1 はじめに
こちらの記事は、静岡県で30年間以上続く教員サークル、シリウスのホームページに掲載されている教育実践法の一つをご紹介しています。
http://homepage1.nifty.com/moritake/
2 実践内容
「アレクサンダとぜんまいねずみ」は、かわいがられていたおもちゃのウィリーが、貧しく危険なアレクサンダと同じ立場になって大喜びをするというどんでん返しのおもしろさがある物語です。
主人公のアレクサンダの気持ちが、はじめとあとでは全く異なっています。ここがこの作品の山場であると考えます。安全で満たされていても主体的ではない生き方よりも、危険で満たされなくても生き生きと自ら生きる方がどんなに充実しているかをこの物語は暗示しています。
5.アレクサンダが気がついたこと
ウィリーやとかげとの交流を通して、アレクサンダは何に気がついたのでしょうか? この問題を考えることで、物語のテーマに迫りました。
発問1 アレクサンダが気がついたことは何ですか(※青色=教師の発問/以下同様)
〈主体的な生き方〉
- アレクサンダは、自由に動けること走れることに気がついた。ぜんまいねずみは、ぜんまいがないと動けないけれど、アレクサンダは自由に動ける。
〈友情〉
- アレクサンダは気持ちが変わった。ウィリーを変えれば、これからも友達で一緒に暮らしていける。
- せっかく友達ができたのに、すぐにいなくなるのはイヤ。
- 初めてできた友達がウィリー。友達が捨てられてもう会えなくなるのはイヤ。
- どういう生活でも友達が見つかったら、貧しくてもいい。せっかく見つかった友達だから、一緒に話をしたい。
- アレクサンダがぜんまいねずみになると、ウィリーは捨てられて友達がいなくなる。
〈自分自身の心の変化〉
- 自分が願いを変えてウィリーをぼくみたいなねずみにかえてほしいと思った。
- 初めはぜんまいねずみになりたいと思った。でも古くなるとゴミ箱に捨てられるのを見て、あとから後悔した。
- アレクサンダは初めウィリーのようになりたかったけれど、新しいおもちゃももらったからって捨てられるようだったら、ウィリーをアレクサンダのように変えてあげたいと思った。
- ウィリーが捨てられるのを見ちゃった。ぜんまいねずみになんなくていいから、助けてあげたい。
〈そのほか〉
- 人間はなぜネズミを見るとすぐに「たすけて」というのか?人間から見るとネズミは気持ち悪い。でもみんな命を持っている。箒でたたくのはいけないと思う。
「せっかく友達になったウィリーと別れなくない」という意見が多く見られた。この物語には「主体的な生き方」というテーマのほかに「友情」というテーマもあると感じた。
最後にこう尋ねて、この物語の授業を締めくくりました。
発問2 貧しくて暗闇の生活なのに、アレクサンダの心が変わったのはなぜですか?
- ウィリーみたいにボロボロになると考えたから。
- 突然捨てられちゃうから。
- ウィリーが好きだから。
- ウィリーを変えれば、友達で自由もできるから
6.アレクサンダとぜんまいねずみ(授業アイディア)
- このお話に出てくるのは誰ですか?
- 一番活躍するのは誰ですか?二番目に活躍するのは誰ですか?
- 始めのアレクサンダと終わりの方とでは、どちらがよいと思いますか?
- アレクサンダとウィリーの違うところを探しましょう。
- アレクサンダの悲しいところはどこですか?
- アレクサンダが望むこと、ウィリーが望むことは何ですか?
- アレクサンダが一番欲しいものは何ですか?
- アレクサンダはウィリーを自分より上だと思っていますか?どこでそれがわかりますか
- アレクサンダが、ぜんまいねずみから生きたねずみに変えたいと思ったときはいつですか?
- アニーはウィリーのことが大好きですか?
- 「胸をどきどきさせて…」の時、アレクサンダはどうして欲しかったでしょうか
- アレクサンダが「言いかけてやめて」から「とかげよとかげ~」と言うまでにどのくらい時間がかかったでしょう。
- アレクサンダが言いかけてやめたのは、ウィリーのことを思い出したからですか
- アレクサンダがウィリーを自分のように変えてもらおうと思ったのはいつですか(アレクサンダの気持ちが変わったのはいつですか?)
- ウィリー、アレクサンダの生活を一言で言うと、どういう生活ですか→ウィリー:幸せな生活、楽しい生活/アレクサンダ:悲しい生活、危ない生活、貧しい生活
- それだけ違いがあるのに、なぜウィリーをアレクサンダのようにしてしまったのでしょう。
- アレクサンダは、何に気がついたと思いますか? (作者の伝えたかったことは何ですか)
- レオレオニの絵本を聞こう : スイミー、コーネリアス、ペツェッティーノ、さかなはさかな
3 プロフィール
静岡県教育サークル シリウス
1984年創立。
「理論より実践を語る」「子どもの事実で語る」「小さな事実から大きな結論を導かない」これがサークルの主な柱です。
最近では、技術だけではない理論の大切さも感じています。それは「子どもをよくみる」という誰もがしている当たり前のことでした。思想、信条関係なし。「子どもにとってより価値ある教師になりたい」という願いだけを共有しています。
4 書籍のご紹介
「教室掲示 レイアウトアイデア事典」(明治図書2014/2/21発売)
「学級&授業ゲームアイデア事典」(2014/7/25発売)
「係活動システム&アイデア事典」(2015/2/27発売)
「学級開きルール&アイデア事典」(2015/3/12発売)
5 編集後記
発問することにより、物語の伝えたいことを深く読み込むことが出来たと思います。アレクサンダとぜんまいねずみの比較を自分自身で考えることを通して、不満はありながらも、それ以上に満たされていることも多いこと、自分らしく生きることの大切さを学んで行けたのではないでしょうか。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 河村寛希)
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