わにのおじいさんのたからもの1(シリウス)

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目次

1 はじめに

こちらの記事は、静岡県で30年間以上続く教員サークル、シリウスのホームページに掲載されている教育実践法の一つをご紹介しています。
http://homepage1.nifty.com/moritake/

2 実践内容

「わにのおじいさんのたからもの」という物語教材の学習に入りました。 ここ十数年、教科書に掲載されている読みごたえのあるお話です。漢字の読み、ノートに表紙のページなどを作ってから、第一次感想を取りました。また、クイズ大会、体育館での物語の場づくり、国語辞典での意味調べなど、多様な活動から物語の世界を子どもたちが学べる工夫をしました。子どもたちは、物語に出会ってどんなことを感じたのでしょうか。

2.クイズ大会をしました

「わにのおじいさんのたからもの」の本文に文番号をふり、授業の準備ができました。今度は各個人が自分の読みを深めたり、疑問点などを出すために問題づくりをおこないました。

「わにのおじいさんのたからもの」を読んで、問題とその答えをつくりましょう。本の中に答えが見つかるような問題がいいですね。 (※青色=教師の発問/以下同様)
問題には「○も」答えには「○こ」と書いて、見やすくなるようなノートづくりをしました。問題ができたところで、机の形をコの字形にしてクイズ大会を行いました。

「わにのおじいさんの宝物のクイズ大会をしましょう」
問題を作った子は、前に出てきて問題を言います。答えがわかったら手をあげ、指してもらったら答えを言います。問題はわかりやすいものが多いので「はい、はい、はーい、」と教室はもう興奮状態でした。
 
Q.わには相当歳をとっている、若い、どっち?
A.相当歳をとっている
Q.わにのおじいさんは何歳か
A.130歳
Q.わにのおじいさんの宝物はどこにあるか
A.×のところ。 ・残念。いわばでした
Q.おにの子が旅をしているときいい天気でしたか
A.いい天気だった
Q.カラスはどのように泣いていましたか
A.寒そうに泣いていた
Q.おにの子は何に出会いましたか
A.わにのおじいさん
Q.わにはづくりと動きましたか、動きませんか。
A.ピクリとも動きません
Q.おにの子は何の子ですか
A.おにの子
Q.おにの子はやっとどこまで行きましたか
A.地図の×の場所
Q.誰がおじいさんにはっぱをかけましたか
A.おにの子
Q.おにの子が岩場に行ったとき、目を丸くした、丸くしない。
A.目を丸くした
Q.おにの子は帽子を何回とったか
A.一回取った
Q.夕焼けを見ておにの子はどう思ったか
A.ここは世界でいちばん美しい夕焼けが見られる場所だ
 
このようにたくさんの問題が出されました。その中で、一つすぐには答えが出ないものがありました。
わにのおじいさんの宝物は何でしょう。
この答えに対してすぐに夕焼けという答えが出されました。しかし数名の子から「えーっ」という声が聞かれました。「わからないよう」という返事。このように、答えがすぐにわからないもの、迷うものがみんなで話し合って解決していく問題となります

3.おじいさんは疑っているか

物語の文章を検討していく授業を始めました。国語では「この文にこう書いてあるから○○だと思う」というように、文を読み取る力を育てたいと考えています。このようなスタイルで学習するのは、2年生になってからは初めてなので、まずは肩慣らしでこんな問題を出しました。

わにのおじいさんは、いくつ夢を見ましたか? 
9つ

何文かを尋ねると、すぐにこんな返事が返ってきました。
20文”夢を九つも見たんだから”

わにのおじいさんは、どうして長い旅をしているのですか 
追いかけられているから
宝物を取ろうとする人がいる

また何文かを尋ねると
24文”わしを殺してわしののたからものをとろうとするやつがいるのでね”

わにのおじいさんは、おにの子のことを疑っていますか、疑っていませんか
それほど難しい問いではなかったので全員が < 疑っていない >と考えました。
何文からそう考えたのか、証拠になる文を探しました

 < 疑っていない > 27人

  • おにの子にちゃんと宝物あげたから
  • 30文”きみにわしのたからものをあげよう”と書いてあるから。疑っていたら宝物のありかを教えない
  • 29文”やがてそのしわくちゃの顔でにこっとわらった”から
  • 18文”きみかい、こんなにはっぱをかけてくれたのは”と書いてあるから疑っていないと思う。
  • 17文”ああ、いい気持ちだ”とあるから。
  • 18文”はっぱをかけてくれたから、ありがとうという気持ちだった
  • 29文”にこっとわらいました”とあるから疑っていない。

このように、わにのおじいさんはおにの子を < 疑っていない > ことを確認しました。
次に文のどこをどう読んだらいいかを検討することにしました

28文”きみはたからものというものを知らないのかい?”でいちばん強く読む言葉はどの言葉ですか。証拠になる文を、28文の近くからさがしてみましょう。
<きみは> <たからもの> <というものを> <知らないのかい> 
の四つに分けて考えました。最初の予想では、<きみは> 0人  <たからもの>19人 <というものを>0人  <知らないのかい>8人 でした。話し合いをしてみると

< 宝物>  19人

  • 24文に”わしをころして、わしのたからものをとろうとするやつがいるのでね”と言っている
  • 30文で”わしのたからものをあげよう”と言っているから
  • ”たからもの”と何回も書いてある
  • 27文で”だからものにはとんとえんがないのです”とある。

< 知らないのかい > 8人

  • 28文で”すっとんきょう”と書いてある。すっとんきょうは「知らないの」で感じだから
  • 28文で”すっとんきょうな声”とあって、あぁびっくりした、という感じだから。
  • 25文に”たからものというものがどんなものなのだか知りません”とあって、言葉を知らないから。

< たからもの >派は ”たからもの”という言葉の回数をあげ、< 知らないのかい >派は ”すっとんきょう”という言葉に着目しました。

そこで”すっとんきょう”という言葉の意味がわかりますか。どんなときに使いますか
言葉の意味がわかってくると次々とおもしろい話がでてきて大笑い。

  • いないと思って玄関の人をかけたら、ころりんした。
  • お兄ちゃんがお寺のところに隠れて言って、出てこようとしたら、私がわっと脅かしたとき
  • お化けがでてきて、ひぇーって感じ
  • えー!知らないのー?って感じ
  • 約束を破って、遊ばなかったのに、あとで道で会ったとき

 
この気持ち良くわかります。どれもすとんきょうな声が出そうなものがあります。
”すとんきょう”がにあうのは、<宝物ですか><知らないのかい>ですか
「そうか、わかった。宝物だ」数人がいたら、どどどーっと意見変更者が続出しました。最後まで < 知らないのかい > は、たった二人になってしまいました。

「では正解を言います。すっとんきょうが驚く声が似合うのは、どちらが似合うか。先生が言ってみるので聞いていてください」
実際に声に出してみると、< 知らないのかい > の方がよく似合っていました。
「正解は < 知らないのかい >です」というと、最後まで考えを変えなかったN君が思わずガッツポーズをしました。

3 プロフィール

静岡県教育サークル シリウス
1984年創立。
「理論より実践を語る」「子どもの事実で語る」「小さな事実から大きな結論を導かない」これがサークルの主な柱です。
最近では、技術だけではない理論の大切さも感じています。それは「子どもをよくみる」という誰もがしている当たり前のことでした。思想、信条関係なし。「子どもにとってより価値ある教師になりたい」という願いだけを共有しています。

4 書籍のご紹介

「教室掲示 レイアウトアイデア事典」(明治図書2014/2/21発売)

「学級&授業ゲームアイデア事典」(2014/7/25発売)

「係活動システム&アイデア事典」(2015/2/27発売)

「学級開きルール&アイデア事典」(2015/3/12発売)

5 編集後記

物語に興味を持ってもらうために、子どもたちの好きなクイズ形式を導入にしたことにより、すんなりと物語の世界に入っていけたのではないでしょうか。さらに理解を深めるために、「どうしてそう思うのか」ということを文章の中から読み取って答えてもらうことで、読解力も自然と身につくような構成になっているように思いました。

(編集・文責:EDUPEDIA編集部 河村寛希)

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