学級目標の立て方<後編>(岡篤先生)

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目次

1 はじめに

本記事は、岡篤先生のメルマガ「担任の3K労働~613号~616号」から引用・加筆させていただいたものです。

初めて担任になって不安を抱えている、そんな先生のために具体的な学級目標の立て方を紹介します。

岡篤先生のメルマガはこちらを参照ください。→http://archive.mag2.com/0001346435/index.htm

2 運動場で起こった事件          

■円陣バレーに参加しない

子どもたちが円陣バレーをしているはずの運動場に遅れて出ました。すると、いきなり一人の女の子がしゃがんで草をいじっています。
「あれっ、どうしたの?円陣バレーは?」
「あたしは、いいの」
特に何かあった様子でもありません。
「みんなやってるんだろ。いっしょにやらなきゃ」
と促して、動きました。すると、今度は水道で手を洗っている男の子がいました。やはり、クラスの子です。
「どうしたの?」
「ぼくは、ボールは嫌いです」
「え?」
「ボールは嫌なの」
「なんか言われたのか」
「そうじゃなくて、嫌なんです!」
とにかく、一緒に来るように言いました。

■横で泣いてる女の子

他の子たちが円陣バレーをしているところに着きました。一見、楽しそうにやっているようです。ところが、すぐ横で泣いている女の子がいるではありませんか。声をかけても答えません。
「この子どうした?」
近くの男の子に尋ねました。
「知らん」
こちらも見ずに答えました。(なんだこれは…)わざわざ時間をとってクラスで遊んでるのに、始めたとたんに3人が参加していません。

■勝手に泣いた

「ちょっとやめて」
大きめの声を出して、円陣バレーをとめました。
「どうして泣いてるんだ」
とめられたことが不愉快なようで先ほど「知らん」と答えた男の子がむっとした表情で言いました。
「どうでもいいやろ」
「どうして」
「こいつが何回も同じ失敗するかや」
「それで泣かせたのか」
「ちゃんとやれ、っていったら勝手に泣き出したんや」
これでは、何のためにやっているかわかりません。

■とりあえず参加させる

「勝手に泣いた」というその男の子の言い方が気にいりませんでした。泣いている女の子に声をかけるとまた円陣バレーにもどると答えました。抜けていた二人も促して全員で続けさせることにしました。とりあえずの応急処置です。この後、個別に声をかけて尋ねてみたところ、こういうことは常にあったようです。

3 改めて話を聞く

翌日、改めて話を聞いてみました。
「また、聞くけど、どんなクラスがいいかな」
特に反応はありません。
「昨日の円陣バレーは、全員で楽しくというわけにはいかなかったみたいだね」
この誘いに、円陣バレーを提案した女の子が迷いながら手を挙げました。
「楽しいクラスにしたいけど、意見を言わないで後で文句を言うのは困ります」
この子は、円陣バレー以外にもクラスで遊んだり、活動したりすることを提案してそうです。にも拘わらず、昨日のような状態になり、不満があったようです。 

■本音が出る

「円陣バレーは、嫌だったのかな?」
最初から円陣バレーを抜けていた女の子に尋ねました。
「べつに」
「じゃあ、次に、円陣バレーするときはちゃんと入れる?」
「うん」
(なんだこれは)とまた内心で思いました。勝手に抜けることをなんとも思っていないようです。
「クラスがよくなるために言ってくれたことだから、特に理由がなければ参加すること。これはいいね」
その女の子に確認するとうなずきました。他の子も見渡すと納得している
ようです。
「○○君はどう?」
もう一人最初から抜けていた男の子に尋ねました。こちらの反応は、違いました。

■ボールが怖い

その男の子は、女の子とのやりとりを聞いて、思うところがあったようです。
「次も、円陣バレーは入りたくない」
という気持ちがあったのでしょう。指名すると、堰を切ったように話し出しました。
「ぼくは、バレーが嫌なのに、無理矢理入れられる」
「練習したら、こわくなくなるよ」
「私も最初は下手だったけど~」
他の子が意見を言いました。
「ぼくは無理なの」
言い切りました。いらいらしているのが見ていてわかります。

■相手の言い分

円陣バレーを提案した女の子が言葉を選びながら言いました。
「それなら、最初から言ってくれれば他のこと、考えるのに」
他の子もうなずいています。
「それはどうなのかな。やることを決めるときにボールが怖いことは言えなかったのかな」
「無視されるに決まってる」
「えっ」
「どうせ、僕が言ったって無視されるに決まってる」
 今まで、よほど嫌な目にあってきたのでしょう。

■確認

「そうか。今までに言ってみたけど無視されたことがあるのか」
ここで、当然「うん」という返事がくると予想しました。そうなれば、他の子は
「そんなつもりはなかった」と反応するでしょう。
「では、これから相手の本当に言いたいことを想像するように
気をつけていこう」とおさめるつもりでした。ところが返事は、「ううん」でした。
「えっ?」
「どうせ無視されるに決まってるから」
と繰り返します。
「だけど、ほんとに無視されたことはないの?」
「ぼくがいったって、無視されるに決まってるから」
円陣バレーを提案した女の子が困ったような表情でこちらを見ました。

■伝えることを教える

幼いといえば幼い、自分勝手といえば自分勝手。ただ、これからのことを考えるとやはり、このままにするわけにはいきません。その後も聞いていくと同じような発言が他の子からも出てきました。正直なところ、一人一人の子どもは悪くないけれども、集団としてみるとばらばらです。その理由は、まず自分の思いを伝えようという意識が弱いことにあるようです。確かに無視されることもあるかもしれません。もしかしたら、過去にあったから前述のような発言になったのかもしれません。それにしても、これからは意識して取り組んでいく必要がありそうです。このクラスの目標に、「伝えよう」を入れることにしました。

4 執筆者プロフィール

岡 篤(おか あつし)先生
 1964年生まれ。神戸市立小学校教諭。「学力の基礎をきたえどの子も伸ばす研究会(略称学力研)」会員。硬筆書写と漢字、俳句の実践に力を入れている。

5 書籍のご紹介

『読み書き計算を豊かな学力へ』2000年

『書きの力を確実につける』2002年

『これならできる!漢字指導法』2002年

『字源・さかのぼりくり返しの漢字指導法』2008年

『教室俳句で言語活動を活性化する』2010年

6 編集後記

伝えることの大切さが分かっていても実践することって難しいですよね。何か問題が起こったらその度に話し合い解決する。その積み重ねが良い学級を作っていくのではないでしょうか。ぜひ、ご参考ください。

(文責・編集 EDUPEDIA編集部 内山翔太)

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