陰山英男先生インタビュー(五月祭教育フォーラム2016『学校の役割を問い直そう~公教育が「商品」に!?~』)

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目次

1 はじめに

本記事は、2016年5月15日に東京大学で開催された五月祭教育フォーラム2016『学校の役割を問い直そう~公教育が「商品」に!?~』後に、陰山英男先生(立命館大学教育開発推進機構教授)にインタビューしたものです。

こちらの記事も合わせて御覧ください。
* 五月祭教育フォーラム2017 大学入試改革!問われる新たな能力〜現場と家庭は何をすべきか〜
* 【第1部】五月祭教育フォーラム2016『学校の役割を問い直そう~公教育が「商品」に!?~』
* 【第2部 前半】五月祭教育フォーラム2016『学校の役割を問い直そう~公教育が「商品」に!?~』
* 【第2部 後半】五月祭教育フォーラム2016『学校の役割を問い直そう~公教育が「商品」に!?~』
* 夏野剛氏インタビュー
* 本田由紀先生インタビュー

2 陰山英男先生インタビュー

他の登壇者の方のお話を聞いて、特に感じたことや、意外だったことはありますか。

渡辺さん、本田さんはお2人ともいろいろな取材や研究を深くやっている方なのでかなり突っ込んだ議論になったと思います。夏野さんは、今の時代の先端を生きている人らしく、突き抜けていこうというメッセージが強烈だったのがよかったです。それぞれの持ち味がでた議論だったと思います。

フォーラム中に、「文科省は現場にアクティブラーニングや英語教育など、あれをやれこれをやれと丸投げするのをやめるべきだ」というお話がありましたが、今現在、文科省からそのような要求をうけている先生方は、このまま試行錯誤の状態を抜け出すことはできないのでしょうか。

教職員の勤務実態の国際調査の結果を見ればわかるように、教職員の勤務状況は限界に達しており、社会の要請からの改革という趣旨は十分理解するが、その実施にあたっては、その内容を相当精査したものにならないと現場は対応できないかもしれません。

それでは今現場にいる先生は何をすべきですか。

無理な要求にたいしては「無理」と言うことです。
文科省に対し「無理」と言うことが必ずしも『政策批判』や『抵抗』ではないと、文科省が見極めることが必要です。

というと、文科省が問題、ということになりますか。

文科省に悪意はありません。。日本の教育をダメにしようとしている人はいないでしょうから。一番の問題は文科省と現場の間が切れてしまっていて、それぞれが自分の枠組みの中で問題にアプローチするために、ポイントがズレてしまっていることです。

来場者からは「現在の教育問題に対して、各登壇者の方が、どのような解決策を考えているか具体的に知りたい」という声が多く聞かれました。陰山先生としては先ほどおっしゃっていたように、文科省と現場がもっと歩み寄るべきということになりますか。

そうですね。文科省と現場の間にネットワークを作り、立場の違う人たちが問題を共有し、それぞれの立場でできることを行うことで解決に向かっていくでしょう。そのためにはまず文科省がよかれと思ってやっていることが現場ではうまくいっていないことを伝えなければいけません。

では文科省に現場の声を伝えるには、どうしたらいいのでしょうか。

今の時代だからSNSを活用したり、新聞の投稿欄に載せたり、イベントを行って世の中に訴えるなど方法はいくらでもあります。部活問題に対してネットで署名を集めた事例もありますね。そういったことを現場が負担だと言ってしまうのでは何も解決しません。

フォーラム内で「チーム学校からシステム学校へ」とのお話がありましたが詳しくお聞かせいただけますか。

陰山先生

チーム学校は先生方が授業に専念できるように周囲からいろんな人を入れて、学校をチームとして回しましょうという発想ですが、『学校』という組織である以上、校長がもっとリーダーシップをとり、全体を動かしていかなければならないと考えています。チームというのは悪い言葉ではないと思いますが、もう少し組織的な形にしていかないといけないのではないかと感じています。日本の学校は色んな先生たちが協力してやっていきましょう、という形ですが、これでは能率が悪いです。それぞれの先生が自分の分野の範囲で動くと、誰も面倒を見ない場所が出てきてしまいます。校長がリーダーシップをとって、先生ひとりひとりに適切な指示をだし、組織として学校をつくっていかなければならないと思います。

今、校長をしている方々はもっとリーダーシップをそれぞれの学校でとっていくべきだということですね。

そうです。日本の学校制度の弱いところは校長任用制度だと思います。というのは適材適所にならないからです。ある校長先生にふさわしい人がいるとします。その人が責任の重い校長にはなりたくないと思ったとすると、ならないことは簡単で管理職試験を受けなければよいのです。ふさわしい人が校長にならなければ、その人よりも技量が劣るひとがなることになります。力不足な人が校長、その校長をしのぐ力のある人が平場の教師をやっているという事例を僕は見てきました。これはものすごくアンバランスで、リーダーシップをとるべき人間がリーダーシップをとれず、学校全体のマネジメントがしづらい状況です。「やりたくないからやらない」というのが通用する職種は他にはあまりないと思います。なるべき人がなるような人材登用のシステムがないと組織としてはうまくいきません。校長任用制度がこれから変わるかどうかは別として、良い教師であり、力のある人間が校長職に就くことがもっとも大事だと考えます。

来場できなかった方、世間へのメッセージをお願いします。

ROJEの五月祭教育フォーラムでは、非常に質も高い、かなり実際の現場に対して切り込んだ議論をしています。そこでのメッセージは日本の教育に響いていくようなものであると考えているので、より多くの方に参加してもらうことを切に願っています。また期待されるイベントであり続けたいと思います。

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* 本田由紀先生インタビュー

陰山英男先生プロフィール

陰山英男

立命館大学教育開発推進機構教授/立命館小学校校長顧問

1958年生まれ。岡山大学法学部卒業後、兵庫県朝来町立山口小学校教師時代から、反復学習や規則正しい生活習慣の定着で基礎学力の向上を目指す「陰山メソッド」を確立し脚光を浴びる。内閣官房 教育再生会議委員、文部科学省中央教育審議会委員、大阪府教育委員会教育委員長などを歴任。色つき

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