道徳:なんでわりいんか~家族愛~ (シリウス)

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目次

1 はじめに

こちらの記事は、静岡県で30年間以上続く教員サークル、シリウスのホームページに掲載されている教育実践法の一つをご紹介しています。
http://homepage1.nifty.com/moritake/

2 実践内容

「なんでわりいんか」という児童作文をもとに参観会で授業をしました。参観している保護者にも、どう思うか考えを尋ねました。正しい答えがあるわけではないので、保護者もずいぶん迷っていました。

発問1 涙が出るのはどんな時ですか?

・うれしいとき ・悲しい時 ・喜んだ時   ・タマネギをむいたとき
 ・笑った時   ・悔しい時 ・おこったとき ・あくびをした時
 ・感動した時

発問2 最近泣いたのはどんな時ですか?

 ・おじいちゃんが亡くなったとき
  ・空手の大会で3位になって悔しかったとき
  ・給食のとき変なことを言われて面白くて笑った
  ・車いすがぶつかって痛かったとき。
  ・幼稚園のときに転んでしまったとき。
  ・水泳の県大会で3位になって悔しくて。
  ・お父さんが骨を折ったとき。

ここで資料を配って読み聞かせをしました。自分でも一度声を出して読ませました。文の一部分が空白になっているので、そこを予想させました。

発問3 「ぼく」はお父さんになんと言ったでしょう?

 ・何で弟は片目が開かないの?
  ・目がつぶれているからって笑わなくてもいいのに
  ・なんで片方の目が開かないからって、笑う人がいるんだ
  ・何で僕の弟は片方の目がつぶれているの
  ・なぜ弟の左目が変なの?左目が変でなければ、みんなに嫌なことを言われないのに。
  ・笑った人がいたから怒鳴ってあげたよ。
  ・左目が悪くても弟には変わりがない。
  ・僕って悪いこといったかな。いくら左目が見えなくても、僕のたった一人の弟なのに。なんでそんなこと言われなきゃいけないのさ。

たくさんの考えが出されました。そこで私がゆっくりと言葉を書きました。
“弟の目 なおらんかったら ぼくの目一つあげる”
子どもたちは、一文字一文字声を出して読んでいき、全文を読み終わると「シーン」となりました。

発問4 「ぼく」の涙はどんな涙ですか?

子どもたちは「うーん…」と黒板を見比べていたが
「ぼく」と「お父さんとお母さん」では涙のわけが違う、と考えました。

 ・「ぼく」は悲しくて、「お父さんとお母さん」は感動したと思う。
  ・「ぼく」は笑われて悔しかった。「お父さんとお母さん」は、弟の目がつぶれているのは悲しいけれど、「ぼく」がそう言ってくれて嬉しかった。

このように「ぼく」は悲しい、悔しい、「両親」は感動、うれしいという考えが多かったです。私はこれに加えて「ぼく」の決心を感じました。“ぼくの大事な弟だから、ぼくが守っていきます”の文に兄としての決意が読み取れます。

発問5 大事な人を一人思い浮かべてください。あなただったらその人に目をあげますか?

これは考えが分かれました。「えーっ」という声が上がり、迷っていました。

〈あげる〉10人
 ・弟の方が大切だし、僕はお兄さんだから何とかなると思うから。
 ・目をあげてももう片っぽあるから、片っぽあげちゃう。
 ・片目があるからいい。大事な人だから。
 ・自分のより弟に目をあげて弟のことを馬鹿にしないでほしい。
 ・弟は大事だから。弟にあげて片方の目だけで見えるから。

〈あげられない〉25人
 ・いくら大事な弟でも勇気がない。
 ・自分の目がなくなったらも大変だし、またぼくに誰かが目をあげると言ったら誰かが見えなくなっちゃう。
 ・人に目をあげたら自分が大変だから。
 ・あげられないけれど、大切な人だから、その人の分まで頑張ったり、その大切な人を助けたりはできる。
 ・あげられないけれど、その人のために手伝いならしてあげる。
 ・そんな勇気はないけれど、もっと守ってあげられる。

どちらが正しいということはありません。参観をしていた保護者も迷っていたようです。しかし、人の親として、子どもたちよりもより深い思いだったことでしょう。最後に授業の感想を書いてもらいました。

 ・今日の授業で、自分でも人の役に立ちたいと思いました。
  ・こういう勉強やってよかったな。
  ・僕はこれで感動しました。
  ・いくら大切な人でも自分のものはあげられないという意見がありました。感動的でした。
  ・他の人に助けてもらう代わりに自分が助ける。
  ・私にはそんな勇気がないけれど、この文に書いてある僕はすごい勇気があるな。私ももっと勇気を集めよう。

3 プロフィール

静岡県教育サークル シリウス
1984年創立。
「理論より実践を語る」「子どもの事実で語る」「小さな事実から大きな結論を導かない」これがサークルの主な柱です。
最近では、技術だけではない理論の大切さも感じています。それは「子どもをよくみる」という誰もがしている当たり前のことでした。思想、信条関係なし。「子どもにとってより価値ある教師になりたい」という願いだけを共有しています。

4 書籍のご紹介

「教室掲示 レイアウトアイデア事典」(明治図書2014/2/21発売)

「学級&授業ゲームアイデア事典」(2014/7/25発売)

「係活動システム&アイデア事典」(2015/2/27発売)

「学級開きルール&アイデア事典」(2015/3/12発売)

5 編集後記

最後の問について、片目をあげると答えた子供も、あげられないと答えた子供も、自分の損得ではなく、他人の気持ちを根拠に考えていたことが印象に残りました。物語の登場人物の感情からスタートして、子どもたち自身の感情へと問いを広げていくことで、教材を活かした道徳の授業ができています。正しい答えはなくとも、子どもたちに他人を思いやる道徳心を芽生えさせることができる実践だと感じました。

(編集・文責:EDUPEDIA編集部 小川)

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