保護者からのクレームにどう対処すればよいか

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作成者:matui hiroshi (Edupedia編集部)さん

1 押し寄せるクレーム

どの業界でもクレームへの対処は重要な業務のひとつとなっています。学校現場にもクレームが寄せられることが増えてきており、「モンスターペアレント」という言葉が生まれて以来、学校の対応もずいぶん慣れてきた感もあります。保護者、地域、行政、中には同業者からのクレームもあります(この稿では保護者と表記します)。学校・教師にとって有難いご指摘である場合もありますし、理不尽でつらいクレームである事もあります。学校現場で発生するトラブルは、白黒つけて判断することが難しいことが多くあります。
「うちの子供がいじめられたから、向こうの親に謝りに来させてほしい。」
という保護者の要求の電話に、
「そうですね、ひどいですね。はい、わかりました、そう伝えます。」
などと、子供たちから事情もよく聞かないうちに応えてしまうと、いじめたとされる側の親から、
「向こうが先に手を出してきたんだ。むしろ向こうから謝りに来るべき」
と反論され、たちまち板挟みになってしまうようなこともあります。
こんな時は、はじめの電話に対して「なるべく早く事実関係を確かめ、後程お電話させていただきます。」と、いったん保留にできるなら、時間をかけて両者から話を聞くことができますね。
小野田正利教授(大阪大学大学院人間科学研究科教授)は学校の保護者対応について詳しく、たくさん著書を書いておられますので、是非参考にしてみてください。

2 大原則

いずれにせよ、大原則は、
「クレームを受けることは学校や教師が成長する機会である」
と、真摯に受け止めることではないかと思います。
そして、クレームへの対処は
「ケースバイケースである」
ということも、頭に入れておかなければなりません。
以下、クレーム対処のポイントを上げていきますが、マニュアルに当てはめればそれで済むという問題ではありません。あくまで相手は「人」です。柔軟に、誠意を持って対処にあたりましょう。誠実な態度を見せなければ、保護者の気持ちを軟化させることは難しいと思います。

3 まず聞く、最後まで聞く

この場合の「聞く」は、「傾聴する」というニュアンスと考えてください。保護者は、とにかく何かを伝えたいと思ってクレームをつけています。保護者が伝えたいと思っている話を聞きとり、受け止める誠実な態度を示しましょう。保護者がしゃべっている途中で口を挟むのは避けた方がいいでしょう。
メモをとる必要がある時は、大事な部分は備忘のためにとっておくのもいいですが、かえって話を聞いていないようであったり、取り調べを受けているような気分になったりと、保護者にとっては快く思えない場合もあります。あくまで「傾聴する」が第一です。
保護者の話を聞く

特に保護者の怒りの激しい場合は、相手の言い分をしっかり最後まで聞かずに、自分が言いたい話をしたり、反論したりするのは控えましょう。その場は、クレームを聞くだけにとどめて、「今日はお話をお聞かせいただけてよかったです。じっくりと考えさせていただきたいと思いますので、後ほどもう一度訪問させていただきます。」と、一旦引き下がるという方法も、冷却期間をおいてお互いが落ち着けることになり、よいかも知れません。
 しっかりと保護者のクレームの内容をつかんでから、「背景・現象・保護者の要望・今後予測される展開・短期的な対処・中長期的な対処」等と、問題を切り分けて、考えていきましょう。

4 できるだけ対面で聞く

クレームは連絡帳、子供の話、電話などから伝えられることがあります。連絡帳や子供の話より電話で、電話より直接対面して、お母さんだけではなくお父さんも交えて・・・事態によってその対応の方法を変えるようにしてください。できるだけ対面して(できれば足を運んで=家庭訪問して)聞くのがよいと思います。特に、連絡帳や手紙は、やり取りが遅く、時間がかかることに対してイライラが募る場合があります。また、文面では伝えにくいニュアンスもあります。保護者は憤りを早く正確に教師に伝えたいのでしょうから、電話もしくは対面がよいと思います。

5 適切な場で聞く

事前に連絡もなくいきなり教室や職員室に怒鳴りこんでこられることもあります。そんな場合はたいてい興奮されていることが多いので、周囲の子供や他の職員の視線があると余計に興奮されてしまう場合があります。落ち着いた環境、もし立っておられるなら、せめて座っていただいて、じっくり話を聞きましょう。

6 あいづちを打つ

保護者のクレームの内容が何であったとしても、とにかく共感的に聞くということが大切です。そのためには、ただ話を聞くだけでなく、あいづちを打つことが大事です。頷く、オウム返しをするなども、聞き手として大切な態度です。
あいづちには適切なものと適切ではないものもありますので、配慮が必要です。「はい」や「そうですね」も、話し手にとっては聞こえがいいあいづちです。
しかし、「はい」や「そうですね」は保護者の言い分を認めたことになります。保護者の言い分を認めていい場合は、それでいいのですが、認められない場合にこれを使うと、後々、「あのとき『はい』って言っていたじゃないか!」と、トラブルになることもありますので、注意が必要です。

「はい」

何でも「はい」「はい」と言ってしまうのは、まずいと思います。時には相手を不快にしたり、不信感を抱かせたりする結果になります。「さっきから『はい』『はいって』言っているけど、本当にわかっているの?」とか、「『はい』といった限りは、こちらの要求を全部飲むのだな」と思われてしまう場合もあり、注意が必要です。「あー」「んー」「ほぉー」といったあいまいさも必要かもしれません。文字にすると「あー」「んー」「ほぉー」の3つですが、これらを場合に応じて、イントネーションを変えたり強弱をつけたりしながら、何通りものバリエーションで使ってみてください。

「そうですか」

「そうですね」も、共感的な言葉として使うといいと思いますが、使い過ぎると保護者にとっては自分の意見を全部肯定されたような気になってしまう場合があります。そこで「そうですか」を使ってみましょう。よく似た言葉ですが、「そうですか」は、全面的な肯定ではありません。これも、「そうですかぁ」「そうですかーーー」「そーですか」と、微妙なニュアンスで使い分けるコミュニケーション能力を身につけましょう。

7 結論を急がない

結論を急がなければならない場合もありますが、その場で誤った結論を出してしまうと、後々、苦しい状況が生まれる場合があります。これもケースバイケースですが。
 例えば「いじめられているから明日から学校を休ませる。毎日、家庭教師をよこせ。」等という要求があった場合、どうしますか?「はい、放課後私が来させていただきます」「検討させていただきます」では、かなり苦しい方向です。「その件につきましては、学校に、持ち帰らせていただいて、管理職と共に対応を考えさせていただきます。」「後日改めてご連絡差し上げます」等と、その場で結論を出すことを回避するように努めた方がいいでしょう。

8 謝るべきはきちんと謝る

明らかにこちら側に非がある点に関しては、きちんと謝りましょう。それは、社会人・人間として当然のことです。非をなかなか認めず、謝らないでいると、火に油を注ぐ結果になるかもしれません。誠実に頭を下げて、陳謝することから話が進むケースも多いと思います。子供に対して謝らなければならない場合もあります。

9 難しければ一人で対応しない

 一人で対応するのが難しい事態も考えられます。一人で対応していると、対応の失敗に気づかなかったり、よい対応策が思いつかなかったりします。できれば、年長の教員や生徒指導の係に同席してもらって対応しましょう。場合によっては管理職に入ってもらうのがよいかもしれません。保護者が教員に対する「ペナルティ」を求めている場合もあるのです。そんな場合に、管理職が教員と同席し、
●「今後、私の方できちんと指導します」等と、教員を指導・教育することを約束する。
●教員と一緒に謝罪をする。
●場合によっては、保護者の前で教員を叱責する。(管理職の方、教員を叱った後はフォローをお願いします)

といった形をとることによって、保護者は教員にペナルティが加わったと感じて、矛を収める気持ちになれる場合もあります。
同僚や管理職は、クレームに対応している教員のサポートに努めましょう。それこそ、話を傾聴してあげてください。クレームの原因を一直線上に表すとすると、一方の極には、「教員(学校)が全面的に悪い場合」があり、反対の極には「保護者の一方的な言い分である場合」があります。完全にどちらかの極に原因があるという事はまれで、たいてい原因は両極の間にあります。どっちの極寄りであったとしても、ど真ん中であったとしても、クレームを受けるというのはつらい事です。保護者との話し合いが長引いた時、同僚が心配して待ってくれていたり、後でアドバイスや励ましをくれたりすることは、大きな支えになると思います。教師はけっこう孤立感を覚えやすい職業です。落ち込んでいたら、「○○先生、大丈夫、一人じゃないよ。」と、声を掛けてあげてください。「ちょっとうまいものでも食べにいこっか」など、気分転換を図るようにするのもいいでしょう。

10 別な理由が隠されていることも

クレームの内容をしっかりと受け止めて聞いていると、クレームの裏に隠された、また別の理由が見えてくる場合があります。例えば、我が子の権利を強引に主張されるお母さんの話を聞いていると、「乳児期に大病をしたのがきっかけで、子供のことが心配で心配でしょうがないんです」と、泣き出されたことがありました。その話をしっかりと受け止めながら、お子さんの「これから」のことを話すことができたおかげで、お母さんのクレームはほとんどなくなり、子供もずいぶんたくましく成長をしました。
 家庭や社会での不安感がクレームとなって表出しているというケースは少なくないと思います。そこへ分け入ることが、教員としての守備範囲であるかどうかは難しいところではありますが、保護者とのトラブルの解決の糸口になる場合もあります。

11 共通項は、子供を伸ばすこと

クレームがゼロになることは難しいにしても、クレームをつけられにくい教師、クレームが出てきても、関係を悪化させずに対応を進めることができる教師になることは可能だと思います。そのためには日々の子供の育ちに目を向けて、「子供を育てられる」教員になることが必要になってきます。日々の子どもを育てる営みが「予後ではなく、予防」としてクレームが出てこないように作用していることが肝心です。
 コミュニケーションの成立には、同じ目標を持つこと、同じ方向(未来)を見ることが必要だと言われます。保護者と教員が持つ同じ目標は、子供を育て、伸ばすことです。話の内容がこじれている時には、できるだけ子供にいい方向が何であるかを保護者と共に探るように心がけましょう。

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