あまりのあるわり算―説明活動を取り入れた授業―(木下幸夫先生)

67
目次

1 はじめに

本記事は、「関西算数授業研究会 第11回公開研究会」(2015年8月29日・大阪教育大学附属池田小学校) で行われた公開授業をもとに作成しています。説明活動を通して、児童に本質的・実感的な理解を促す実践を紹介します。

2 実践のアイデア

「あまりのあるわり算」は、立式や計算については理解できる一方、あまりと除数の大小関係についてはつまずきが見られる単元である。具体的には「23÷4」の答えを、「4あまり7」とする誤答などがある。
これが間違いであること、正答が「5あまり3」であることを理解する児童は多いが、そのような児童も「なぜ4あまり7ではいけないのか」、本質的に理解しているとはいえない。
間違いだと言うには、「なんとなく」や「みんなが言うから」ではなく、論理的に説明できる必要がある。
 そこで本時では、「23÷4の答えが“4あまり7”でないことが分からない友達になんと説明したらよいか」という課題を設け、児童に説明活動を求める。

3 指導計画(全5時間)

第1次 あまりのあるわり算の理解…3時間(本時2/3時間)
  第2次 あまりを考える問題…2時間

4 本時の目標

「あまりはいつもわる数より小さい」という性質について、説明活動を重ねることで実感的に理解することができる。【数学的な考え方】

5 本時の展開

1.運だめしを通してあまりのあるわり算について考える

■運だめし

児童に、「あまりが3になったら今日は運がいい日」であることを伝える。問題のカードを3枚用意し裏返しで貼っておき、「参会の先生方(会場のお客さん)」 「男の子」「女の子」の運だめしをしよう、と提案する。裏返すカードを児童に選ばせ、式を計算して、それぞれの運だめしをさせる。
ゲーム感覚で児童の意欲を喚起することができる。
教師:「あまりが3ということは、男の子は今日は…」
児童:「いい日!」

■計算する

あまりが3かどうか運だめしをするため、児童が式を計算する。あまりのあるかけ算の計算の仕方を復習する。
21÷9=2あまり3 (参会の先生方・会場のお客さん)
 9の段の九九
 9×2=18
 21−18=3
18÷5=3あまり3 (クラスの男の子)
 5の段の九九
 5×3=15
 18−15=3
③ については教師が主導で計算式を書く。
 23÷4=4あまり7 (クラスの女の子)
 4の段の九九
 4×4=16
 23−16=7
と書くと、児童から「違う!」と声が上がる。

2.「23÷4=4あまり7」という表現の誤りについて考える

■課題の提示

③について、計算が間違いだと主張する児童がいる中で、「4あまり7と答えてしまう子の気持ちは分かりますか ?」と問いかける。そこで、間違いだと分からない友達に「4あまり7が間違いであることを説明しよう」と、課題を提示する。
課題:「23÷4=4あまり7にならないわけを説明しよう!

■ノートで説明

まずは、児童一人一人がノートに説明を書く時間を設ける。説明は、図や絵でも、式でも言葉(文)でもよいことを確認しておく。先生が読んだらわかるように、友達に説明できるように、ということを伝える。
机間指導では、「どうしてそう思った?」などと問いかけて理由を求め、考えさせる。

3.交流し、“あまりはいつもわる数より小さい”という性質について共有する。

ノートをもとに、隣同士で説明し合う時間を設ける。児童数人を指名し、全体に向かって説明を求める。

■図で説明

説明:「23を4つずつにわけると、5つできて、3つあまる。」
ここで、「なぜ、4のかたまりを4つ作って残りが7」としてはいけないのか、説明を求める。
説明:「7の中に(4のかたまりが)もう一つとれるから」
説明を受け、はじめの計算式を修正する。

■式で説明

説明:「4の段の九九を書いていくと、4×5=20の次は4×6=24になってしまうから」
ここで、なぜ4×6は使わないのか、説明を求める。
説明:4×6=24では、もとの数23を超えてしまうから4×6は使わない。

■言葉で説明

説明:「あまりが7だとわる数(4)よりも大きくなってしまうから、4のかたまりがもう一つとれる」

4.学習をふりかえる

最後に、「あまりの7はわる数より大きくなってはだめなんですか?」と問いかける。ここで、「あまりの数はわる数よりも(いつも)小さいです。」ということを確認し、続けて「なぜならば…」という書き出しフォームを与え、学習をふりかえりやすくさせる。

6 実践者プロフィール

木下幸夫先生
関西学院初等部 教諭

授業のユニバーサルデザイン研究会 関西支部 会員
 ホームページ http://www.udkansai.net

【共著】
『算数科授業づくりのポイント・2年』

『表現力はこうして育てる! 2年—子どもが動く算数的活動15』

『講座算数授業の新展開第2学年』

『活用力が育つ「算数的活動」3年』

『授業のユニバーサルデザインを目指す「安心」「刺激」でつくる学級経営マニュアル』

『思考力・表現力を評価する算数テスト集』

(以上、東洋館出版社)

『ほめて育てる算数言葉—算数授業の言語活動を本当の思考力育成につなぐために』(文溪堂)

7 編集後記

十分理解しているつもりでも、人に説明しようとすると意外と困難なことがあります。説明しようと試みてはじめて、自分が本当はよくわかっていなかったことに気付くのです。違う、間違っているというだけでは、わからない人を説得できない状況に直面し、式や図を使って説明を試みる子どもたちは、着実に理解を深めているようでした。また、友達の発表を聞いて、その説明では不十分だと思ったり、どうしてそう言えるのかと考えたりする場面も、理解を深める大切なステップになっていたと思います。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 森七恵)

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次