分数のかけ算、わり算2(シリウス)

27
目次

1 はじめに

こちらの記事は、静岡県で30年間以上続く教員サークル、シリウスのホームページに掲載されている教育実践法の一つをご紹介しています。
http://homepage1.nifty.com/moritake/

2 実践内容

分数のかけ算、わり算の文章題

分数のかけ算、わり算の文章題は「もしも式」で 

分数のかけ算、わり算の文章題をやっています。とても難しく立式ができません。そこで「もしも」で考えさせました。

  1. 問題を読みます
  2. 問題文の分数を簡単な数に置き換えます
  3. 簡単な数で立式を導きます
  4. 式に分数を当てはめ計算します

「もしも」と仮定し、分数を簡単な整数に置き換えることで立式を導くことができました。(それでも難しく立式できない子もいます)
分数の文章題は「もしも」で仮定すると解きやすそうです。そのあと「計算お店やさん」をしました。

  1. 文章問題を作ります
  2. クラスの中を半分に分けて、一方が計算のお店やさん、もう一方がお客さんとなって問題を解きます
  3. 問題が解けて○をもらったら、他のお店に行きます

6年生でも嬉々として取り組みました。今回の工夫として、

  • 一軒のお店に一人しか入れないこと(ぼーっと待つ子を出さないように)
  • お店やさんはお客にヒントを与えてもよい(教え合い活動)
  • お店やさんが暇なときに問題を作ってよい(問題作り)

これもどの学年でも使えるパターンだと思いました。

分数のわり算

ひっくり返してかけるわけ

分数÷分数の学習をしました。
この計算のとき、どうして除数をひっくり返してかけるのかを考えました。
この説明はとても難しいので、先にゴール(式と答え)を見せ見通しを持たせておいて、図と結びつけながら考えさせました。
問題は次のものです。

2/5㎡の塀を塗るのに、青いペンキ3/4dl使います。このペンキは1dlあたり何㎡塗れるでしょうか。(※青色=教師の発問/以下同様) 

まずは簡単な数字を使って立式しました。
1. 4㎡で2dlのペンキのとき 1dlあたり塗れる量は
   式 4÷2
2. 4/2㎡で2dlのペンキのとき 1dlあたり塗れる量は
   式 4/2÷2
3. 2/5㎡で3dlのペンキのとき 1dlあたり塗れる量は
   式 2/5÷3
4. 2/5㎡で3/4dlのペンキのとき 1dlあたり塗れる量は
   式 2/5÷3/4

このように、順番に進めていくと、式は 2/5÷3/4 であると素直に考えることができました。

次に、図を使って答えの見当を出しました。

図を使って色を塗りながら考えてみよう。 

2/5㎡の壁を塗るには、3/4dlのペンキで済みます。
あと1/4dl分だけ塗れるので、はみ出して塗りました。(A図)
しかし、ここには壁がないので、はみ出して塗った分を壁のあるところに移動しました。(B図)

ここで色のついたマスを数えると、15マス中8マスとなっています。
つまり色が塗れる壁は、8/15というわけです。
答えは8/15らしいという見当をつけました。

さていよいよ、ひっくり返してかける意味についてです。
子どもたちがわからないのはこの部分です。

式を分けて考えてみよう。2/5÷3は図で考えると、どういうことだろう。割ったのに数が増えるのはどうしてか?

式と図を関連づけて考えさせました。
子どもたちは「うんうん」うなって考えました。
割っているのにかけているのがわからないのです。

  • かけるというのは小さくすることで、分数だと分母が大きくなることだからかけています。
  • 2/5の5は、五等分の5のこと。それをまた図のように三等分し、3をかけると15になります。
  • マスの数が三等分すると15になります。三等分すると分母の数が増えます。

このような説明で、何とか分母の5×3が説明できました。次に

分子の2×4は何が2で何が4なのですか。 

  • 図で小さな四角(2/15)が4つあるから。2×4の式になると思う。

(ここに図が入る)
 図を見ながらの説明には納得できる子が多かったです。
正確には1/15が2×4個分あることになります。

二つの式を合わせて考えてみよう。

分数のわり算2

分母どうし分子どうし割ってはいけないか

分数のわり算は「わる数をひっくり返してかける」と教えます。
では「どうしてか?」と改めて問われると、すぐに答えることはできません。
ひっくり返してかけるわけについて考えました。
まずは、分数のかけ算のおさらいです。
4/5×2/5=8/25のように、分母×分母、分子×分子のように計算することを確かめてから

分数のわり算は、分母どうし分子どうしで割ってはいけないのだろうか。
と投げかけ、かけ算と同じようにわり算で求めてみることにしました。

まず最初に行ったのが、(1) (2) です。これは、
<(1)(2)の場合>
(分子÷分子)/(分母÷分母) のように計算しても、ひっくり返してかけた場合と同じ答えになりました。

〈(3)(4)の場合〉
分母同士、分子同士を割ると、小数/整数 となります。
(3) では 3.5/2 となりました。
これは、ひっくり返してかけた7/4 と同じ答えになるのでしょうか。

3.5/2 と 7/4 は同じ数だといえるだろうか。

ぱっと見た予想では〈同じ〉3人 〈違う〉13人でした。
そこで約分などしてみると、
〈同じ〉

  • 7/4を÷2すると3.5/2になります。
  • 通分すると同じ数でした。

通分してみると、3.5/2 と 7/4も同じ数であることが分かりました。
(4) も同様に、5/6=2.5/3 であることがわかりました。

〈(5)の場合〉
3/10÷2/3=(3÷2)/(10÷3)=1.5/3.33… となります。

9/20と1.5/3.33… は同じ数だろうか

3.33…は、とても中途半端な数です。こんな中途半端な数のときは、どうしたらいいのでしょう。
方法を思いつかなかったようなので、分数を使うといいことを教えました。
    

このように、式を変化させていって、分母同士・分子同士で割っても、最後には「ひっくり返してかける形」になりました。
どちらのやり方でも同じ答えが出てくることは確かめました。

授業の感想を書こう。

  • 最初は、本当に割ってもできるのかなと思いました。でもやってみると大変だけど、ちゃんといつもやっているのと同じ答えになりました。分数はすごいなあと思いました。大変だけど覚えられればいいです。
  • ひっくり返してかけるのは、強引にそのままやると難しく、小学生にはすごく大変になる。結局解くまでが簡単か難しいかで答えは変わらない。
  • わり算はわり算で答えが出るなんて知らなかった。けれど、簡単にわれる問題ならいいけれど、小数点がつくようなものだと難しい。だから、私はひっくり返してやっていきます。
  • 分数の計算は、かけなければいけないと思ってきたけれど、割っても答えがしっかり出るということを知って、少しびっくり。算数ってすごいなあと思いました。

3 プロフィール

静岡県教育サークル シリウス
1984年創立。
「理論より実践を語る」「子どもの事実で語る」「小さな事実から大きな結論を導かない」これがサークルの主な柱です。
最近では、技術だけではない理論の大切さも感じています。それは「子どもをよくみる」という誰もがしている当たり前のことでした。思想、信条関係なし。「子どもにとってより価値ある教師になりたい」という願いだけを共有しています。

4 書籍のご紹介

「教室掲示 レイアウトアイデア事典」(明治図書2014/2/21発売)

「学級&授業ゲームアイデア事典」(2014/7/25発売)

「係活動システム&アイデア事典」(2015/2/27発売)

「学級開きルール&アイデア事典」(2015/3/12発売)

5 編集後記

理解することが難しい分数のひっくり返しの考え方を、例文を使って、分かりやすく説明しています。この考え方が理解できたことで、算数が表せる数の可能性が無限に広がったように感じ、興味を持てた子どももいたようです。分数の考え方を理解できるかどうかで、この後の算数、数学への関心に大きな影響を与える単元なので、今回の工夫はとても参考になったのではないでしょうか。

(編集・文責:EDUPEDIA編集部 河村寛希)

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメント一覧 (1件)

  • もっともっと簡単に説明するをキャッチフレーズに指導研究を進めている、岡山県の某市教育委員会の嘱託職員で、市立小中学校の算数・数学授業の任についている者です。1週間前の14日に所属する学校とは別の小学校5年生の希望者を対象とした、放課後学習をプライベートで、割合・文章題指導を依頼されて、その指導の中で間違って6年生の「分数÷分数の問題を配布」した所、嫌がるどころか教えてほしいとなって、指導を始めました。すると早速当然ながら分数÷分数を分数×分数にして、割る数をなぜ?ひっくり返すのですかと、質問が飛んできたのです。今、読ませていただいている記事と同じようなことです。なぜと言う疑問には、絶対に答えてあげねばなりません。それも理解できないものでは意味がありません。みんなが出来るだけ簡単で分かり易く解ける方法でないと、いけません。答えは最終的に一つですが、その間の指導方法(引き出し)は一つだけではありません。今読ませていただいている指導法もそのうちの一つであると思います。異論は全くありませんが、ただ一つ気になるのが、説明が長文になっているのではないかと思います。もっと簡潔にならないものかと思えてなりません。私も対案は用意していますが、来週木曜日に使用しますので、その後にもう一度使用結果と合わせてコメントしてみようかと思っています。概略を申しておきますと、「1」の意味説明とその活用そして、「繫分数の取り込みとその中のヒントの活用」で、説明文でいえばA4用紙1枚分で完了させる。以上が実践で使用するものです。コメント投稿までしばらくお待ちください。

コメントする

CAPTCHA


目次