先生の給料は、高いか安いか?

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元某県教委充指導主事

「ここは自分の居場所ではない」と思った時の選択肢は3つ。
思い方を変えて、一所懸命の気持ちで、振り返らずにひたむきに頑張るか、
不満だがそれを我慢して、できるだけ無理をしないように目立たないようにして耐えるか、
さもなくば、新たな居場所を探すか・・・・・・。

これは、選択です。
多くの場合、1つめの選択肢が望ましく、次の選択肢が2番目で、最後の選択肢はそもそも選択しないと考えるところでしょう。このご時世に公務員であることのメリットはとても大きく、石にかじりついても、ぶら下がってでも、丁稚奉公でも、公務員であり続けることが結果的に勝ちになる。そういう見方もあります。
しかし、私は自分の生き方を優先させました。座右の銘は「志操体現」。「社会はやってみせるところ」。生徒に話すことは、「値打ちのあることをしよう」。そして、そのように行動してきたところですが、自分が言ったようにできないのなら、新たな選択をするのが私にとっての道。それだけのことをしてきたつもりだし、求めてきたからです。

ところで、
公立学校教員のみなさんの中に、普段の自分の働きと給料を秤にかけたときに、給料が安すぎると思っている方はいませんか?私だけでしょうか?
給料のことを考えるとき、私にはいつも不満がありました。こんなに働いているのに・・・と。

多くの現場教員の生活は早朝から夜までの勤務。休日はほとんどなく、有給休暇もなかなか使えず、残業手当はなく、中学校の部活指導手当は1日やっても日給約3,000円。それも当然ながら課税対象。そういう生活が当然であり、成果は上がっていても、市民は別にそれをありがたいと思っているわけではない。別に、当然のこと。・・・やっかみはあっても、世間の評価は低い。
基本的には教科指導をもって任用されているところですが、あらゆる「必要」が学校に持ち込まれ、教員の仕事になっています。今では、食べることに関する指導が「食育」として、技術家庭科の教科の内容から飛び出て、学校の課題になっています。地域のご近所の間の不仲からくる苦情も処理します。病んだ地域の方の相手もします。

「学校はゴミ捨て場、先生はサンドバッグ」と言われて久しいですね。
周りには、上手に休んでいる年配の先生、もう自分のテリトリーしかやらない先生もいます。それでも頑張っているのは、本当に子どもたちのためには私たちがやるしかないという使命感、そして、そういう仲間がいること、それだけではないかと思います。

こうして考えてみると、
昔は「温室育ちでつぶしが利かない職業」と言われていた公立学校教員も、今日では数々の修羅場をくぐり抜けてきた強者と言えるかもしれません。いわゆる「ゆとり教育」の時代は、教員にとってはまったくゆとりではなく、あらゆるものが学校に持ち込まれる「教育ジャングル」を生き抜くサバイバルのようなものだったのではないかと思います。
モンスターと呼ばれる方々の対応。一向に話を聞かない生徒の指導。一人一人が相当の業務をこなせること。弱い立場への理解。様々な個性に対する支援。
世間ではコーチングは特殊技能ですが、教員には普通に必要な技術です。多くの教員はその技能をもっています。
世間では若者の扱いに苦労し、不満を持っているようですが、みなさんや私たちの学校ではその集団を普通に動かしているのです。
ただ、残念ながらそれは世の中からも上司からも評価されず、表にも出ない。そして、自己評価も低い。しかし、私は23年間、現場を貫いた誇りにかけて、公立学校教員は、十分に評価されるべきであると思います。辞めた今でも、そう思います。ただ、教育を巡る仕組みは変えたほうがいいところがありますけどね。
私の退職は、そうしたぞんざいな扱いや低い評価に対する挑戦でもあります。学級経営、学年経営、部活動、生徒指導、進路指導、教務、教科指導等々、この経験が世間で通用するのか、やってみる。世間の本当の評価を確かめる。そういう挑戦です。

そして、退職を心に決めて、転職活動に入りました。
そうすると、世間の状況が2つ見えてきました。
1つは、いいニュースです。「学校の先生」に対する期待は、相当高いです。好感を持たれています。「学校の先生」だから、選ばれます。
もう1つは、悪いニュースです。世間の経済状況は、もっと悪い。4%の教職調整は、実は「得がたい高給」であることがわかってきます。

転職するのに、私がまず選んだのは、私立学校でした。できれば現場で、今のままの力を発揮したいと思ったからです。その年の9月。県内を避けて、隣県の中堅私立学校の就職・転職フェアにいきました。そのうちの1校で役員面接。しかし不採用でした。年収はどれくらいですかと聞かれ、約700万円と答えると、役員は「そんなに・・・」と言葉を詰まらせました。ほかにも隣県で探しましたがなかなか見当たらないので、情報漏れの危険はありましたが、県内の1校に応募。しかしそこでも、「うちの学校で700万円というと、昔からいる、定年前の先生で1人か2人しかいません。なかなかそれだけの年収は難しいと思います」というお話でした。
「48歳(当時)、年収700万円は高額である」——これが、教育界の現状です。有名私立学校においても、人件費は削減方向にあります。お近くの私立学校の講師比率はどうですか?わかりにくいかもしれませんが、けっこう非常勤比率の高いところがあるのではないでしょうか?それが直ちに質の問題とは限りませんが、「人にお金をかけてでも」という発想はなく、ともかく人件費は抑制の対象です。働き具合や成果や努力やそんなことは関係ありません。出そうにも、出所がない。とにかく人件費は抑える。今、賃上げが始まっていますが、民間はどこもおっかなびっくりやっている状態だろうと思います。

転職するなら、所得は今の6割になると言われていましたが、今はどうなのでしょうか?結局、私は塾の密集する地域に私塾を開くことになりました。そして、先の話のように、「学校の先生だから安心だと思って」、「学校の先生だからていねいに対応していただけると思って」入会していただける生徒、保護者とともに毎日奮闘しています。個別指導で生徒の約9割は成績や順位が上がります。
学校現場にいたときに見えていた風景がすべてではありませんでした。世間の教員に対する評価は、低いとは限りません。むしろ、世間には、高く評価していただいている保護者の方々が相当お見えになることがわかったところです。

労働実態を他の職業、民間と比べれば、よく働いている教員の給料は安いです。
でも、年収ベースで世間の実態と比べると、非常に高い位置づけになります。

また、教員の仕事は、世間に出てみると、個々の保護者からは高く評価されています。
他の塾では追従できない指導ができますから、実際に生徒に思いもよらない変化をもたらすことが高い確率でできています。

これは、私の挑戦ですが、
私が私塾で成功することは、「頑張った教員は、世間でも通用する」ということになると思います。公立学校教員の評価が高まれば、みなさんの地位向上、自信回復につながり、目の前の子どもに集中でき、より質の高い教育が可能になるのではないかと考えています。

民間の立場から、みなさんにお話しできることもあると思います。
ぜひ、またこのコラムをご覧ください。

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