プログラミングを取り入れた国語科の実践(古河市立大和田小学校)

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目次

1 はじめに

本記事では、茨城県古河市立大和田小学校における藤原晴佳先生によるプログラミング教育の実践を紹介しています。大和田小学校は文部科学省の情報教育指導支援事業の研究校にも指定されており、2020年度の学習指導要領改訂に盛り込まれるであろうプログラミング教育について、現場の教員がどのように取り組むことができるのか、参考になる内容となっています。

2 藤原先生へのインタビュー

本記事の実践例を紹介していただいた藤原晴佳先生へのインタビューになります。プログラミング教育について、興味深いお話を聞かせていただきました。

授業に至った経緯

EDUPEDIA記者

はじめに、どのような過程を経て、現在の授業を行うに至ったのか教えていだだけますか。

藤原先生

前年度(2015年度)に大和田小学校が文科省の指定を受けた当時は、どのようにプログラミングを授業に取り入れていけばよいのか、教員全員、非常に悩んだわけです。そこで、会議を開くなどして、思いつく限りのアイデアを共有し合い、何もないところから実践をはじめました。

一年間実践をしていく中で、何が使えて何が使えないのか、少しずつ分かり、プログラミングの強みを生かすような授業を行えるようになってきたと思います。プログラミングソフトは、子供でも理解できるようにビジュアル化してある「スクラッチ・ジュニア」「Sphero(スフィロ)」を使用しているのですが、「ゆうすげ村の小さな旅館」(本記事の実践)に限らず、算数の文章問題を自分で視覚化してみるだとか、現在では様々な実践をしています。

論理的思考を鍛える

EDUPEDIA記者

では、プログラミングといっても、一般的に想像するような文字列をひたすら書いていく作業ではないのですね。

藤原先生

そうなんです。プログラミングと聞くと「C言語」や「Java」など、小学生が理解するには難しいものを想像すると思います。しかし、実はそうではなくて、先程言ったように、「スクラッチ・ジュニア」や「Sphero(スフィロ)」のような、子供向けの簡単なものを使用しています。

スクラッチ・ジュニアの編集画面 「出典:http://www.watashimo.jp」

本校で行っているプログラミング教育は、プログラミング言語そのものを習得することに重点は置いていません。むしろ、考えるためのツールとして、プログラミングを使用することによって、論理的思考力を鍛えることを重要視しています。これは、生徒が自分でプログラムを作成して、試行錯誤していくプロセスを経るからこそできるものです。なので、「C言語」や「Java」などの難しいプログラミング言語を学ばせることは、本来の趣旨からずれているわけです。実際、文部科学省の指導案にも「プログラミング言語を教えるのではなく、プログラミングを使って論理的思考を鍛える」という趣旨の文言が示されています。

「使い方」の習得

EDUPEDIA記者

プログラミング言語を学ぶことが主要な目的ではないのですね。とはいっても、プログラミングを使うためには、その「使い方」を事前に習得していることが必要だと思うのですが、どの時間を使って生徒に「使い方」を教えているのですか。

藤原先生

総合の時間に、生徒が自由にプログラミングに慣れる時間を確保しています。あるいは、臨時に生まれる隙間時間を活用するようにしています。そうすることで、授業の時間にはプログラミングの使い方についての質問がほとんど無く、その科目へのプログラミングの応用に集中することができています。

また驚くことに、子どもたちは、1時間ちょっとで使い方を習得するのです。先生たちは10時間ぐらい掛けて覚えたのに(笑)。それだけ楽しく集中して取り組むことができることも、プログラミングの強みだと思います。

ここで一つ注意しているのが、楽しいからと言って、生徒がゲーム感覚にならないようにすることです。そのためには、授業の最初に、ゴールを生徒にはっきり認識させることが重要になります。教師が言葉で説明するのはもちろんなのですが、生徒自身にも、配布するプリント上のシンキングツール(思考ツール)に書き込んでもらうなどして、確実に授業の目的を理解させます。そうすることで、誰もブレずに、国語とプログラミングを見事に融合させながら、授業に集中して取り組むことができるのです。

これは、先程の論理的思考の話にもつながります。授業のゴールを理解することで、そこまでの手順を、生徒自身が論理立てて考え、行動することが可能になります。

多種多様なゴール

EDUPEDIA記者

授業のゴールを生徒に理解させることが重要なのは、プログラミング教育の無かった時代においても同じですよね。その観点から、ゴールの理解とプログラミング教育のつながりについて、先生のお考えをもう少し詳しく教えていただけますか。

藤原先生

ご指摘のとおり、プログラミング教育の無かった時代においても、生徒によるゴールの理解は重要でした。しかし、プログラミング導入後と比べて、導入前は、ゴールの幅が制限されていたと私は考えています。

以前は、ゴールの良い例、悪い例を教師が生徒に提示して、その限られた例を模倣するがごとく、生徒は課題に取り組んでいたのではないでしょうか。いわゆる「やらされている感」があったわけです。そういった意味で、その狭いゴールを達成するにはどうすればいいのか、と生徒が考えることは、確かにありました。

それに対して、プログラミングは、表現の幅を生徒に与えるので、創造力を掻き立てられた彼らは「あれが使えるんじゃないか、これを使ったらいいんじゃないか」と積極的に課題に取り組むようになりました。話す・聞く・書くの他に,「つくる」という新しい可能性が垣間見えた瞬間でもありました。ゴールは確かにあるのだけども、狭くない。論理的思考に基づいていれば、多様なゴールや答えがあって良いのだと、私は思います。そうすることで、生徒は窮屈さを感じずに、のびのびと創造力を発揮し、同時に、論理的思考も鍛えることができる。これが、プログラミングの最たる長所であると実感しています。

プログラミングの必然性

EDUPEDIA記者

最後に、プログラミングを授業に取り入れる際に、最も意識していることを教えていただけますか。

藤原先生

プログラミングを授業に取り入れることに必然性を持たせることです。なぜ、この教科の、この部分にプログラミングが必要であるのかを、教師自身が明確に認識すること、また、プログラミングの強みを如何に引き出していくかを、教師が把握することが重要です。これは簡単なことではなく、プログラミング教育を始めて1年経った今でも、教員たちは、取り入れどころを模索し続けていますし、これから先も模索し続けていくだろうと思います。

3 実践内容

a. 教科・単元名

国語科・ゆうすげ村の小さな旅館

b. 授業デザインのポイント

c. 単元の概要

d. 学習のねらい

e. 実際の授業

f. 本時の授業計画

4 実践者プロフィール

藤原 晴佳

古河市立大和田小学校教諭。聖徳大学卒業後,古河市で教職に就き,教科とプログラミング教育について研究を行っている。また,アンプラグドコンピュータ×教科についても実践に取り組んでいる。

5 編集後記

藤原先生の実践は、プログラミング教育の可能性を示すものであり、使い方によっては、今の教育現場にプラスの変革をもたらし得るのではないかと、期待に胸が高鳴りました。創造力と論理的思考を同時に鍛えることのできるというプログラミングの長所が、今後の教育現場でどのように活用されていくのか。プログラミング教育をどう取り入れるべきか悩んでいる先生方には、とても参考になる実践かと思います。
(編集・文責 EDUPEDIA編集部 川村 鴻弥)

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6 関連情報

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【日時】8月20日(日)15:00~18:00(イベント後希望者のみの懇親会あり)
【場所】大阪大学 豊中キャンパス 文理融合型研究棟共通講義室1
【参加費】1000円(懇親会費別)
【申し込み】https://goo.gl/forms/nNfmzTMx0LEZsfzG2

【概要】学校にプログラミング教育の教材を販売している株式会社アーテックとNPO法人ROJEがコラボし、プログラミング体験と各教科へのプログラミングの導入の仕方についてディスカッションをしていただきます。プログラミング体験では実際に株式会社アーテックが制作しているプログラミング機材を使用することができます。ぜひご参加ください!
→→→詳細はこちら:リンク

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