私たちのくらしと政治14 ~選挙のしくみ~ (シリウス)

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目次

1 はじめに

こちらの記事は、静岡県で30年間以上続く教員サークル、シリウスのホームページに掲載されている教育実践法の一つをご紹介しています。
http://homepage1.nifty.com/moritake/

2 実践内容

選挙の仕組みについて、シミュレーションを取り入れながら学習をおこないました。シミュレーションは実際に体験をしながら学んでいくので、説明だけの授業よりも頭に入りやすいようです。まず、教科書を読みながら、選挙についての説明をおこないました。

◆教科書で扱っている内容
* 20歳になると、全ての男女に平等に選挙権がある。
* 投票所で用紙に記入するところは区切られ、誰に投票したかわからない。
* 候補者は、人々に自分の政策を訴える選挙運動をする。
* 政治の考え方に同じ意見を持つ人が集まって政党を作っている。 

説明をした後、ニセ選挙をすることにしました。その流れは次のようなものです。

◆選挙シミュレーション
1.同じ考えを持つ人たちが集まり団体を作る。
2.政党を設立し、政党の名前を決める。
3.それぞれの政党の政策を考える。
4.立候補者を立てる(1政党1~2名)
5.選挙運動をする。
6.投票をする。誰に投票したかは、わからないように隠して書く。
7.開票して、当選者を決定する。(立候補者の50%を当選とする)

◆シミュレーションでの留意点
1.簡単にいうと友達同士が集まるということです。
2.好きな言葉をノートに書き出して、それを組み合わせれば政党の名前ができます。日本国憲法前文の中から捜してもいいです。
3.私たちは、こんな日本にしたいという願いのことです。
4.人数に差があるので、1人にするか2人にするかよく考えましょう。
5.他の政党(有権者)の人に、願いを話していきましょう。脅されたり、何か物をもらったら申し出て下さい。選挙違反です。
6.人に見せないように書きます。他の政党に寝返る子も出てくるので先生が選挙管理委員を務めます。
7.黒板に正の字を書いていきます。最近は、こんな選挙をしていないので、一票入るごとに「おーっ」とどよめきが起こります。

まず最初に同じ考えを持つ人が集まり集団をつくりました。

指示1 政治団体立ち上げ

「同じ考えを持つ人同士で集まって、政治団体を作りましょう。メンバーが集まったら、政党を作り名前を決めます。政党の名前が決まったら、どんなことをしたいか政策を相談しましょう。」

  • 同じ考えの人ってわからないよ。
  • 政治のことなんて考えたことがない。

子どもたちがこう言うのも、もっともな話です。「同じ考えを持つ人どうし」というのは、簡単に言うと友達ってことです、とアドバイスすると、いつもの仲間で集まりました。実際もこんなところなのでしょうか?メンバーが集まったところで、次に政党名です。初めは駄洒落のような名前でした。

指示2 政党名決定、政策

「自分の好きな言葉をノートに書き出しましょう。難しい人は憲法の前文から、探してもいいです。言葉が見つかったら、その言葉を組み合わせて、政党名を決めましょう。」
 
決まった政党名と、政策は次のようなものでした。
* 自由党:差別をなくす。一人ひとりの活躍の場を作る。教室をきれいにする。本を広める。
* 英雄党:体の不自由な人の生きがいを作る。差別をなくす運動。老人への気配りを増やす。景気回復への協力。
* 念願党:不自由な国をなくす。日本とかで要らないものを集めて不自由な国に送る。
* 正政党:正しい選挙をする。今の汚れた政治を正しい政治にする。誰もが平等に暮らしていける。
* 平等党:国民が差別なく暮らせるよう国民平等。なるべくリストラなし。どの会社の同じ給料で、値段もアップする。
* 平和党:差別をしない。クラス全員で交流を深める。

どれも素敵な名前と政党です。次に立候補者を立てて選挙をすることにしました。

指示3 選挙運動

「それでは政党ごと立候補者を決め、選挙運動をしましょう。しばらくしたら選挙をします。」

選挙運動は、まさしく本物のように、ワーワーガヤガヤ賑やかしいものになりました。あちらこちらの街角で、立会演説をしています。同じ政党の仲間は、一声出すごとに「そうだ!」ぱちぱちとサクラ役を演じています。教師用の椅子を使って、選挙カーにして遊説している政党もいました。「もしも選挙運動中に、○○をあげるからとか、入れないと殺すなどの脅しがいたら教えてください。その候補者は落選になります」と罰則についても触れました。
どの有権者(子ども)も、選挙に興味を持って熱心に取り組んでいるのがすばらしかったです。本当の選挙もこうあってほしいものです。立候補者が全員の前で公約を述べたあと、投票に移りました。

指示4 投票と開票

「投票所では誰に投票したかわからないようになっています。みなさんも仕切を作って投票しましょう。」

ノートや教科書でついたてを作って必死で隠しながら書いていました。投票が済
んだところで開票です。教師が選挙管理委員になり、全員によく見えるよう公開でおこないました。
「○○さん、一票」「おー!」「△△さん」パチパチパチ。最近の子どもたは、このような選挙に慣れていないので、票が入るごとにどよめきが起こりました。新鮮だったようです。

全ての開票が済んだところで、上位6人が当選したのですが、政党を作るときの人数で当選、落選が決まりました。数の論理がきっちりと働いていることも、本当の政治とそっくりでした。

3 プロフィール

静岡県教育サークル シリウス
1984年創立。
「理論より実践を語る」「子どもの事実で語る」「小さな事実から大きな結論を導かない」これがサークルの主な柱です。
最近では、技術だけではない理論の大切さも感じています。それは「子どもをよくみる」という誰もがしている当たり前のことでした。思想、信条関係なし。「子どもにとってより価値ある教師になりたい」という願いだけを共有しています。
(2015年1月時点のものです)

4 書籍のご紹介

「教室掲示 レイアウトアイデア事典」(明治図書2014/2/21発売)

「学級&授業ゲームアイデア事典」(2014/7/25発売)

「係活動システム&アイデア事典」(2015/2/27発売)

「学級開きルール&アイデア事典」(2015/3/12発売)

5 編集後記

子どもからすると、選挙といえば選挙カーや演説といった選挙活動のイメージが強いと思います。この選挙シミュレーションでは、政党立ち上げや政策の決定、開票など普段見ない部分も学ぶことができるところが魅力的です。今回は小学校高学年の授業ですが、工夫次第では小学校中学年~中学生まで幅広く行える実践だと思います。ぜひ挑戦されてみてはいかがでしょうか。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 犬塚真優子)

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