いじめ防止対策推進法改正にあたり、今学校で求められているものとは

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作成者:kaito sawaさん

1 はじめに

 この記事は、2016年1月5日に行われた第12回「親の知る権利を求めるシンポジウム」(NPO法人ジェントルハートプロジェクト主催)の前半での、小森美登里さん(NPO法人ジェントルハートプロジェクト理事)のお話を基に作成しております。
NPO法人ジェントルハートプロジェクトは、いじめ問題の解決を目指して、いじめ被害者遺族が2003年3月に設立したNPO法人です。
いじめのない社会の実現のため、全国各地での講演会、展示会、勉強会やコンサート等の取組を通して、多くの人たちに「やさしい心」を伝えるための活動や、いじめ被害者遺族の知る権利を求め、政府への申し入れ等も行っています。詳しくはこちらをご覧ください。

フォーラム概要

 いじめ防止対策推進法が施行されて3年が過ぎました。しかし、改善に向かって進んでいない面が未だに多く存在し、いじめによる自殺ではないかと報道された児童生徒の数は、この3年間で少なくとも25件に上ります。この問題の原因はどこに存在するのでしょうか。
今回の記事では、いじめ防止対策推進法改正の時期にあたってNPO法人ジェントルハートプロジェクトが作成した「いじめ防止対策推進法見直しにあたっての要望書」を基に、行政が、学校が、教師が行っていくべき内容について小森美登里さんがお話された内容を再構成したものです。

要望書の内容

ジェントルハートプロジェクトは2016年11月4日、文部科学省児童生徒課に伺って「いじめ防止対策推進法見直しにあたっての要望書」を文部科学大臣宛で提出しました。
テーマとしては、これだけは実現してほしいという内容2つになっています。
1つ目が「隠ぺいができないシステムづくり」で、2つ目が「実効性あるいじめ対策チームにするための研修」です。

2 フォーラム内容

「隠ぺいができないシステムづくり」とは何か

なぜ「隠ぺいができないシステムづくり」が必要なのでしょうか。私たちの法人が以前行ったアンケート(「学校、教育委員会の説明や報告はあなたにとって納得できたか?」、との質問に対して「納得できない」とする解答は89.8%だった)によると、学校や教育委員会の説明や報告がほとんどの方にとって納得できるものではなかったという結果になっています。そして、法律ができてからのこの3年間、「わが子がいじめによって自殺しました」という親御さんからの様々な相談がジェントルハートに寄せられています。そのなかで、やはりいじめの事実が隠ぺいされてしまう問題というものが解消されていないと実感しています。
つまり、いじめがなぜ起こったのかという事実に向き合う機会が奪われてしまっているわけです。事実に向き合わなければ、いじめによる自殺が起こるまでのプロセスの中でどこが間違っていてどこが正しかったのか、そこを見定めることができません。そして、いじめの加害者となっている子ども達が、事実に対して向き合う機会を奪い、反省して正しく生きなおす機会を奪ってしまっているのです。それにもかかわらず、学校は嘘をついて事実を隠ぺいしてしまう。
学校はいじめが起きた事実を隠し通せば何とかなると考えているのかもしれません。しかし実は隠すことによって裁判が起きてしまうのではないかと思います。早い段階で情報の共有をし、そして事実に向き合い、被害者側と学校側が一緒になって問題点を見つけ合うことができるのならば、きっと裁判は起こらないと思います。

「実効性あるいじめ対策チームにするための研修」とは何か

陥りがちないじめの対応ミス

私はここ数年、いじめに関する教員研修を行うことが多くあります。その研修の中で先生方から「学校現場が今どういう状況なのか」、「先生たちがいじめに対してどのような対応をしているのか」ということを、実際に伺う機会が多いです。その中で実感するのは、私たちが「基本」と思っていることの認識があまりにも現場の先生と違っていたことです。つまり、先生方は正しいと思い込んでいるものの、実は間違っているいじめ対応が多く存在するのです。その中でも本当に驚いたのは、「ケンカ両成敗」という形で加害者と被害者を対面させ、「思うことをお互いにとにかく全部言いましょう」とお互いの不満を言いあわせ、「これでおしまいね、お互いに謝りましょう」というような対応です。
しかし、この対応はその後の問題を大きくする原因となります。なぜなら、いじめの加害者は何らかの背景を持っていることが多いからです。しかし、この指導方法ですと、その加害者が抱えている背景に寄り添えず、事実関係のみを指導してしまっているので、反省の気持ちを生み出すことができません。それどころか、加害者は「チクられた」との認識を持ち、加害行為は水面下で深刻化していきます。また、被害者は、加害者に謝罪させられたことに納得が出来るはずもなく、教師への信頼が崩れ、二度と相談しなくなるのです。

実効性のある研修を

それでは、なぜ先生たちは正しいいじめ対応を取れないのでしょうか。それは、いじめに関する研修を行うよう指示する通知は学校に届いているものの、校長先生のところで止まってしまい、現場の先生には届いていないという現状があるからです。このように、研修というものが十分には行われていないのです。
ではいじめに関する研修を行えばそれでいいのかといいますと、そう簡単な話ではありません。しっかりと内容が充実した研修でなければなりません。「引退した校長」や、「警察の人」を講師としてとりあえず呼んだとしても、その講師がいじめに特化した内容を学んでいなければ意味はないのです。
いじめのことを知らない人による、「研修やりました」というアリバイを作るためだけに行われる研修が非常に多いのではと思います。
だからこそ、私たちは「実効性のあるいじめ対策チームにするための研修」を実施する必要があると考えます。

加害者の立場に寄り添った対応を・・・

いじめ問題を解消するために重要なのは、加害者にいじめを止めさせることです。そのためには、加害者は成長過程や現状の人間関係などで何らかの問題を抱えていることが多いことを認識し、加害者に寄り添った指導を行う必要があります。しかし、多くの現場で正しいと思われている指導に間違いが存在します。
それは、いじめの加害行為を見つけたときに、加害者に直接その行為について注意をすることです。つまり、今目の前で誰かの悪口を言っている、無視しているなど、何かいじめ行為をしているときに、そのものに対してストレートに言っているわけです。「何をしているんだ」「そんなことをしたらだめでしょ」「自分がされたら嫌だよね」などのように、指導をしています。しかし、加害者の持つ様々な背景に寄り添いつつ、その子の心に届かなければ本来の指導とは呼べないと思います。ですが、現状としてただ目の前で自分が見たものに対する注意がとても多いのです。
私たちの団体で、加害行為をしてしまった子どもへのアンケートを行いました。「自分がいじめ行為をしていた頃、自分も悩んでいた、辛かったことがありましたか」という内容での調査でしたが、加害者の約7割が「いじめているとき、自分も辛いことがあった」と回答しました。
このことからも分かる通り、いじめ指導においては、加害者の背景に寄り添った声掛けというものをしなければならないのです。

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