1 はじめに
こちらの記事は、静岡県で30年間以上続く教員サークル、シリウスのホームページに掲載されている教育実践法の一つをご紹介しています。
http://homepage1.nifty.com/moritake/
2 実践内容
豆太は物語のどこで変わったのか
前回の授業で、最初の「じさまぁ」と最後の「じさまぁ」では読み方に違いがあることが分かりました。この違いは、豆太自身が変わったためです。では、豆太は物語のどこで変わったのでしょうか。豆太の心がガラッと変わったところを探してみましょう。
そこで、このように問いかけてみました。
最初の「じさまぁ」と最後の「じさまぁ」では、読み方が違いました。これは豆太の気持ちが変わったと言えますか。
こう子どもたちに尋ねてみると〈変わったと言える〉という返事がくるはずです。そこでもう一つ子どもたちに尋ねてみましょう。
豆太の心がガラッと変わったのはどこでしょうか。
本文中から、豆太の心がガラッと変わった部分を書き抜かせてみたところ、次の3つが意見として出されました。
A:医者様をよばなくっちゃ。
B:(じさまは)歯を食いしばって、ますますすごくうなるだけだ。
C:モチモチの木に、灯がついてる。
〈A:医者様をよばなくっちゃ〉10人
- じさまが病気で死んじゃうとイヤだから勇気を出して医者様を呼んだ。勇気が出るといろんなことができる。
- じさまはお腹が痛くなって豆太は心配したので、一人で医者の所に行った。
- 足が痛いことよりじさまが死んじゃうほうがイヤだから、夜道を走っていった。
- 一人で外に出るのが怖かった。でもじさまを助けるために変わったと思う。
〈B:歯を食いしばって、ますますすごくうなるだけだ〉1人
- じさまは畳に転げたのを見て豆太はびっくりした。じさまが死んじゃいそうで怖くなって、このときに変わった。
〈C:モチモチの木に、灯がついてる〉1人
- 神様のお祭りの灯を見て勇気が出た。「弱虫になっちゃダメだ」と思って勇気が出たと思う。
圧倒的に〈医者様をよばなくっちゃ〉が優勢でした。少数派は反論が難しそうだったので、
他人の立場に立って考えてみる
他の人はどうしてそう考えたのでしょうか。他の人がどうしてそう考えたのかちょっと想像してみよう。
と、出された意見に対して自分とは違う立場に立って考えさせてみました。こう問うことで多面的に物事を見る力を養えます。子どもたちは「難しいなぁ」と言いながらも、がんばってよく考えるはずです。
〈A:歯を食いしばって〉の気持ちもわかるよ
- 「やばい、これじゃぁ大好きなじさまが死んじゃう」と思って、そこから何かがわいてきた。
- じさまが死んじゃうとイヤだから医者を呼ぶときに勇気が出た。
- 歯を食いしばっていることは、がんばって勇気を出していることだと思う。
〈B:医者様をよばなくっちゃ〉の気持ちもわかるよ
- 医者様を呼ばなくちゃって思って、豆太はこわくなって呼びに言った。
〈C:モチモチの木に、灯がついてる〉の気持ちもわかるよ
- 「じさまぁ」って豆太が言った時じさまはいなくて、じさまが体を丸めていたとき豆太の気持ちが変わった。
- 灯がついていてビックリしているときに変わった。
- 医者様を呼びに言ったあと、モチモチの木に灯がついているのを見たから、勇気が出てガラッと変わったと思う。
- 神様の祭りを見て、自分に勇気が出てきた。
それぞれが自分なりの理由を考えることができました。最後に教師自身の考えも述べて授業は終わりました。
教師の考え
私は〈A:歯を食いしばって〉のところだと考えます。〈B:医者様をよばなくっちゃ〉ではもう気持ちが完全に変わった後です。だから裸足で外に駆け出していけるのです。でもAはまだ考えが完全に変わっていない。だから“こわくてびっくらして”いるのですね。
でもこのままじゃぁ、じさまが死んでしまうかもしれないから気持ちをガラッと変えて〈B:医者様をよばなくっちゃ〉と叫んだのだと思います。
だから豆太の気持ちが変わったのは「医者様をよばなくっちゃ」と叫ぶ直前の〈A:歯を食いしばって〉いるときだと考えます。
3 プロフィール
静岡県教育サークル シリウス
1984年創立。
「理論より実践を語る」「子どもの事実で語る」「小さな事実から大きな結論を導かない」これがサークルの主な柱です。
最近では、技術だけではない理論の大切さも感じています。それは「子どもをよくみる」という誰もがしている当たり前のことでした。思想、信条関係なし。「子どもにとってより価値ある教師になりたい」という願いだけを共有しています。
(2015年1月時点のものです)
4 書籍のご紹介
「教室掲示 レイアウトアイデア事典」(明治図書2014/2/21発売)
「学級&授業ゲームアイデア事典」(2014/7/25発売)
「係活動システム&アイデア事典」(2015/2/27発売)
「学級開きルール&アイデア事典」(2015/3/12発売)
5 編集後記
ただ文章を音読するだけでなく、登場人物の心情についてみんなで話し合い、考えを共有することで、一歩踏み込んだ国語の学習になると思います。「モチモチの木」のみならず、他の様々な文章でも登場人物の気持ちについてみんなで考える学習方法は有意義なのではないでしょうか。
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