何をすれば良いか分からないから「できない子」になってしまうのを防ぐための手立て

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目次

1 はじめに

学校で「これは〇〇さんには難しすぎる」と勘違いをして、適切な指導が困難になるケースは意外と多いものです。
「できる力があるのに…」という教師の考えと児童の能力がマッチできるような指導方法を考えてみました。

2 子どもの実態

当時、担任の教師が悩んでいたことの一つに「体操着に着替えることができるけれど、時間がかかりすぎて間に合わない」というものがありました。それに加えて「着替えをする時に机の上はもちろん、床にも衣類が落ちてしまっていてスペースが足りない」というご相談も受けました。
その時の担任からみれば「年齢相応のことがまだ身に付いていないから仕方ないのかな?」という考え方をせざるを得ない状況だったようです。

3 指導の流れ

1.「時間に間に合う」ことへの価値づけ

キッチンタイマーを活用します。パズルやブロックの組み立てなど、児童が比較的好んでする活動を取り入れます。そして「○秒以内にブロックを5つ積めたら合格」というようにして、間にあったら褒めます。
この指導によってそのお子さんは間に合うことに対する価値を持つことができるようになりました。

2.体操着、あるいは私服に着替える際の行動観察

はじめはアセスメントです。この児童の着替え方をチェックしてみました。Tシャツとズボンのどちらを先に脱ぐのか、上履きは左右のどちらから脱ぐのか、脱いだ服はどうしているのかなどを観察します。
ちなみに、この時に掛った洋服から体操着へ着替えるまでの時間は15分でした。この時は夏だったので薄着のはずですし、さらに小学校では5分間で着替えなくてはならないので相当長い時間着替えに要していたことになります。

行動観察の結果、一人で着替えることはできるものの、例えばTシャツを脱いだ後にどこかへ動いてしまい、また戻ってきてから下着を脱いでまたどこかへ行ってしまう、というように適切な行動の合間に「無駄な行動」が入っていることが分かりました。
また、着替えの順番も安定していないため、上履きを履いたままズボンを脱いでしまったために行動が止まり、苛立ちが募るという好ましくない状況も結果的に生まれてしまう可能性が高いことも分かりました。

3.環境整備と視覚的支援

①環境整備

この児童は自分の座席で着替えるとたくさんの情報を受け取ってしまい集中することが難しいということが考えられました。
そのため、着替えの際には教室の中で人が来ないようなところに座席を動かすようにしました。そしてその場で着替えるよう、左右と後ろを囲いました。

②視覚的支援

行動観察の結果、児童が着替えやすい順に配慮しながら着替えの手順表を作成しました。

洗濯ばさみはチェック機能を持ち合わせています。一つの行動が終わったら右側に移します。そうすることで今まで起こっていた「無駄な」行動を「チェックする」行動に置き換えることで次の行動へスムーズに移ることができるようにしました。

4 子どもの変化

今回、指導したのは主に2点です。まずは時間に間に合うことへの価値づけ、もう一つは着替えの手順です。この2点を教えてから環境整備することで、今まで15分以上かかっていた着替えが3分で終えることができるようになりました。

5 成果と課題

もともとできる能力がある児童への指導で大切なことは行動観察です。
「これはできるのに、これはできない」のであれば「どのようにすればできるのか」を考察してみましょう。能力的にできないのか、それとも今回のケースのように能力があるのにどのようにすれば良いか分からないからできないのか、ということには大きな違いがあります。
一人の目だけでは難しいことはたくさんありますので、他の教師の力を借りるのも良いと思います。
児童一人ひとりがもつ「できること」を活用することで、児童の自己肯定感が高まることは必然でしょう。

6 プロフィール

教師/児童発達支援管理責任者/上級心理カウンセラー 鈴木あづみ

小学校で3年間通常の学級の、10年間特別支援学級の担任を務める。療育を学ぶため退職し、療育機関で約1年間応用行動分析を学ぶ。
その後、自宅で発達に心配のある未就学から小学生までの子どもと家族のための療育の教室を開業。その傍ら、学校の感覚を常に持ち続けたいという思いから葛飾区内で巡回指導員として勤務。

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