次期学習指導要領改訂について対話しよう!(善元幸夫先生・参加者ディスカッション) (第7回「学習する空間づくり勉強会」)

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目次

1 はじめに

2016年9月3日(土)に行われた第7回「学習する空間づくり」勉強会(早稲田アカデミーが主催する教師力養成塾)に参加しました。

1部では、東京学芸大学兼任講師の善元幸夫(よしもとゆきお)先生が実践している総合学習についてのお話がありました。

2部では、善本先生と参加者とのディスカッションと、元文部科学省官僚で現在京都造形美術大学教授の寺脇研先生からの次期指導要領改訂についての講演がありました。

本記事では、2部前半のディスカッションについて紹介します。

その他の内容については、以下の記事をご覧ください。

これまでの教育改革と次期学習指導要領改訂について(寺脇研先生)

~善元流わくわくしちゃう総合学習~(善元幸夫先生)

勉強会の主催者である牛嶋先生は、早稲田アカデミーに勤務をされ、教師力養成塾チーフインストラクターとして活躍されています。社内の研修はもちろん、小・中学校・高等学校での校内研修や公開授業、現役教師・教員志望者向けの講座なども担当しています。
「教師力養成塾 e-講座」の詳細については、こちらをご覧ください。http://youseijuku.jp/

2 質疑応答・参加者ディスカッション

第2部前半に以下のテーマで行われた質疑応答・参加者ディスカッションの一部について紹介します。

「教えから学びへ」

牛嶋先生

時代は公を中心に据えようとしています。ここで切り落とされていく子どもらしさについて善元先生なりの実感や本音を聞かせてください。

善元先生

子どもがたっぷり子ども時代を過ごせるということ、歴史を見ていっても大事だなと思います。これは藩学校からの流れですよね。このころにも実はアクティブラーニングです。

私は愚直に地域の授業を作っていくことが大切だと思います。ESD(持続可能な社会)の授業もすごく大事ですよね。しかし、下手するとESDが目的化されてしまって、その周りに人間の問題がなくなってくる可能性もある。だから、目的は「人格の完成」だけど、方法や手段がどんどん目的化されてしまう危険性がある。

参加者

①(「教え」から「学び」の学習転換)について、前回の勉強会では善元先生「学びはエンドレス」だとおっしゃっていました。学習したことが日常生活や次の学びに結びつくことが学びだと理解しました。

善元先生

大事なのは教えじゃなくて学びだよね。利き水の授業をやった時にね、「善元さん、この授業をやって何になるのですか?」って聞かれて困っちゃってね。でも、違いが分かることで自分が豊かになることが大切だということでやっていたのですね。

何か自分が学んで自分が変わっていくっていうことがエンドレスの学びなんです。学びが次の学びへ、という方法知のようなものですね。でも、今は方法知が目的化されていますよね。でも、原点は自分自身が豊かになる事ですよね。

参加者

前回の「学習する空間づくり」に参加して「鬱」という字を教えて頂きました。でも、今は書けなくなってしまっているんです。でも、私は今は書けなくなっちゃっているけど、あの日に書けるようになったっていう経験が、ある意味では本当の学力なんじゃないかなと思いました。

善元先生

忘れちゃっていいんです。でも、あの感覚が次のことにもつながっていくんですよね。何か分かったってこと自体が、次の学びにつながるんですよ。

次回の勉強会は「分かって納得、楽しい漢字」をテーマの1つとしてやります。思考力が大切とは言っても、学力の中で知識・技能って大事ですよね、という話をします。

詰め込み教育の最たるものが漢字なんですよ。でも、私は思うんですね。漢字の面白さは知って死んだ方が良いですよ。楽しいんですよ。分かった時に「そういうことなのか」という感覚があるんですよ。意味のない漢字なんて1つもないんです。だから、我々はそれが分かって楽しいですよね。私は私が豊かになるために学んでいるんです。

「学校は人にものを教うる所にあらず」

参加者

最近勉強してきて思うのが、分からないことが分かることが大事ということが大切だと感じている。多分教えるというのは、ここは教えなければいけないという決められたゴールみたいなものがあると思うんだけれども、やっぱり子どもたちが学ぶことによって、学べば学ぶほど分からない事と言うのはどんどん見えてくる。それが、とても大事だなと思っています。

参加者

内容がゴールになる学びはしてはいけないなと思いました。もう少し自覚してやっていかなければいけない時に、学習する内容は決められていてそれが学び取れたらオッケーという教育をずっとやってきている中で、どうやって子どもたちの状況を見ながら、子どもたちに今どういう力が必要なのかをみとったり、それを子どもたちに自覚させていくか。

あとは、背後霊という言葉もあるんですけど、保護者にもどういう力を身につけさせなければいけないのか、ということも保護者とかもっと言うと日本の社会でそれが変わっていかない限り、教育は変わらないなって思ってしまうんですね。

私たちも内容重視の教育を受けて来て、教え込みをされて育ってきている世代の子どもたちなので、すごい保護者の意識も変えなきゃいけないですし、すごく難しいなと思っています。

善元先生

教えと言うのは、誰かが誰かに教えるんですよね。学びっていうのは、主語が「私が」学ぶということですよね。それは子どもも一緒で。従来型の詰め込み教え方の教育から「私が」学ぶ、への転換。

私が勤めていた大久保小学校の140周年の時に工事でいろいろ捨てちゃったの。ゴミ捨ての中にこれ(下の色紙)があったんですよ。


(色紙の文章を読み上げる善元先生)


(福沢諭吉「文明教育論」より。下にリンクあり)

福沢諭吉「文明教育論」青空文庫HPへ

3 善元先生から3つの提案

体験的「学習指導要領批判」を乗り越える 「教師は授業で勝負する!」—ではそれはいったいどんなこと?−

私は教員を小学校の34年間授業を行ってきてわかったことがある。それは時代がたとえグローバル化時代になっても、かりに近接未来にヒトがAIの頭脳に負けても、人がこの世界を切り開くということである。そのために、むしろだからこの世界に対して人の持つ感覚を豊かにするのである。
 そのために3つのことを提案したい。

1 ヒトの持つ感覚を中心に据えて学びを豊かなものにしていくこと(感覚教育のすすめ)

2 目の前にある課題に答を教師が教えたりしないこと(否定教育:ネガティブ・エデュケーション)

3 人類の歴史はそれぞれの時代に応じて多様なものがある。しかしあえて私たちが貫きたい教育の原理は「命・人権を最優先に考える教育」である。

これらのことは一言でいえば、教育の目的は「人格の完成」であり、そのために、どの地域や時代にも全ての子どもにとって「自尊感情の形成」「生きる力の形成」が最重要であると考える。

4 関連記事

5 編集後記

教育の勉強会は、偉い先生の話を熱心にきく姿が思い浮かびますが、講師の先生と直接やり取りできることが最も大きな魅力です。先生が話す間、顔つき、漂よう空気感など、文字や音だけでは伝わらない授業の秘密が詰まっているように思います。
 勉強会で最も印象的だった善元先生の言葉「私は私が豊かになるために学んでいるんです。」

(編集・文責 EDUPEDIA編集部 大和信治)

(12月10日(土)第8回「学習する空間づくり」勉強会の案内)

※以下、主催者より

第7回に引き続き善元幸夫先生をお招きして、前半は「教師は職人~知識・技能はどう継承するのか~」というテーマで、「漢字学習」の授業実践を行って戴きます。後半は参加者の皆さんとのディスカッションを通じて「授業づくり」そして「次期学習指導要領改訂」について共に考えてまいります。

第1部 基調講演

  • 子どもを決して教えこみの対象にしない。学びの主体としての子どもの発見!
  • 善元 幸夫先生(東京学芸大学講師・元琉球大学講師・教育学部兼任講師・元新宿区大久保小学校教諭)

①「教師は職人 知識・技能はどう継承するのか?」
  (漢字学習編)ー腑におちる、わかって納得、楽しい漢字ー

②「次期学習指導要領改訂」について対話しよう(その2)!
  「2030年の未来を見すえる学力・学習指導要領」とは何か、学力とは何か?
   2045年シンギュラリティ問題、学校、学校文化を考える!

第2部 参加者ディスカッション

基調講演を受けての質疑応答と「次期学習指導要領改訂」について、意見交換・協議を行いたいと考えております。

  • 日時:12月10日(土)14:00~16:00(予定)
  • 会場:豊島区立生活産業プラザ(池袋駅東口より徒歩7分)
  • 会費:2,000円(過去に教師力養成塾の講座を受講された方は無料でご参加いただけます。)
  • 懇親会:勉強会の終了後,懇親会の実施を予定しております。(会費3000円程度)
  • お申し込みは、こちらのメールにご返信下さい。⇒ youseijuku@waseda-ac.co.jp
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