1 はじめに
こちらの記事は、静岡県で30年間以上続く教員サークル、シリウスのホームページに掲載されている教育実践法の一つをご紹介しています。
http://homepage1.nifty.com/moritake/
2 実践内容
音読や劇化を通して、作品の内容をつかむとともに、まきちゃんに対するぼくの気持ちを考えます。
1.たけしはお手紙になりたかったか
2年生の4月の教材であるうしろのまきちゃん。本読みにようやく慣れたところで、初めての話し合いの授業をおこないました。
問題文をノートに試写させたあと、考えやすいように答えは二者択一としました。自分の考えがどちらであるか立場をはっきりさせてから話し合いを始めました。
たけしは、まきちゃんのお手紙になりたかったでしょうか(※青色=教師の発問/以下同様)
< なりたくない > 7人
- ”どうしてあんなこといっちゃったんだろう”って言っている。心がいやになったからなりたくないと思う。
- ”気がすすまない”とあるから。たけしは話せないから。
- まきちゃんとたけしは一度も話したことがないから。
- はずかしいから。
- ”くるしくなった”とあるから、なりたくなかった。
< なりたかった > 20人
- 恥ずかしいけれどがんばったから
- 友達だから。
- まきちゃんに言うと、気持ちがいいから。
- ”まきちゃんの手紙になるよ”と言ったから。
- まきちゃんのことを心配しているから。
- まきちゃんがかわいそうだから。
- 家が近いから
- まきちゃんが嬉しそうだから。
- 同じ組だから。
このように両方の意見が出されました。自分の意見を一度言ってしまうと満足してボーッとしてしまうので、
もう意見はないですか。意見がなければ < なりたい > チームの負けになりますが、それでいいですか、降参しますか?
「もう降参しますか?」などと挑発されると、黙っていられません。「違う!」という声があちこちから起こりました。そこでもう一度発表をすることになりました。
< なりたくない > がやや増えたものの < なりたかった > の方が優勢です。まだ文章を根拠にした話し合いは難しそうなので、次の問題に進みました。
まきちゃんが元気になったことは、ぼくにとって嬉しいことでしょうか?
文章を見ていくと、いくつかヒントになる文があります。
- 見ないけど せなかが ほっかり あったかい
- まきちゃんは つぎの日も 学校を休んだ。ぼくのせなか かぜみたいに すうすうする。
- みんなの前で まきちゃんの 返事をいった。でも ほんとうは とっても うれしかった。
- でも、手紙でなくなったぼくは、やっぱり まきちゃんと話ができない。
子どもたちは < 嬉しかった > と考えた子が圧倒的に多かったです。
< 嬉しかった >
- たけしはまきちゃんの友達だから
- ”うれしそうに”と書いてある。
- ありがとうって言われたから
- まきちゃんがわらったから
- これから一緒に遊んだりできるから
- まきちゃんが来てくれたから
- まきちゃんがちゃんと返事を言ったから
- みんなが心配してくれたから
< 嬉しくなかった >
- たけしは、またまきちゃんと話ができなくなったから。
最後に出された意見「まきちゃんとまた話ができなくなってしまうから」は、よく読んでいると感心しました。まきちゃんが治ったので、たけしはまたまきちゃんと話をすることができなくなったのです。
まきちゃんが風邪をひいている間なら話ができるのに、風邪が治ると話ができない。こんなジレンマを考えさせたかったのですが、少し難しかったようです。
2.まきちゃんとたけしは何回あったのか
うしろのまきちゃんは、主人公たけしの語りで進行する物語です。内容はまきちゃんのことが気になってしかたがないというたけしの切ない気持ちが、順序よく描かれています。またたけしとまきちゃんの関係は、結局あまり進展しないままで終わります。
この物語の中で、たけし(ぼく)は、まきちゃんを何回見ていますか。
この質問をしたとき <1回 > と考える子が圧倒的に多かったです。 < 2回 >という子は2人。 < 3回以上 > は0人でした。
そこでもう一度よく文を読んでみましょうと指示を出すと意見が出ますが、やはり<1回>だと考える子がほとんどです。
< 1回 > 多数
- ”ぼくを見るとわらった”
- ”「まきちゃんまだねつは下がり…」”
そこで、次のように尋ねてみました。
発問2 ”ぼくを見るとわらった”と”「まきちゃん、まだねつは下がり…」”の文は違うときでしょうか? それとも同じときでしょうか?
< 同じとき >
- まきちゃんがぼくを見てわらってから、ぼく(たけし)は、話したから同じとき
まきちゃんとたけしがあった1つの場面が分かりました。まだないでしょうか?
発問3 もうこれでたけし(ぼく)とまきちゃんがあったのは終わりですか?もしまだあるようでしたら、先生のところにそっと言いに来て下さいね。ヒントは前の方ですよ。
- ”まきちゃんのリボンがゆれた”ところ
ヒントを教えると、半分くらいの子が見つけることができたのですが、こんな反論が出ました。
- (リボンをゆれたのを見たんだから)たけしはまきちゃんを本当に見たかどうかわからない。
そこでこの場面で、たけしはまきちゃんを見ているかどうか考えました。
発問4 ”まきちゃんのリボンがゆれた”とき、たけしはまきちゃんを見ているでしょうか?
< 見ている >
- たけしはまきちゃんを見たからリボンがゆれたのがわかる。
- たけしはまきちゃんの顔を見ている。
- どんな子かな?って見ている。
- まきちゃんを見ているから、リボンがわかる。
たけしがまきちゃんを見たことを、2年生の言葉で説明することができました。実際にたけしとまきちゃんが向かい合わせになったとき、リボンだけ見ることができるか劇をしてみました。
劇をしてみると、まきちゃんのリボンを見るためにはどうしてもまきちゃんと顔を合わせなくてはならないことがわかりました。
次にたけしの気持ちを考てみました。
発問5 たけしはまきちゃんのことを心配しているでしょうか?たけしがしているのがわかるところを本から捜しましょう。
<心配している> 28人
- ”どうしたのかな。まきちゃんのねつひどいのかな”とまきちゃんのことを心配している。
- 手紙になってって先生に言われて”うん”と言ったから。
- まきちゃんのことが心配だったから、サッカーもしなかったと思う。心配じゃなかったら、サッカーをしていると思う。
- ”おやつもいらないのかな”とあって心配しているのが分かる。
- まきちゃんのことが心配だから、うちをのぞいた
3 プロフィール
静岡県教育サークル シリウス
1984年創立。
「理論より実践を語る」「子どもの事実で語る」「小さな事実から大きな結論を導かない」これがサークルの主な柱です。
最近では、技術だけではない理論の大切さも感じています。それは「子どもをよくみる」という誰もがしている当たり前のことでした。思想、信条関係なし。「子どもにとってより価値ある教師になりたい」という願いだけを共有しています。
4 書籍のご紹介
「教室掲示 レイアウトアイデア事典」(明治図書2014/2/21発売)
「学級&授業ゲームアイデア事典」(2014/7/25発売)
「係活動システム&アイデア事典」(2015/2/27発売)
「学級開きルール&アイデア事典」(2015/3/12発売)
5 編集後記
たけしの隠された気持ちを、文章中のたけしの言動から想像力を働かせて考え、話し合いを行っています。また、話し合いの後には班ごとに実際に劇を行って体験することで、言動の裏にある気持ちを実感できたのではないでしょうか。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 河村寛希)
コメント