  • 3~4月は一番茶を摘むときに近い。もし霜が降りるとお茶は美味しくない。だから、3月4月に回る。
  • 4月はお茶を摘むときで、もし霜が降りるとお茶がまずくなる。
  • 4月にお茶を摘む。その準備をお茶がしている。新鮮なお茶を作るためにファンを回す。
  • 摘むときの前にお茶の芽が出てくる。その準備をお茶はしている。お茶を美味しくするためにファンを回している。

だんだん正解に近づいてきました。お茶をやっている家の子はきっとどこかで聞いているのだろう。3月4月になって、新芽が出てくることを話していました。

  • 新しい芽は霜に弱い。12月から2月は新しい葉が出ていない。3月から4月は、葉が出るころで、それが一番茶になる。だから霜が降りないようにしている。
  • 意見をまとめるんだけれど、12月から2月は土がまだ温まっていなくて、芽が出ていない。3月から4月は新芽が出ている。霜が降りると、寒さに耐え抜けなくてダメな新茶になってしまうから防霜ファンを回す。

このように、家の人から聞いてきたことを図を使いながらわかりやすく説明できました。

お茶農家のしごと9~どうしてお茶は高いのか~

お茶づくりの仕事について、お茶の仕事暦を作ると、お茶を摘む作業は2回あった。農家によっては3回のところもあります。1回目と2回目、3回目にはお茶の味に違いがあるのだろうか実際に飲み比べをしました。用意したのは、新茶と3回目の摘み取りである秋冬番茶です。

新茶と秋冬番茶と飲み比べてみよう。 

実際にお茶を入れて、味・香り・色・葉の様子について比較しました。

比べをして味の違いの体感したあとで、お茶の飲み比べをして気づいたことについて発表してもらいました。

  • 味が一番茶の方が全然濃かった。秋冬番茶の方は甘かった。
  • 一番茶も秋冬番茶もどっちも甘かった。一番茶を飲むと秋冬番茶が苦くなる。うまさが違う。色が違う。
  • うまかったのは一番茶。なぜ一番茶がいいというと苦いから秋冬番茶を飲んだら、一番茶と違うと思いました。
  • 一番茶は葉が細かく、秋冬番茶は葉が太かった。一番茶と秋冬番茶にはそれぞれ特徴がある。

このように飲み比べをして違いがわかりました。では一番茶と他の時期に取れたお茶には値段の差があるのかどうか尋ねてみます。

一番茶と二番茶では、お茶して持っていった時に値段の差があるでしょうか。

〈ある〉と考えた子が10名ほど。4人は〈同じ〉と予想しました。そこでお茶商取引の値段(静岡茶市場からの資料)を少しずつ見せながら紹介していきました。

           お茶の値段(1kg)

子どもたちの予想は大きくはずれ、あまりの値段の違いに「どうしてこんなに違うの」というつぶやきが起きました。このつぶやきを学習問題として取り上げることにしました。

一番茶と二番茶ではどうしてこんなに値段が違うのだろう。

これはなかなか難しいのですが、子どもたちは考えます。

  • 一番茶はすごく新しくて新鮮。二番茶は古いから一番茶が高い。
  • 一番茶は早くにとっていて、二番茶は遅くにとっている。一番茶と二番茶はとれる時期が違うから。
  • 味が違うから。味で判断できる。一番茶の方がいいから高い。
  • 一番茶は最初のお茶で手がかかる。二番茶はちょっと古いから値が違う。
  • 色や香りや味が二番茶よりも差がついている。新茶の方がおいしいから高く売れる。

■資料  一番茶と二番茶の違い

  • 一番茶は二番茶より品質がよいといわれています。
  • 一番茶は一冬をかけて土の中からゆっくりと栄養を集めている。二番茶は一番茶を採ったあと短い期間で成長するので、栄養を十分吸い取れないからと考えられている。

お茶農家のしごと10~どうして新しい機械を買うのか~

Kさんのお茶畑の見学に出かけて子どもたちが関心を持ったことの1つに〈機械〉のことがあります。たくさんの農業用機械がありました。お茶刈り機についてもR3000という新型のお茶刈り機と旧式のお茶刈り機がありました。「いくらくらいなのだろう」と興味を持つ子がいたので、このことを学習問題として取り上げました。

まずこの機械は、30~40万することを教えました。「えー!高いな」「もったいない」の声があがります。また旧式のお茶刈り機もありこちらも立派に動くことを確かめてから考えさせました。
ちゃんと使えるお茶刈り機があるのに、何十万円もするR3000を買ったのはなぜだろう。
いろいろと自由に考え予想を黒板に出していくと、

  • 楽に使えるから。人気が出て売り切れちゃうと困るから。
  • コレクション(コレクター)だから。
  • 跡継ぎがいるから。
  • 昔の機械だとお金が少なくなる。新しいのははがたくさんとれるから。
  • 壊れた時の予備のため。
  • 新しいのがほしいから。
  • 切れ味が違うから。一ぺんにできて作業が楽だから。

たくさんの予想がなされました。思わず笑ってしまうものもあります。これらの中でどれが一番いいと思うが、お気に入りを一つ選び考えを深めました。

一番いいと思う考えを一つ選ぼう。同じグループの人と相談してもう少し詳しい理由を考えてみよう。

同じ考えの者同士が集まって、その理由を深く考えてみた。できたグループは〈切れ味が違うから〉〈楽に使えるから〉〈跡継ぎがいるから〉〈たくさん採れるから〉〈おいしいお茶になるから〉であった。

〈切れ味が違うから〉2人→0人

  • お茶刈りが終わった後、お茶畑がきれいだから。
  • 新しいからうまく切れる。

〈楽に使えるから〉1人

  • 機械が新しいと簡単で使いやすいからいいと思う。

〈跡継ぎがいるから〉3人

  • おじいさんの後に、お父さんがやって、その後は子どもがやれば買っても損にならない。

〈たくさんとれるから〉2人→4人

  • R3000なら歯が多いからお茶の葉がたくさんとれる。

〈おいしいお茶になるから〉6人→2人

  • 新しいのだと機械にゴミがついていない。古いのはついているかもしれないし、もしゴミが入っちゃうとおいしくなくなる。

一通り発表した後に、自由に討論をしました。子どもなりに理由があるようです。

  • 〈跡継ぎ〉の人に言うんだけれど、お父さん・お母さんは別の仕事があってできる時がない。あと子どもがやれるわけではない。
  • 〈おいしい〉の人に言うんだけれど、機械でおいしくなるわけではない。手で摘むんならおいしいけれど、同じ機械だから味は関係ない。
  • 切れ味がいいとたくさん採れるから、〈切れ味〉と〈たくさん採れる〉は同じ。
  • 〈跡継ぎ〉がもしいなくても、近所や親戚の人は手伝ってくれたりするし、機械をあげればよいから無駄じゃない。

話し合いの様子で〈たくさんとれる〉〈跡継ぎがいるから〉は増え〈おいしいお茶になるから〉は、二人だけになりました。そこで最後にKさんの想いを紹介します。

Kさんは、少しでもおいしいお茶を飲んでもらおうと、R3000という新しい機械を買いました。これまでのお茶刈り機よりもカーブが大きく曲がっているので、横の方の新芽も上の方の新芽も同じ長さで刈れます。葉の刈りムラがないのでおいしいお茶になります。Kさんは、みんなに少しでもおいしいお茶を飲んでほしくて何十万円も出して新しい機械を買ったそうです。

こんなにもお茶にこだわり、飲む人のことを考えて作ってくれているのだと、私はこの話を聞いてとても感動を覚えました。

3 関連記事

農家のしごと(前編)「社会・3年生」(シリウス)

4 プロフィール

静岡県教育サークル シリウス
1984年創立。
「理論より実践を語る」「子どもの事実で語る」「小さな事実から大きな結論を導かない」これがサークルの主な柱です。
最近では、技術だけではない理論の大切さも感じています。それは「子どもをよくみる」という誰もがしている当たり前のことでした。思想、信条関係なし。「子どもにとってより価値ある教師になりたい」という願いだけを共有しています。
(2015年1月時点のものです)

5 書籍のご紹介

「教室掲示 レイアウトアイデア事典」(明治図書2014/2/21発売)

「学級&授業ゲームアイデア事典」(2014/7/25発売)

「係活動システム&アイデア事典」(2015/2/27発売)

「学級開きルール&アイデア事典」(2015/3/12発売)

6 編集後記

教室内での学びだけでなく、朝市やお茶農家を実際に訪れて学べるところがとても魅力的だと感じました。解決できる疑問は自己解決し、解決できなかった疑問を3つに残すという流れが良かったです。子どもたちの疑問を精選することで、質の高い学びができると思いました。

(編集・文責:EDUPEDIA編集部 田中真奈)

コメント

コメントはまだありません

    より良い実践のためには、あなたの励ましや建設的な対案が欠かせません。
    ログインして、ぜひコメント欄をご活用ください。