1 はじめに
こちらの記事は、静岡県で30年間以上続く教員サークル、シリウスのホームページに掲載
されている教育実践法の一つをご紹介しています。
http://homepage1.nifty.com/moritake/
2 実践内容
くらしをささえる水5「学校の水道代はいくら?」
前回の授業で、水はただではなく有料であることが分かりました。そこで、授業の翌日、子どもたちは自分の家のどこにメーターがあるのかを調べてきました。このやる気がうれしいですね。全部で11人が家の様子を話してくれました。
発問1「家にもお金を払っている証拠がありましたか?」
- うちのところの横らへんにメーターがあった。だいたいの家が入口あたりにある
- だいたい、どの家にもメーターがある
- 家計簿を見たら水道代があった
- 駐車場の横にメーターがあった
- トラックのある小屋の近く。ふたがしてあった
さて、多くの家で水道代を払っていることを確認してから、いくら位払っているのかを予想しました。
発問2「水道代を予想しよう。学校や家では、一カ月いくらくらいだろうか」
水道代など普段意識したことがないので、予想もバラバラでした。学校の1カ月で考えましたが、1回目の予想では、ほぼ全員が1万円から10万円の間でした。最高額は12万円で、2人が予想しました。
これだけではわからないので、水道のメーターを見てきましょう。
指示1「これだけではわからないので、水道のメーターを見てこよう」
学校の水道メーターは、体育館横の駐車場にあります。前日の数値と比べてみることにしました。
[メーターの数値]
5/1 14:00 43785立方m
5/1 15:30 43791立方m
5/2 11:30 43797立方m
単位の立方m(1立方mは、1リットルのペットボトルの1000本分)についてはまだよく知らないので、「あ、昨日より6増えている」などと言っていました。数値を確かめたところでもう一度水道代を予想させると、
〈1万円〉4人 〈2万円〉0人 〈3万円〉2人
〈4万円〉11人 〈5万円〉8人 〈6万円〉1人
〈7万円〉3人 〈8万円〉2人 〈9万円〉3人
〈10万円~〉0人
という予想になりました。1回目よりも料金を下げた子が多く、4~5万円という予想が最も多かったです。
指示2「電卓を使って広小の水道代を計算しよう。数字を言いますから、その通りにボタンを押します」
私の手元には事務室からもらった水道料金の表があるので、数字をゆっくり読んでいきました「1、4、1、8…」子どもたちは真剣そのものです。
結果は、
1年間あたり1418682円/年
1ヶ月では、約12万円/月
1日では、6450円/日÷220(授業日数)
「一カ月約12万円かかっています」と正解を告げると「え、えーっ」という声があがりました。まさかこんなにも使っているとは思わなかったのでしょう。
指示3「学校の水道代を調べてわかったこと・思ったこと・考えたことを書きましょう」
- 上水道代を調べたのだ。お金はどのくらい払っているが勉強した。そして学校は、1年141万円もした。1カ月で12万円もするのだった。びっくりした。そして1日6450円くらいはらった。すごく多くてすごくびっくりした
- 一カ月12万円のお金があるんだってね。1日は6450円くらいのお金を使って、お母さんたちは大変だろうな
- 私は学校で1年で141万円もかかるなんて知らなかった。一カ月で12万も使っていたなんて信じられない。私の考え(1カ月7万円)だと思っていた
- 僕は学校の水道代は、1日800円くらいだと思っていたのに、本当は6000円くらいでした。1カ月は12万円も払っているなんてびっくりしました。
- こんなに水道が高いなんて知らなかった。でもこんな高い水道を払う人もすごいな
くらしをささえる水6「水道の人は儲けすぎか」
これまでの学習で広小は1年間で141万円も払っていることが分かりました。こんなにもたくさんのお金をもらう人がいるのです。教材にお金と長いものを取りあげると、子どもはよく考えるようになります。今回はお金に焦点を絞っていきました。
発問1「広小は1年で141万円も払っている。誰だか知らないけれど、儲けすぎていませんか」
直感で手をあげてもらうと〈儲けすぎ〉3~4人 〈儲けすぎじゃない〉30人ほどでした。「えーっ、儲けすぎじゃないよ」という声が大きかったので
発問2「では集めたお金を何に使っているのだと思いますか?」
このように問いかけて、お金の使い道に目を向けさせました。教科書や資料集などを見ましたが、何とも心もとない様子です。「電話で質問してもいいよ」と声をかけていたので、そのうち「先生、インタビューをしてみたい」という声があがりました。
指示1
みんなが質問してくる先は、市役所・浄水場・水道会社・学校の先生などがあります。インタビューするためには、次のことをしっかり決めておかなくてはいけません。
- 集めたお金の使い道の予想
- インタビューしたいこと(質問内容)
どこにインタビューしたいのかグループになりましょう。
グループができたところで、集めたお金の使い道について予想を立て始めました。また質問することについても決まったようなので、グループごと相談したいことを発表し、電話インタビューの事前練習もしました。一人一つはお金の使い道について考えさせます。
発問3「集めたお金をどんなことに使っていると思いますか」
〈水道会社〉15人
- みんなの給料で使っている
- 吸水ポンプで水を吸っている
- プールの水で大量に使っている
- 水をきれいにする機械がある
- 図書館のお金に使っている
- 家(施設)を立てるために使っている
- ボーナスを出すため
- 寄付をしている
〈市役所〉3人
- 消毒のためにお金がかかる
- 下水の汲み取りの機械
〈浄水場〉10人
- 働いている人のボーナスになる
- 機械を動かすお金
- 次にお金を渡している
- 機械を買ったお金を返す
- 貯水池から水を運ぶ時に使う
- ボランティアの人にあげる
- 会社を支えるお金
- 沈殿池に使うお金
〈他の学校〉2年生の時にお世話になった山田先生
- 他の学校と広小を比べてみる。広小は何か無駄に水を使っているのかもしれない
3 プロフィール
静岡県教育サークル シリウス
1984年創立。
「理論より実践を語る」「子どもの事実で語る」「小さな事実から大きな結論を導かない
」これがサークルの主な柱です。
最近では、技術だけではない理論の大切さも感じています。それは「子どもをよくみる」
という誰もがしている当たり前のことでした。思想、信条関係なし。「子どもにとってよ
り価値ある教師になりたい」という願いだけを共有しています。
(2015年1月時点のものです)
4 書籍のご紹介
「教室掲示 レイアウトアイデア事典」(明治図書2014/2/21発売)
「学級&授業ゲームアイデア事典」(2014/7/25発売)
「係活動システム&アイデア事典」(2015/2/27発売)
「学級開きルール&アイデア事典」(2015/3/12発売)
5 編集後記
学校全体を見ていくだけでも子どもたちにとっては刺激的なことだと思いますが、今回は水道会社や市役所、浄水場、他の小学校と様々な世界を見ていきます。この授業をきっかけに、ますます世の中に関心を持っていってほしいと思いました。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 田中真奈)
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