赤い実はじけた(前半)<シリウス>

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目次

1 はじめに

こちらの記事は、静岡県で30年間以上続く教員サークル、シリウスのホームページに掲載されている教育実践法の一つをご紹介しています。
http://homepage1.nifty.com/moritake/

2 実践内容

(※青色=発問・指示等、教師のはたらきかけ/以下同様)

登場人物の関係は?

この物語の作者は、名木田恵子さん、漫画「キャンディキャンディ」の原作者です。「赤い実はじけた」は、思春期の揺れ動く乙女の微妙な心理を描いています。

心身の成長とともに起こる、思いがけない異性への目覚め。それは他者との新しい出逢いであるとともに、今まで気がつかなかった新しい自分との出逢いでもあります。

まず、教科書を一通り読んだところで

発問1 登場人物はだれですか。出てくる人を教えてください。

綾子/千代/哲夫/一夫/綾子の父、母/千代の母

この問いには、すぐに答えが返ってきました。次に

発問2 これらの人たちは、どのような関係なのでしょう。人を線で結んで、関係を表してみましょう。

これもすぐにわかったようです。子どもたちが言っていることを図にまとめていくと、下のような関係図が浮かび上がってきました。


 
綾子と哲夫、千代と一夫の関係がはっきりしなかったので

発問3 綾子と哲夫、千代と一夫はどのような関係でしょうか?

これには、たくさんの意見が出されました。子どもたちが恥ずかしがらずに次々と発表したことに少し驚き、嬉しく思いました。

幼なじみ/片想い/クラスメイト/恋人/友達

出てきた意見の中で、最初に問題になったのは、クラスメイトでした。

クラスメイトではおかしいと思う。なぜなら、P6L3に"同じクラスになったことはなかった"と書いてあるから。

細かなところまでよく見ています。しかしこのあと"同じクラスの一夫"という文が見つかり、やはりクラスメイトであることがはっきりしました。この二組はどのような関係なのか、考えを確かめると、

幼なじみ 9人/クラスメイト(友達) 16人/片想い 8人

周りの友達と自由に相談させると「クラスメイト(友達)」という意見がたくさん出されました。

  • "一緒のクラスなんだ"と書いてある。
  • "私の友達が作ったんだって"とある

綾子は哲夫のことが好きか?

哲夫と綾子はどんな関係にあるか?という質問から、「クラスメイト」、「片想い」という意見が出ました。それぞれの理由を聞いていくことにしました。

片想い  8人

  • "一秒だって一夫のことを忘れたことがない"と書いてあるから。それは赤い実がはじけたことだと思う。
  • "特大のパンチが来た"と書いてあるし、それは胸が苦しくなることだと思うから、片想いだと思う。

この意見に対して < クラスメイト > の中から、反論が出ました。
「もし綾子が哲夫のことを好きなら、文中に "好き" と書いてあると思う。」

この発言があってから、がぜん話し合いが盛り上がりました。綾子は哲夫のことを本当に好きなのでしょうか?

発問1 綾子は哲夫のことを好きなのだろうか?

この質問に対しても、考えは二つに分かれました。

< 好きではない > 13人

  • 教科書に "苦手なタイプの男の子" と書いてあるから好きじゃない
  • 今の意見に付け加えで、苦手なタイプの男の子だから、好きにはならないと思う。
  • "赤い実はじけた" と書いてあるけれど、別に綾子はなりたくてはじいたわけじゃないから、好きじゃないと思う。でも、 "赤い実" っていうのが何だかよくわからない。
  • "赤い実" がはじけることは、好きになったわけじゃないから、違うと思う。

< 好き > 20人

  • この物語を読んでいくと "赤い実はじけた" は、好きって感じがして、好きな人ができたときだから、好きだと思う。
  • "一秒だって忘れたことがない" と書いてあるし、人を好きになるとずっと思っていると思うから、好きだと思う。
  • この物語では、哲夫のことが一番多く出てきているから、やっぱり好きだと思う。
  • 物語の最後の方で、綾子は "変に思われなかったかしら" と心配していて、別に友達だったら、そんなことを考えないはず。
  • "胸が苦しい" とか書いてある。

このような意見が次々に出てきました。きっと自分自身でも経験したことがあるのでしょう。あちこちで随分楽しそうに相談をしています。これはやはり、綾子が哲夫のことを好きであるということをまとめたあとに、

発問2 もう赤い実がはじけた人はいますか?

こう尋ねると、子どもたちはあたりをキョロキョロ見回して、シーンとなってしまいました。

3 プロフィール

静岡県教育サークル シリウス
1984年創立。
「理論より実践を語る」「子どもの事実で語る」「小さな事実から大きな結論を導かない」これがサークルの主な柱です。
最近では、技術だけではない理論の大切さも感じています。それは「子どもをよくみる」という誰もがしている当たり前のことでした。思想、信条関係なし。「子どもにとってより価値ある教師になりたい」という願いだけを共有しています。

4 書籍のご紹介

「教室掲示 レイアウトアイデア事典」(明治図書2014/2/21発売)

「学級&授業ゲームアイデア事典」(2014/7/25発売)

「係活動システム&アイデア事典」(2015/2/27発売)

「学級開きルール&アイデア事典」(2015/3/12発売)

5 編集後記

”赤い実はじけた”という抽象的なテーマを、登場人物を列挙してもらうという簡単に答えられるところから入り、児童自身の体験と結びつけるなど、何を意味しているのかをじっくりと紐解いている所が印象に残りました。

(編集・文責:EDUPEDIA編集部 河村寛希)

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