赤い実はじけた(後半)<シリウス>

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目次

1 はじめに

こちらの記事は、静岡県で30年間以上続く教員サークル、シリウスのホームページに掲載されている教育実践法の一つをご紹介しています。
http://homepage1.nifty.com/moritake/

2 実践内容

(※青色=発問・指示等、教師のはたらきかけ/以下同様)

哲夫は綾子のことが好きか

綾子が哲夫のことを好きであることを学習したあとで、逆に哲夫は綾子のことが好きかどうかを話し合いました。発表を聞いていると、普段の子どもたちの様子などを感じて、とても興味深く面白かったです。

発問1 哲夫は綾子のことが好きだと思いますか。

この質問に対して、< 好きでも嫌いでもない><好き> の2つに意見が分かれました。

<好きでも嫌いでもない>

  • もし好きだったら、話し声は小さくなると思う。けれど教科書には、"生き生きと"と書いてあるから、別に好きでも嫌いでもないと思う。
  • "おれ、魚好きだからな"と書いてあって、好きなのは魚で綾子じゃない(←アハハハ!)魚のことを話すのも、綾子のことを話すのも、同じ声で話している。
  • 綾子には、普通に話しているから、別に好きじゃないと思う。
  • もし好きだったら、話すときに緊張すると思うんだけれど、教科書にも"きびきび"と書いてあって、別に緊張していないから、好きなわけじゃない。

<好き>

  • "顔がくしゃっとなった"と書いてあるから、哲夫も好きだと思う。
  • "いつも魚買ってくれるのか、おまけな。食べてくれよ"と書いてあって、綾子におまけをしているぐらいだから、好きなんだと思う。
  • 哲夫は自分のお父さんに綾子のことを紹介しているし、言葉遣いもていねいだから好きだと思う。

<好き>に対して、次のような反論が出されました。

  • おまけをしたって言うけれど、それは"いつも買ってくれているから"だしクラスメイトだからだと思う。だから <好きでも嫌いでもない>と思う。

意見が出尽くしたところで、私の考えを話してまとめました。

説明1 本当のところは<よくわからない>というのが答えです。それは文章の中に、哲夫が綾子のことをどう思っているかはっきりと書いていないからです。でも先生は、哲夫は綾子のことを好きでも嫌いでもないと思います。なぜなら、先生の経験で言うと……(以下略)

子どもたちは、私の初恋の話を真剣に、少し照れくさそうに、半分ニヤニヤしながら聞いていました。きっとニヤニヤしていた子たちは、自分にも思い当たる節があるのでしょう。特に女子に多かったです。

哲夫は綾子とことを好きでも嫌いでもないことを話したあとに、音読劇をすることにしました。

指示1 音読劇をやりますから、綾子・哲夫・千代・お父さん・お母さん・ナレーターの役を決めましょう。

子どもたちからは、一斉に「エー!」の声。それでも構わず続けます。「別に、男子が綾子をやってもいいんですよ。『急に胸が苦しくなって、とたん胸の中で赤い実がはじけたの』とおどけると、今度は大笑い。
グループで話し合って、和気あいあいと役割を決めて音読劇を楽しんでいました。

綾子の出した手紙

哲夫のことが好きになった綾子は、いとこの千代に手紙を書くところでこの話は終わります。綾子は千代にどんなことを書いたのでしょうか。物語の続きを考えてみることにしました。

指示1 綾子は千代にどんな手紙を書いたのでしょう?綾子になりきって、手紙を書いて下さい。

「えー?」と一斉に非難の声。でもその声には負けず、プリントを配りました。これから、こんな手紙を書く子もいるでしょう。自分の気持ちを豊かな表現で伝えられる子になってほしいです。

◆児童の書いた手紙

  • 千代、元気ですか?この手紙を書いたのは、赤い実がはじけたからです。それも相手は…、哲夫、岡本哲夫君だったんです。一年生の時から、一緒のクラスだったんだけれど、それが突然…。千代の言ったとおりでした。それはまったく突然。他にももっとすごいことがあったらまた教えてください。(Y)
  • 千代、あのね私、赤い実がはじけたの。千代の言うとおり、地震みたいに突然きて、哲夫に聞かれたんじゃないかなんて思ったの。私ね千代、哲夫の顔を正面から見たの、どきどきしたけど、なんか素直になれたの。お互いにがんばろうね。ファイト。(A)
  • ついに私も赤い実がはじけたよ。千代さんみたいにね。大好きな男の子を正面から見たとき、来ちゃったんだよ。特大のパチンがね。また千代さんも赤い実がはじけることがあるからね。そうしたら、手紙を書いてね。(T)
  • 私、哲夫君のこと好きになってしまったの。魚進へ買いに行ったら、哲夫君がお店を手伝ってたの。いきなり特大のパチンがはじけたの。とってもはずかしかったわ(H)

3 プロフィール

静岡県教育サークル シリウス
1984年創立。
「理論より実践を語る」「子どもの事実で語る」「小さな事実から大きな結論を導かない」これがサークルの主な柱です。
最近では、技術だけではない理論の大切さも感じています。それは「子どもをよくみる」という誰もがしている当たり前のことでした。思想、信条関係なし。「子どもにとってより価値ある教師になりたい」という願いだけを共有しています。

4 書籍のご紹介

「教室掲示 レイアウトアイデア事典」(明治図書2014/2/21発売)

「学級&授業ゲームアイデア事典」(2014/7/25発売)

「係活動システム&アイデア事典」(2015/2/27発売)

「学級開きルール&アイデア事典」(2015/3/12発売)

5 編集後記

物語から主人公たちの気持ちをみんなで話し合い、その後音読劇。そして、物語の続きを手紙形式で主人公の気持ちに立って書いてみるというしめくくりで、物語の世界をイメージすることができたのではないでしょうか。

(編集・文責:EDUPEDIA編集部 河村寛希)

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