「わらぐつの中の神様」国語・物語文~疑問・関心から広げる読書活動~

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目次

1 はじめに

教材文「わらぐつの中の神様」を読んで生まれた疑問や関心から課題を設定し、他の本を読んだり調べたりする学習展開を考えました。
小説・説明文・雑誌・漫画などいろいろな書物に触れ、読書経験を広げられたらと思います。

2 展開例

展開1
「物語の構成」「人物のお互いの思い」の観点で他の作品と読み,まとめる。

展開2
自分のお気に入りにものに込められた「思い」を知り、ものづくりや働くことについて考える。

展開3
「人を好きになる気持ち」について調べ、人の外面・内面や心の動きについて考える。

展開1

「物語の構成」「人物のお互いの思い」の観点で他の作品と読み,まとめる。

本教材では、おみつさんと大工さんの仕事への思いを中心に物語が成り立っている。
授業では、その思いについて人物の言動に注目して読みとり、考えを交流していく。
今回はお互いの思いが通じ合う物語だが、お互いの思いがすれ違う物語もある。
いろいろな物語を読み比べ、作品に込められた人間関係の美しさや矛盾などについて考えるきっかけとしたい。
また、物語の構成は大きく「発端→回想→結び」となっている。これから長文の物語を読むにあたり、人物関係や物語の展開を意識して読み進めることが求められる。物語の構成に注目しながら他の作品を読むことで、そのような力を身につけられるようにしたい。
初めは新しく作品を探すのではなく、これまでに学習した物語や読んだ本を取り上げることで、読むことが苦手な児童も安心して学習に取り組める。
*他学年から教科書を借りてくる。

スーホの白い馬

「人物のお互いの思い」
◯スーホ→白馬
:さみしい生活だったけど白馬がきてくれて嬉しい。羊を命がけで守ってくれた。これからずっと一緒だよ。死んでほしくない、、、馬頭琴になってくれてありがとう。
◯白馬→スーホ
:スーホが助けてくれた。ありがとう。殿様から逃げた時は死にそうだったけど、どうしてもスーホに会いたかったんだ。ずっと一緒だって約束してくれたから。

「物語の構成」
発端:前書き(馬頭琴の出来た由来を紹介します)
はじめ:スーホと白馬の出会い
中:スーホと白馬の交流、殿様による別れ
おわり:スーホと白馬の心の結びつきが馬頭琴の音色を美しくする

ごんぎつね

「人物のお互いの思い」(最後に分かり合うパターン…お手紙、)
◯ごん→兵十
:うなぎをとってごめんなさい。本当は仲良くしたいんだけど…。つぐないに食べ物を届けて喜んでもらおう。
◯兵十→ごん
:いつもいたずらばかりして、今回は絶対に許せない。ごん、おまいだったのか…。

「物語の構成」
発端:ごんがうなぎを盗む。兵十の母が死に、ごんが後悔、反省する。
中:ごんは自分の罪をつぐなおうとするが、兵十には伝わらない。
結論:兵十はごんを撃ち、その時はじめてごんの行動の意味を知る。

*慣れてきたら自分の好きな本についてまとめてみる。
まとめていると、別の観点が出てくるかもしれない。

展開2

自分のお気に入りにものに込められた「思い」を知り、ものづくりや働くことについて考える。

おみつさんがわらぐつに込めた思いに惹かれた大工さんは、わらぐつを仲間のために買ってあげるだけでなく、おみつさんにプロポーズする。職人にとって、ものに込める思い・真心というのは、そこまで心を動かす重要なものなのだろう。
授業では「自分が物を買う時にどんな基準で選んでいるか」「自分が何かを作る時に、どんな思いを込めているか」「働いている人が仕事で大切にしていることは何か」などの考えを交流していく。
そして、「自分の周りのものには、どんな思いが込められているんだろう」という疑問・関心から課題を設定する。
大量生産・消費と言われる中、児童がものづくりに込められた思いを想像する機会は少ないだろう。
今回の学習を通して、仕事に対する姿勢や物を使う態度について考えを深めるきっかけとしたい。
*伝統工芸、米作り、工業生産、道徳(働くこと)などの学習を想起

調べる物の例
学校…ランドセル、鉛筆、給食、
自分のお気に入り…ゲーム、漫画、服、スポーツ用具、

調べる項目例
・どんな思い・願いを込めているの?
・工夫していることは?
・働いている人は、なぜその仕事を選んだのか?

展開3

「人を好きになる気持ち」について調べ、人の外面・内面や心の動きについて考える。

おみつさんがわらぐつに込めた思いに惹かれた大工さんは、おみつさんにプロポーズする。大工さんはおみつさんの内面(仕事観、相手を思いやる心遣い)に惹かれる。
授業では、大工さんのプロポーズの言葉を考えることを通して、おみつさんへの思いを想像する学習を取り入れる。
そこで、「わらぐつを買っただけなのに、結婚するのは考えられない」「わらぐつを作ってもらうために結婚したのではないか」「二人とも、自分と同じ考えの人がいて、とても嬉しかったと思う」など考えを交流する。
そして、「人を好きになるのって、どんな時だろう?」という関心から課題を設定する。
高学年になり、自分の外見や恋に対して関心を持ち始める児童もいるだろう。教科書教材の中に恋愛に触れているものは多くない(家族愛はある)ため、今回の学習はそのような方向への関心につながりうる数少ない教材だと言える。分析作品として「源氏物語」を紹介することで、古典に触れるきっかけにもなる。

学習方法

①小説や漫画、映像から登場人物の経験する恋について分析する
(例)
・おみつさんの恋
おみつさんは、ある日見かけた雪げたが欲しくてたまらなくなる。両親にも買ってもらうことができないため、自分でわらぐつを作って、それを売りお金を貯めようと考える。
使う人のためを思って一生懸命作ったわらぐつだが、見た目が不格好なためなかなか売れず、悪く言う人もいる。自分に自信をなくすおみつさん。(やっぱり見た目が大事なんだろうか…。)
そんな中、ある大工さんがおみつさんのわらぐつを買ってくれる。おみつさんにとって、自分の作ったわらぐつを買ってもらえることは、大工さんをおがみたいくらい嬉しい出来事だった。
それから何度か大工さんはわらぐつを買ってくれた。「自分の作ったものが、すぐに傷むから何度も買ってくれるのではないか」と心配になったおみつさんに対して、大工さんは真面目な顔で次のように言う。

「いい仕事ってのは、見かけで決まるもんじゃない。使う人の身になって、使いやすく、じょうぶで長持ちするように作るのが、ほんとのいい仕事ってもんだ」

大工さんに尊敬の念を抱き始めたおみつさんに、大工さんが思いを伝える。

「なあ、おれのうちに来てくんないか。そして、いつまでもうちにいて、おれにわらぐつを作ってくんないかな。」

「使う人の身になって、心を込めて作ったものには、神様が入ってるのと同じこんだ。それを作った人も、神様とおんなじだ。おまんが来てくれたら、神様みたいに大事にするつもりだよ」

こうして二人は結ばれる。

(分析)

◯おみつさん
・自分が大事にしていることを認めてもらえると嬉しい。
・自信をなくしている時に励ましてもらえると嬉しい。

◯大工さん
・仕事熱心な人は、自分の仕事観に共感してもらえる人と一緒にいたいと思う。
・思いを行動で示す(何度もおみつさんのわらぐつを買いに来る)
・決め台詞「神様みたいに大事にするつもりだよ」

◯きっかけ
・おみつさんが、手作りのわらぐつを売ること
(題名にもつながっている)

②心理学や社会学などの本で人を好きになる気持ちや、外見の与える影響について調べる
項目例
・なぜ自分と似ている人が好きか
・なぜ自分と違う面がある人に魅力を感じるのか
・結婚するのは、自分と似ている人?違う人?
・人は相手のどこに魅力を感じるのか
・なぜ外見を気にするのか(文化差はあるのか、見た目の与える影響など)
・見た目をテーマにした作品(「鼻」芥川龍之介、映画も多い)

3 おわりに

3つの展開例がありますが、全員が同じ課題に取り組むのではなく、個人で選んでも良いでしょう。
また学年で課題別にグループを組んで学習する形態をとると、普段は授業ではあまり関われない友だちと一緒に勉強できて楽しいかもしれません。(時間割を合わせなくてはなりませんが)
ただ課題に取り組んで終わるのではなく、考えたことを踏まえて教材文を再読することで読みを広げることにつながると良いと思います。

教材授業案

「わらぐつの中の神様」~神様に結ばれた二人~
https://edupedia.jp/article/56b1e95d5aed04c4ed56a647

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