食料の生産・輸入についての教材(農林水産省)

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作成者:Jun Mizushima (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

小学校学習指導要領の社会〔第5学年〕にある食料の生産や外国からの輸入について、教材として活用できるイラスト入りパンフレット「ニッポン食べもの力見っけ隊」を農林水産省が平成27年10月に作成しています。この記事では、授業で活用していただけるよう、パンフレ56122ットの内容や農林水産省が作成した「料理自給率計算ソフト」を紹介します。

パンフレット「ニッポン食べもの力見っけ隊」(pdf:7.55MB)
http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/pdf/tabe_all.pdf

なお、学校からの要望に応じ、農林水産省が無償でパンフレットを提供しているので、必要な場合には以下の問い合わせ先までご連絡下さい。また、授業の進め方を考える際に、調べたいデータや確認したい内容などありましたら、気軽に以下の問い合わせ先までご連絡下さい。

【問い合わせ先】
農林水産省大臣官房政策課食料安全保障室
TEL:03-3502-8111(内線3807)

2 食料自給率について考える

(1)食料自給率の種類

私たちが消費している食料のうち、国内生産によってどの程度賄えているかを示すものが食料自給率です。食料自給率には大きく分けて次の3つがあり、単に食料自給率といった場合には、通常、②のカロリーベース総合食料自給率を指します。

①品目別自給率

米、小麦、大豆など、品目別に重さを基準として、次の式により計算されます。計算においては、FAO(国際連合食糧農業機関)から示された考え方に基づき、翌年の生産のための種子や家畜の餌などごくわずかですが食料用途以外のものが含まれていることから、「品目別食料自給率」ではなく「品目別自給率」となります。

品目別自給率=各品目の国内生産量÷各品目の国内消費仕向量×100
※国内消費仕向量は、国内生産量+輸入量−輸出量−在庫の増加量(または+在庫の減少量)によって求められます。

②カロリーベース総合食料自給率

食料全体の自給率を考える場合、米、ほうれん草、牛乳などといった姿や比重の異なる食料について、その重さを基準として合算し計算することは適当ではありません。このため、異なる食料を合算する際の共通のものさしを、食べものに含まれる熱量(カロリー)とし、この考え方の下、次の式により計算したものがカロリーベース総合食料自給率となります。計算に際しては、対象を食料用途に限定し、種子や餌などは除外しています。なお、算式における分子・分母の値を示す際、わかりやすいよう、分子・分母とも、日本の総人口と年間日数で除した値である「1人1日当たり熱量」として表記するのが一般的です。

カロリーベース総合食料自給率=国産熱量(分子)÷総供給熱量(分母)×100
(平成26年度速報値:947kcal/人・日÷2,415kcal/人・日×100=39%)

③生産額ベース総合食料自給率

異なる食料を合算する際の共通のものさしを、食べものの価値(生産額)とし、この考え方の下、次の式により計算したものが生産額ベース総合食料自給率となります。カロリーベースでは、日頃の食べている量の実感から、熱量の少ない野菜が他の食料と比べて過小評価となることから、カロリーベースだけでなく、生産額ベースも併せて食料自給率を見ていくことが大切です。

生産額ベース総合食料自給率=食料の国内生産額(分子)÷食料の国内消費仕向額(分母)×100
(平成26年度速報値:9兆8,341億円÷15兆3,096億円×100=64%)

私たちの日頃の食事をみると、お米を除くほとんどの農林水産物は海外からの輸入に頼っています。

(2)日本が食料を輸入している国

日本は、多くの国々から食料を輸入しています。農産物では、アメリカ、中国、オーストラリアなどから、水産物では、中国、チリ、アメリカなどから、それぞれ輸入が多くなっています。農林水産省が公表している「農林水産物輸出入概況」には、細かな品目ごとに、日本が食料を輸入している国のデータが掲載されているので、参考にしていただけます。
(字が小さいので拡大してご覧ください。)

農林水産省「農林水産物輸出入概況」
http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/kokusai/houkoku_gaikyou.html#r26

(3)低下傾向で推移してきた日本の食料自給率

半世紀前の昭和35年(1960年)には、カロリーベースで79%、生産額ベースで93%あった日本の食料自給率は、年々低下傾向で推移し、現在は、カロリーベースで39%、生産額ベースで64%となっています。

日本の食料自給率がこのように低下してきたのは、日本人の食事が洋風に変化する中で、パンや麺類の原料となる小麦、畜産物の生産に必要な家畜の餌となるトウモロコシ、植物油の原料となる大豆などの作物について十分に生産ができなかったためです。この背景として、農地や農家が減少してきたことや、梅雨や秋雨の時期に必要以上にまとまった雨が降るなど作物の生産に不利な地域があることが挙げられます。

(4)将来における世界の食料需給と世界各国の食料自給率

国連の将来推計によれば2050年の世界人口は95.5億人(2015年の73.3億人の1.3倍)となり、また、世界の国々では経済発展に伴い所得が向上していくと見込まれ、この結果、将来の食料需要量は増加すると考えられています。一方、世界の農地面積を大きく増やしていくことは農業用水や気候などの制約から難しいです。また、農業技術の水準が高まっている中で技術進歩による単位面積当たり収穫量の伸びは徐々に小さくなっています。将来の食料供給量の増加については必ずしも楽観的なものとは限りません。

このように将来における世界の食料需給は厳しくなるという見方がある中で、年々低下傾向で推移してきた日本の食料自給率は、現在、世界の先進国の中でも一番低い水準となっています。

(5)食料自給率の向上に向けて

食料自給率が低いということは、たくさんの食料を海外に依存しているということであり、世界で食料が足りなくなったときに、必要な量の輸入食料を確保できなくなるリスクが高いということです。食料は毎日の生活に欠かせないものですので、必要な量の食料をなるべく確保できるよう、食料自給率を高めることが大切であり、農林水産省では将来の食料自給率の目標を設定(平成37年度:カロリーベース45%、生産額ベース73%)し、国内の農林水産物の生産量が増えるよう応援をしています。

食料自給率の向上に向けて、私たちにもできることがあります。おいしい旬の食べものを食べる、地元で作られた農林水産物を地元で消費する地産地消を実践する、ご飯を中心にしたバランスの良い食事を心がけるなどです。これにより、日頃の食事の中で国産の農林水産物をもっと食べるようにすることで、国内の農林水産物の生産量を増やすことの応援につながります。

また、食料自給率を身近な問題と考える上で、日頃の食事の食料自給率を調べてみることも大切です。農林水産省では、自分の食事について、食材の種類、量、産地を選択することで食料自給率を計算できるパソコン用フリーソフト「クッキング自給率~こくさんと学ぶ料理自給率計算ソフト」を公開しています。例えば、このソフトで計算されたその日の給食メニューの食料自給率を、前日の給食の値や、全国の食料自給率の値(平成26年度:カロリーベース39%、生産額ベース64%)と比べることで、食料自給率について考えることができます。

農林水産省「クッキング自給率~こくさんと学ぶ料理自給率計算ソフト」
http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/keisan_kokusan.html


3 食料の潜在生産能力(食料自給力)について考える

(1)なぜ、食料自給率ではなく食料自給力なのか

世界人口の増加などにより世界の食料需給は厳しくなるという見方がある中で、仮に必要な量の輸入食料を十分確保できなくなるような場合には、国内の農地を最大限使うなどにより、食料を増産することが必要となります。このことを踏まえれば、日頃から、国内農林水産業の有する食料の潜在生産能力(食料自給力)について、その大きさと動向を数値化し、評価・把握しておくことが大切です。

食料自給率は大変わかりやすい指標ですが、一方で、“お花などの非食用作物を生産している農地”や“作物の作付けを休んでいる土地”の有する食料を生産する力が反映できておらず、食料の潜在生産能力を示す指標としては一定の限界があります。このため、農林水産省では、平成27年3月に、食料の潜在生産能力を数値化して示す指標として、初めて「食料自給力指標」を公表しました。

(2)食料自給力指標の考え方

食料自給力指標では、“現在ある農地”と“以前は農地として利用されていたが今は何も作られていない土地”に、米、小麦、いも類などを作付けし、国民1人1日当たりでどれくらいの熱量(カロリー)が得られるかを計算します。この計算においては、得られる熱量がより高いものとなるよう、例えば、樹園地の木を切って果物よりも高い熱量の得られる小麦を作ったり、田んぼで米よりも高い熱量の得られるサツマイモを作ったりという仮定を置くことから、計算結果の熱量は実際に作ることができる熱量ではないことに注意が必要です。食料自給力指標は、食料の潜在生産能力を数値で表した一つの目安と考えましょう。

なお、食料自給力については、内容を容易に理解できるよう、10分程度のアニメ動画「食料自給力ってなあに?」を動画配信サイトYouTubeにて公開しているので参考にしていただけます。

(3)食料自給力指標の見方

食料自給力指標においては、現在の私たちの食生活に近い食事となる米、小麦、大豆を中心に作付けするパターンでは日本人1人(子どもや老人を含む平均的な日本人の姿を想定)が1日に必要とする熱量に届きませんが、熱量の最大値が得られるいも類を中心に作付けするパターンでは1日に必要とする熱量に届くことがわかります。

過去から現在までの推移をみると、耕作放棄によって農地が減ってきていることなどが影響し、各パターンの熱量とも低下傾向となっています。特に、平成9年度以降、食料自給率は横ばいで推移する中で、食料自給力は徐々に低下しています。なお、近年、食料自給率が横ばいで推移しているのは、分子の「食料の国産供給熱量」が農地や農家の減少などの影響で低下している中で、分母の「食料の国内総供給熱量」も高齢化の進行や人口減少の影響によって同様に低下しているためです。

(4)食料自給力の維持向上に向けて

食料自給力指標は一定の大胆な仮定の下で計算を行うものであるため、食料自給率とは異なり、将来の目標を設定していません。ただ、食料自給力の低下を抑え、可能な限りその維持向上を図っていくことは、必要な量の輸入食料が確保できなくなるような万が一の場合に備え、大切なことです。

食料自給力の維持向上に向けては、農家のみなさんに農地をしっかり守ってもらうことが大切ですが、私たちも、日頃の食事の中で国産の農林水産物をもっと食べるようにすることで農家のみなさんを応援できますし、この結果、食料自給力の維持向上にも役立てることができます。

4 編集後記

現在は、給食でも栄養バランスが考えられた美味しい食事をすることができますが、その分食べられなくなった時のことを想像することは難しいです。このまま世界の人口が増え、食料の生産速度が追い付かないと、美味しく栄養のある食事が安心し得られるとは限りません。この先に起こりうる万が一に備えて、日頃から関心を高めておくことが重要です。

このため、私たちの口に入る食事がどこで作られているかまで知っておく必要があります。そのために用いる教材として、パンフレットや計算ソフトは有効だと考えます。計算ソフトでも様々なシミュレーションができるので、児童生徒も多くのパターンを試すと思います。ぜひご活用ください。

(編集・文責:EDUPEDIA編集部 水島淳)

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