こころのありかたで、生徒のやる気と知能が変わる!

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作成者:Kosuke Doi (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

「ぼくはどうしようもない馬鹿だ」、「やってもどうせできない」、「失敗したらもう終わりだ」。このような、諦めがちで、無気力の生徒に、先生の皆さんはどう対応しますか?独自の方法をお持ちの方もいらっしゃるでしょうし、変えることはできないと思う方もいらっしゃるかもしれません。
 しかし、近年この絶望の「こころのあり方」を変え、生徒の知能とやる気を上げる方法が心理学によって発見されました!
 この記事では、それを発見した社会心理学・発達心理学の権威、スタンフォード大学教授のキャロル・ドウェック氏が書かれた本、「マインドセット 「やればできる!」の研究」の内容を教育に絞って紹介します。

2 心の在り方、マインドセットとは?

世の中には様々な心の在り方や信念、つまり、マインドセットが存在する。「人間の能力なんて生まれつきだし、一生変わらない」、「何をやったってどうせ無理」と思う人もいれば、「能力は努力次第でいくらでも伸ばせる」、「どうやったらできるようになるのだろう」と思う人もいる。この思い、心のあり方がマインドセットだ。
 能力は固定的で変えられないと思う人は硬直マインドセットの持ち主だ。一度つまずいたらそれで終わり、努力なんて忌まわしいと思っており、自分の能力を繰り返し証明せずにはいられない。挑戦や学習を避けるあまり、結果的に早い段階で成長が止まってしまう。
 一方、能力は磨けばどれだけでも伸びると思う人はしなやかマインドセットの持ち主である。彼らにとって追求しないことが失敗であり、向上のために努力は必須であることを理解しており、ひたすら学び続ける。壁にぶつかっても諦めることなく、学び続け進んでいく人たちだ。
 もちろん、完璧に2分できるわけではなく、基本的には両者が複雑に入り組んでいる。だが個人差はあるだろう。ここでは便宜上両者をふたつにわけて具体的な話を見ていこう。
マインドセットが重要だということをわかっている方もいれば、マインドセットなんて大したことないと、今ここで思っている方々も大多数いらっしゃるはずだ。
だが、近年研究によってマインドセットがやる気と知能を変えることが証明されているのだ!
この記事では、この本の知見の中から
①教師の褒め方で子供のマインドセットが変わり、子供の知能が変わる
②教師のマインドセットで生徒の成績が変わる
 の2つを紹介しよう

3 マインドセットが知能を変える!

  では、どのように硬直マインドセット、しなやかマインドセットが形成され、どれほどそれが生徒の知能・成績に影響を与えるのだろうか。
 この本の著者の実験では、教師の褒め方によって生徒のマインドセットが変わり、生徒の知能が変わることを証明している!
 この実験では、思春期初期の子供たちを対象に、非言語式知能検査のかなり難しい問題を10題解いてもらった。ほとんどの生徒がまずまずの成績をとり、終わった後で2グループに分けて褒め言葉をかけた。1つ目のグループでは、「こんなに解けるなんて、あなたは頭がいいわね!」などと言って、その子供の能力を褒めた(このグループを能力群と呼ぶ)。2つ目のグループでは、「こんなに解けるなんて、よく頑張ったね」などと言って、その子供の努力を褒めた(このグループを努力群と呼ぶ)。
 この段階では両グループの成績が同じだったが、褒められた直後から差が出始めた!能力群は硬直マインドセットの反応を示し、新しい問題に挑戦するのをやめた。ミスをして自分の能力を疑われたくなかったのである。一方、努力群は、しなやかマインドセットの反応を示し、その9割が新しい問題に挑戦し、学べるチャンスを逃さなかった。
 次に生徒全員になかなか解けない難問を出した。能力群の生徒はちっとも自分は頭が良くないと思うようになった。問題が解けることが、頭の良さの証であれば、解けなければ頭が良くないことになる。実験の始めのうちは問題を解くことを楽しんでいたが、このときは自分の頭の良さが危機にあるのだから問題を解くこともまったく楽しいと思わなくなっていた。一方努力群の生徒は解けないことを失敗とも自分の頭が悪いからだとも考えず、もっと頑張ろうとし、それを楽しんでいた。さらに、彼らは難しい問題の方を面白いと感じたのだ。
その後の両群の出来はますます差がついた。能力群の成績は激減し、能力に自信が持てなくなり、易しい問題が出されても成績は回復しなかった。なんと、スタート時よりも成績が下がってしまったのだ。一方努力群の成績はますますよくなり、難問に挑戦したことでスキルが磨かれ、易しい問題は難なく解けるようになった。
 この調査は知能検査の問題を用いて行っているので、生徒の能力を褒めると知能が下がり、生徒の努力を褒めると知能が上がったことになる。しかも点数を報告する際に能力群は成績を上乗せしたのだ。現実を偽ってまで自分の優秀さを示したいのである。
 この実験から分かるように、普段の生徒への接し方が生徒のマインドセットや知能に大きな影響を与えるかがわかってもらえただろう。別の調査では中学入学時の学生のマインドセットによって2年後の成績が分かれている。「しなやか」な生徒は伸びたが、「硬直」な生徒は落ちたのだ。
 

4 教師のマインドセットが生徒の成績に影響を与える!

さらに教師のマインドセットによって生徒の成績が変化することがファルコ・ラインベルクの調査によってわかっている。「生徒の成績は1年間変わらない」、「生徒の知能がわかれば学校での成績が予測できる」。このような硬直マインドセットの教師の下では、1年を通して成績良好群、成績不振群の生徒の成績は変わらなかった。しかしどんな生徒でも伸ばせると考えていた、しなやかマインドセットの教師の下では、成績良好群、成績不振群の生徒の両方が、学期末には成績良好群にいたのだ!

「しなやか」な教師、レイフ・エスキス

ここでしなやかマインドセットの教師の代表例を一人紹介しよう。レイフ・エスキスという、犯罪の多発するロサンゼルスの貧困地区で小学校教師である。そこの小学校ではアルコール依存などの問題を抱えた家族と暮らしている生徒が大半をしめる。日本でも家族の問題や親の所得など、子供の外部環境が問題となっているが、この小学校の生徒が抱える問題は日本のその問題とは比較にならず、しかも日本とは違い、治安も悪い。日本のどの小学校よりも問題を抱えているといっても過言ではないだろう。
彼は子供たちに、「僕は君たちより勉強してきただけだ」と自分だって初めから問題ができたわけではないと何度も言うことで、練習の価値を伝え、教える内容が難しくなれば始業前、放課後、頻繁に勉強会を開く。彼の教え子の小学6年生は、中学2、3年生でも大半が落ちる代数の最終試験に全員合格したのだ。
 この本では、問題を抱えた子供のために自分で学校を作った教師など、他にも教師がかなり称賛されつつ、紹介されているが、共通することは、生徒を値定めすることなく、一人一人の生徒の成長を促す温かい雰囲気を作る一方で、目標は高く、規律は厳しい。さらにどうすればその目標に到達できるかが徹底されており、生徒には真実を隠すことなく伝える。そして何よりも、自分も生徒とともに学ぶ人間であることをわかっているのだ
 
 

著者の、マインドセットを変えるワークショップ

 ここまで読んで、マインドセットの力を信じてくださった読者もいらっしゃれば、いまだに胡散臭いと思う読者もいらっしゃるだろう。そこで、マインドセットの変化を具体的に示すために、著者の活動を紹介しよう。彼女のワークショップではマインドセットとその活用方法を思春期の子供たちに教える。そこで彼女は、脳は新しいことを学び、使うほど、成長することを教え、赤ちゃんの脳がどんどん成長する様子を示している。ここに参加した、無気力で投げやりなジミーという生徒は涙を浮かべながら、「まだ僕は馬鹿だときまったわけじゃないんだね」と著者に伝えにきた。その後ジミーを含め、,このワークショップに参加した生徒は学期末の数学の点数が飛躍的に向上したのだ。それに対し、学習スキルを教える、別のワークショップを受けた生徒の成績はほとんど上がらなかった。やってもできないと思っていたので、学習スキルを使わなかったのだ。

5 まとめ:「しなやか」な教室へ!

上の2つの例でマインドセットの力をわかったいただけただろうか。
まず一つ目に、生徒の過程や努力を褒めると知能とやる気が上がるが、結果だけを褒めると知能とやる気は下がってしまう
二つ目に、教師のマインドセットによって子供の成績が変わる。
もちろん一日で劇的にマインドセットが変わるわけではないでしょう。「硬直」な人々を「しなやか」にするのは大変だし、時間がかかると著者も認めています。生活指導や授業などの毎日の大変な教師の業務寄り添った温かいサポートが必要になるでしょう。
しかし、それは徐々に、確実に変わっていく。さらに、「硬直」で無気力な生徒を、「しなやか」でやる気に満ち溢れた生徒へ変えていった先人もいる!「しなやか」にするには教師自らが「しなやか」にならなければならないだろう。
著者はマインドセットを「しなやか」に変える方法として次の方法を推奨している。
• 朝起きたとき、今日自分自身がどういう成長ができるのか、他の人にどういう成長を促せるのかを考える
• 次に、いつ、どこで、どのようにそれを実行するかを考える
• それが障害にあたったとき、いつ、どこで、どのように新たな計画を実行するのかを考える
そして何よりも、
• 実行に移す!
あなたもしなやかマインドセットで教室を変えていきませんか?

この記事はこの著者の方の本の内容を教育に絞って要約したものです。
著者紹介
 キャロル・S・ドウェック
 スタンフォード大学教授。発達心理学・社会心理学の世界的権威。こころのありかた、マインドセットに関する研究を20年以上行っており、彼女が自らの研究を元に作成したワークショップやプログラムによって学習に無気力感を抱く子供たちが、学習に意欲的に取り組むようになっている。さらに、彼女の研究をまとめたTEDスピーチは4,000,000回以上再生されている。

この記事の引用元


この本の著者の、4,000,000回以上再生されたTEDスピーチ
必ずできる!−未来を信じる「脳の力」−
現場の経験を踏まえたフィードバックや、実践された例をたくさんいただきたいので、コメントよろしくお願いします

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