複式学級指導案 ~2年「かけ算」・3年「何倍になるのかな」

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目次

1 <複式TT授業について>

2・3年の算数学習は、「異内容・学年別学習、児童同室・指導者複数」である。基本的には、T1 の 教師が主な発問や話し合いを進め、T2 の教師は考えを持つことや練習問題に取り組む際のサポートを行 うように役割分担をしている。なるべく同じ種類の学習活動場面が重ならないよう、授業を進めていく 場面を学年間で意図的にずらし、進めたい。

2 【2学年】(単元名 かけ算)

単元の目標

かけ算の意味を理解し、5,2,3,4の段の かけ算を構成し、九九を唱えたり、それを適用した りできる。

指導にあたって

<児童観>

本学年の児童は、子供らしく素直で、与えられた 課題にはまじめに取り組んでいる。人数が少ないた め、多様な意見や考えが出にくいこともあるが、友 だちの意見を聞いて自分の気付かなかったところ や、同じところを交流し、考えを広げ深めようと努 力している。しかし、全員が活発に意見を言い合う ような授業にはまだ至っていない。

<教材観>

児童は、本単元で新しく「かけ算」の学習を始め る。かけ算が用いられるのは、1つ分の数や大きさ が同じで、それがいくつ分かあるときに、その全体 の数・大きさを求める場合である。したがって、か け算の意味を考える時には、「同じ大きさの集まり」 に着目して、それが「いくつ分あるのか」をはっき り意識づけたい。そのため、ブロックを操作したり、 図を書いたりして考える算数的活動を十分に行わ せ、5,2,3,4の段の九九を構成していきたい。 さらにその考えを生かし、文章題を提示されて立式 した時に、被乗数と乗数の関係を正しく把握し、立 式できるようにしたい。

<指導観>

指導にあたっては、場面を数図ブロックで表し、 基準量の「いくつ分」についての理解を図る。そう することで、かけ算の意味についての理解を深めた い。本時では、ブロック操作により「何個のいくつ 分」かを明らかにし、式を考えさせるように支援したい。また、子どもたちとの話し合いの中で、これ までに取り組んできた問題と比べ、示された数値の 順序の違いがあることなどが見つけられることを 期待している。これらの学習を通して、かけ算の用 いられる場面やかけ算の式の意味についての理解 を深めることができればと思う。

指導計画(全17時間)


【第1時】具体的な操作を通して基準量の「いくつ分」という見方について理解する。
【第2時】かけ算の意味とその式について理解する。
【第3時】かけ算などを用いる場面を式に書き、その答えを累加で求めることができる。
【第4時】連続量をもとに倍の意味を知り、かけ算が用いられる場面についての理解を深める。
【第5時】乗数が1ずつふえると答えが5ずつふえることを使って5の段の九九を構成し、かけ算の九九について知る。
【第6時】5の段の九九の唱え方を知り、カードを作成する。
【第7時】5の段の適用題を解いて、九九の練習をする。
【第8時】乗数が1ずつふえると答えが2ずつふえることを使って2の段の九九を構成し、唱え方を知る。
【第9時】2の段の九九の適用題を解いて、九九の練習をする。
【第10時】乗数が1ずつふえると答えが3ずつふえることを使って3の段の九九を構成し、唱え方を知る。
【第11時】3の段の九九の適用題を解いて、九九の練習をする。
【第12時】乗数が1ずつふえると答えが3ずつふえることを使って3の段の九九を構成し、唱え方を知る。
【第13時】4の段の九九の適用題を解いて、九九の練習をする。
【第14時】2,3,4,5の段の九九を使って、基準量が後に示された適用題を解く。(本時)
【第15時】かけ算の問題づくりを通して、かけ算が適用される場面についての興味や理解を深める。
【第16時】れんしゅう
【第17時】学習内容の自己評価

本時


(1) 本時の目標(第 14 時)
・2,3,4,5の段の九九を使って、基準量が 後に示された適用題を解くことができる。

(2) 評価規準
【関】かけ算の問題を進んで解こうとしている。
【考】基準量が後に示された問題から、基準量が どちらの量であるか正しく判断することが 出来る。
【表】基準量にあたる数といくつ分にあたる数を かけ算の式に正しく表し、答えを求めること ができる。

(3)準備物
・掲示用問題文
・黒板掲示用数図ブロック

3 【3学年】(単元名 何倍になるのかな )

単元の目標

オペレータ(変量)に着目し、何倍になるかを考 えて問題を解くことができる。

指導にあたって

<児童観>

子どもたちはこれまでに、「かくれた数はいくつ」 や「間の数」などの単元において、絵や図などを手 掛かりにし、いろいろな考え方で解こうとしてき た。その中で、自分の考えを持ち、発表できること、 友だちの発表を聞き、自分たちで考えを深めること を目標とし、授業を進めてきた。しかし、自分なり の考えを持つことや、考えを言葉で説明することに は苦手意識を持っている子もおり、皆で深め合うま でには至っていないのが現状である。

<教材観>

本単元では、3 要素 2 段階の問題のうち、□×a×b の数の問題についてオペレーター(変量)に着目さ せて解決する方法を学習する。このような問題を解 くには、順に考える方法((□×a)×b)と何倍になる かをまとめて考える方法(□×(a×b))とがある。順 に考える方法は問題文などから容易に導くことが できるだろうが、まとめて考える方法、a 倍の b 倍 という考えには、なかなかたどり着かないと考え る。そこで、「関係図」を生かし、図より(a×b)倍 を見つけさせたい。また、関係図を書くことにより (a×b)倍という関係が見つけやすいという良さに も気付かせたい。

<指導観>

本単元では、初めて関係図を扱い、本時は 2 時間 目である。子どもたちは前時の学習を受けて倍の倍 に目を付けると思われる。倍の倍という抽象思考はやや理解しにくい面があるが、ヒントにある「ハン バーガーを何個買えばいいかな」で、ハンバーガー の個数に目を向け、図や関係図を書くことができる ように支援したい。また、解法を発表するときには、 式と図を関連付けながら考えを説明できるように し、子ども同士の話し合いによって考えを深め、ね らいにせまりたい。

指導計画(全2時間)


【第1時】□の a 倍の b 倍を、□×a×b と□×(a×b)により求める。
【第2時】
□の a 倍の b 倍を、□×(a×b)
により求める。(本時)

本時


(1)本時の目標(第2時)
・□の a 倍の b 倍を求める問題を、□×(a×b)の 考え方で解決することができる。

(2)評価規準
【関】題意を把握し、問題を処理しようとする。
【考】□の a 倍の b 倍を求める問題を、□×(a× b)の考え方で解決できる。
【表】関係図を使うなどして、a 倍の b 倍を(a× b)倍として計算できる。

(3)準備物
・掲示用問題文

4 授業の視点


○ 校内研究とのつながりを考えた。研究主題「自分の考えを持ち、進んで学ぶ子の育成~少人数を生 かした授業の追究~」に向け、生きる力の育成に主眼をおいた、豊かな学び合いを目指した授業づく りとして、実践を見つめ直した。
○ 研修部より提案された、「研究の概要」にある「研究の柱」より、今回の2・3年の算数科提案授業 にて取り組む課題を洗いなおした。

研究の柱


①少人数の良さを生かした学習方法や授業形態の追究
②複式指導のカリキュラムの考察
③表現力の基になる「話す・聞く・読む・書く」力を伸ばす取り組みの充実
④主体的に学習を進める「学びのステップ」の確立

①について:
“良さ”と言えるかどうかはわからないが、2・3年生では、複式授業であり、異内容・ 学年別学習、児童同室・指導者複数という授業形態にて行う。

②について:
カリキュラム考察は今後の課題である。

③について:
「話す・聞く」に注目し、授業の中の“学び合う” (いろいろな子どもがさまざまな発 想を出し合い、他の子から学び取り、他の子によい影響を及ぼす事だと考える。 )中でこれ を実践したいと考えた。すべての子どもに考えたり、作業したりする機会と時間を与え、 それぞれの子どもがそれぞれに考え方や仕方を持ててから(「ふかめる」場面)、発表し合 い、話し合い、学び合える(「ひろげる」場面)ようにしたい。そのために、授業において、 次のようなことを常に子ども達に意識させるよう心がけた。
<発表場面>
発表する時:教室の友達みんなに聞こえる声で話す。みんなの方を向いて話す。 聞く時:静かにする。発表する人の方に注目する。できれば、うなずきながら聞く。
<話し合う場面>
・静かに他の人の意見を聞く。
・他の人の意見を尊重する。(違っていると決めつけたり、ばかにしたりしない。)
・「~と同じで」、「~と似ていて」、「~と違って」など、自分の意見と比べ、自分の立場 を明らかにして話す。
<学び合う場面>
・友だちの意見から、新しい発見ができるという視点を持つ。
・意見を重ね合わせることで、考えがより良いものへ変わっていくという視点を持つ。

④について:
学びのステップを掲示し、子供たちに説明し、実践していく中で、授業の展開(パター ン)を意識しようとした。
「ふかめる・ひろげる」場面については、前項のやり方で実践。
「みつける・もとめる・ふりかえる」場面を実践するにあたり、低学年での初めての取り 組みでもあることから、子ども達のやりやすさを考え、“算数カード”というワークシート を用意し、毎時間取り組んだ。
*めあて:
最初は教師が授業のめあてを板書し、写す。慣れてくれば、教科書を開き、 今日の学習を見通してから話し合って決める。また、個人的なめあても下に書 く。 ※ 個人的な授業のめあてについては、その週、または単元を通してのものを 設定し、続けて取り組むものとした。さらに、個人のめあてについても書く のだが、週初めなどで時間をとり、2・3年で発表し合う時間をとる。そし て、普段の授業の最後のまとめにおいて、個人の目当てについてどうであっ たかを、2・3年のクラスとして交流し、次の勉強への意欲づけとしたいと 考えた。
*学習の振り返り:
授業中に意識してほしい 3 つの項目について、はい・いいえで回答。
*今日の勉強でわかったことや感想:
授業の、そして個人のめあてに対してどうで あったかを書く。また、自由記述。
○ 上記のようにポイントを考え、特に複式の授業については教師サイドもよく相談し、実践したい。 しかし、指導内容によっては、すべての時間をこの展開でできるわけではない。基礎的、習得的な学 習を時間をとってする時もある。子どもの負担とならないよう、学ぶ力の定着、維持、向上に効果の ある学習内容、学習活動とは何かを見きわめながらやっていきたい。 ※複式授業の指導者の打ち合わせは、授業メモを利用して行った。

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○ そして、今回の提案授業の時間に、子どもたちの学びで見ていただきたい視点は次の4点です。
 ①授業の見通しを持ち、今日の授業ののめあてをもつことができているか。
 ②問題を解決しようと、自分なりの考えを持てているか。
 ③自分の考えを発表し、友達に伝えようとするとともに、友達の発表を真剣に聞けているか。
 ④友達の発表を聞きあい、考えが深まっているか。

5 展開

以下の指導案の表は、2枚を横並びにして、一組です。

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