1 はじめに
こちらの記事は、静岡県で30年間以上続く教員サークル、シリウスのホームページに掲載されている教育実践法の一つをご紹介しています。
http://homepage1.nifty.com/moritake/
2 実践内容
天気の変化をグラフにしよう
天気の変化について学習しています。天気は日々の生活に関係しているので、なじみ深いものです。気にしていないことについては、よく分からないことが多いです。1日の気温の変化について調べました。
晴れ・曇・雨の日について、時間ごとに温度を計ってみよう(※青色=教師の発問/以下同様)
グラフにしてみると晴れた日は、温度変化が大きく、曇り・雨の日は、それほど変化のないことが分かりました
知っているようで、知らないのが雲の動きです。以前、屋上で雲の動く様子を観察しました。すると風は東の方から来るのに、雲は西の方から来ていました。
本当は雲がどちらから、どちらに動くだろう。
今度は教室から雲を眺めていると、西から東へ動く雲が多いものの、東→西に動く雲もあったりします。〈西→東〉〈東→西〉と考えが分かれてしまったので、天気が大きく変わる日を選んで、教室の窓から東西南北の方向の写真を数時間おきに撮影しました。この日は明け方まで雨が降っていたのですが、昼にはよく晴れました。学校周辺の写真を見ても、雲が西から東へ動いていく様子が分かりました。
次にインターネットを使って、気象衛星で雲の動きを見ました。確かに日本上空では、雲が西から東へ移っていく様子が分かりました。
雲の動きをはっきりさせるために、教室の窓から、雲の写真を撮影しました。雲の写真を撮影することで、西→東のように動いていることが分かりました。
ミニ気象予報士になろう
雲は西から東へ動いていくことが、分かってきました。では天気はどのように移り変わっていくのでしょう。天気の移り変わりについて、子どもたちは曖昧です。
天気は、どちらの方角からどちらの方角へ変わっていくのだろう。
〈西から東へ〉18人
〈東から西へ〉2人
雲や太陽の動きをもとにして考えている子が多かったです。
〈東から西へ〉2人
- 西の空に夕方、夕焼けが出ると言うから。
- パソコンで見ると日本の辺りにあった雲が、ロシアの方に行ったから。
〈西から東へ〉18人
- 雲も西から東だったら、天気もつられて西から東にと思う。
- 雲が、天気と同じだと思ったから。
- 天気予報を見ていると、沖縄が雨の時、北海道は晴れで、北海道が雨の時、沖縄は晴れていて、毎日天気図を見ていると、沖縄から雨が来ている。
子どもたちはこのように、2種類の仮説を立てました。では実際の天気では、どのように天気が変わっていくかを検証しました。
9月22日の朝、教室から見上げる空には、雲がどんよりかかっています。インターネットで気象衛星の画像を見ると、静岡にはうっすら雲がかかっています。
この後、学校周辺の天気はどのようになるだろうか?
〈晴れ〉15人〈曇り〉4人〈雨〉5人という予想でした。理由を尋ねてみると、
〈雨や曇りになる〉9人
- 向こうの方(A)にいっぱい雲があるから、
- 雲はすぐに、どこかに行ってしまうわけではないし。日本の周りにあるから。
- 雲がどう動いても周りにあって、Aのように来てしまうから
海上にある雲がAのように動いて、天気が悪くなるのではないかと予想した子たちがいました。
〈晴れる〉15人
- 雲が東に動くから、雲が静岡に当たらないから晴れる。
- 雲は、西から東へ動いていく。
このように〈晴れる〉と考えた子たちは、雲はBの方向に動くのではないかと考えました。そこで、過去の天気(写真)と、気象衛星の雲画像のあるサイト見て予測を立ててみました。そのうちに雨がポツポツと…
- 雲が動くと天気も変わる。これどこでも同じだから、曇り→曇りか雨になる。
- 今は雨が降っているけれど、それが今雲が、静岡の上を通っているだけだと思うから、〈曇り→晴れ〉
- 雲が西から東へ動いていた。だから曇りから晴れになる。
- 雲の動きが、西→東で、もう一つの雲の隙間に来たときに晴れになると思う。今日パソコンで調べたときも、何か雲が動くと天気が変わっていた。だから、曇り→晴れ
授業中に雨が降ってきたことで、〈雨〉19人 〈曇り〉4人 〈晴れ〉7人と大きく〈雨〉の予想が増えました。しかし午後3時になってみると、運動場に日が差し、やはり天気も西から東へ移ることが分かりました。
理科「ミニ気象予報士になろう(雲の動きと天気の変化)」
- 1校時に教室から空を見る。※天気が、曇→晴 晴→曇のように、変化して行く日が良い。
- パソコンで、気象衛星の雲画像(赤外線)を見る。【気象庁→気象衛星(http://www.jma.go.jp/jp/gms/)】
- 雲は西から東に動きました。では天気は、どのように変わって行くのでしょう? 今後の天気はどうなるか予想しよう。
- 【マルチビュー天気教材】で過去の雲の動きと天気を見て、予想が正しいか調べてみよう。http://rikanet2.jst.go.jp/contents/cp0130b/topfl.html
- 教室から時々空を見上げる。予想は当たっているかな?
- 5校時終了後、気象衛星の雲画像で雲の様子を確認する。
台風モデルを作ろう
雨や台風を実際に実験するというのは、スケールが大きすぎてできません。そこでモデルを使ってイメージをつかむ実験をしました。
台風=塊となって回転すると捉え、この塊を雲や牛乳で作ってみました。
実験1.煙の塊が回転する
紙で蓋をした水槽の中に、蚊取り線香の煙を入れて充満させます。隙間からストローを差しこんでゆっくり吹き込むと煙の回転する様子を観察することができました。
実験2.牛乳の塊が回転する。
水をいっぱいに張ったビーカーの中に、スポイトに入れた牛乳を「ブシューッ」と落とします。牛乳が水中で広がって、まるで入道雲がわき上がるようです。
割り箸でビーカーの中をかき混ぜておいて、そこに牛乳を「ブシューッ」と落とすと、見事に白い塊の渦が起こり「うわーっ」という歓声が起きました。横から見ているとまるで台風のようでした。
実験をしてわかったこと、思ったこと
- ・台風を作って思ったより台風が上に回っていたのでよかったです。台風を作ってワクワクしてストローで息を吹き込んでやったら右に回った。それでどんどん曇ってきてワクワク感があった。雲ってすごいなと思いました。
- 水をかき回した後、牛乳を入れたら竜巻ができた。線香の煙を貯めて雲を作ったら、だんだん黒くなって雨雲になって、ただの線香の煙なのに何でこんなに黒くなるのかなと思いました。
- 水が回っていれば、牛乳(雲)もいっしょに回る。それで雲が回って台風ができる。空気を入れて回すことができるのには驚いた。なぜ充満する煙は下に行かずに上に行くのだろう。
- 台風は回転してできる。竜巻も回転してできる。
3 プロフィール
静岡県教育サークル シリウス
1984年創立。
「理論より実践を語る」「子どもの事実で語る」「小さな事実から大きな結論を導かない」これがサークルの主な柱です。
最近では、技術だけではない理論の大切さも感じています。それは「子どもをよくみる」という誰もがしている当たり前のことでした。思想、信条関係なし。「子どもにとってより価値ある教師になりたい」という願いだけを共有しています。
4 書籍のご紹介
「教室掲示 レイアウトアイデア事典」(明治図書2014/2/21発売)
「学級&授業ゲームアイデア事典」(2014/7/25発売)
「係活動システム&アイデア事典」(2015/2/27発売)
「学級開きルール&アイデア事典」(2015/3/12発売)
5 編集後記
台風の実験から、大掛かりではないものの、今まで学んだ知識を確認するとともに新しい発見もあり、子どもたちが楽しんで学習している様子が伝わってきました。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 河村寛希)
コメント