1年生は超スモールステップでひらがな(岡篤先生)

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作成者:中丸 和 (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

本記事は、岡篤先生のメルマガ「 教師の基礎技術~一年生は超スモールステップで24~ 110 号 ~ 113 号 」から引用・加筆させていただいたものです。1年生の子どもたちが、ひらがなの字形を確実に習得していくための実践を紹介します。
岡篤先生のメルマガはこちらを参照ください。→http://archive.mag2.com/0001346435/index.htm

2 ひらがな指導についての二つの場面

ひらがなの指導については、印象的な記憶が2つあります。

1つは、岸本先生の言葉です。「ぼくは、1日1文字ずつ、ゆっくりゆっくり教えるんや。」と言われていたことです。岸本先生は『すべてのこどもに確かな学力を 小1年篇』(たかの書房)などでも、ひらがなを1日1文字ずつ教える実践について書かれています。

もう1つの場面は、私が初めて1年生を担任したときのことです。世話係の先生が、4月いっぱいくらいで「もう、ひらがな終わったよ。」と言われてびっくりして聞き返しました。「それで、だいじょうぶなんですか!?」返事は、「だって、みんなひらがな、知ってるでしょ。」でした。

確かに、ほとんどの子はひらがなを知っています。それでよしとするなら「今日はあ行」「明日はか行」といったペースでも、いいのかもしれません。しかし、言葉集めや、細かい字形のことなどを考えるとちょっと強引でしょう。さらにいうと、ひらがなを全員がほんとうに、読めて書ける状態かということも疑問です。

3 自分なりの指導ペースを

昨年度私は、1日1文字を原則としながらも、「よ」と「ま」など字形の似ている字をいっしょに教える日を8回とったところ、清音全てが終わったのは6月22日でした。今年度は、もう少し字形の似た字をいっしょに扱った方が子どもが覚えやすいのではないかと考え、一度に2文字教える日を増やしました。清音全部終わったのは5月22日でした。子どもの実態もありますが、自分としては今年のペースは決して無理があったわけではありません。むしろ、同じ注意点がある字を同時にすることで子どももわかりやすかったような気がしました。しかも、一度授業で教えたからポイントにそって書けるようになるという子ばかりではありません。逆にその後もくり返し練習することで定着していくのが普通です。そう考えると、1学期の間に、ゆっくり復習する期間が取れるというメリットもあると感じました。

4 連絡帳を練習の場に

連絡帳は、毎日書き、保護者が見るだけに絶好の練習の場でもあります。一通り、ひらがなの指導が終わった後は、連絡帳の字に丸をつけるようにしました。上手に書けている字にだけに一文字ずつ丸をつけていきます。
 ここで問題なのは、きれいに書くことに意欲を持っていない子です。なぐり書きをして、丸がつかなくても平気なようでは、いくら続けても効果はありません。そこを何とか丸を増やしたいと思うように、仕向けたいところです。とはいえ、殴り書きをした字に丸をつけたところで、効果は低いはずです。
 まずは、丸がつくようなきれいな字を少しでも書けるように、指導をすることです。「し」や「ん」といった字は、コツを覚えれば、上手に書けます。
 「し」ならば、縦にまっすぐ線をおろします。
 その後、「おたまのように」丸く書き、
 最後は斜めにはらいます。
この3つのポイントが意識できればかなりの確率でうまくかけます。意外なようですが、「ん」も字形という意味では易しい字です。
 ポイントは以下の3点。
・真ん中から斜めに下りる
・(丸い部分は)おたまのように書き、斜めにはらう。
・おたまの底は斜め線の折れと同じ高さになる。
これで、かなり字形がとれるようになります。

5 ひらがなの指導順

まず、授業として最初に指導したのは、「て」と「し」です。連絡帳で最初に使わせるひらがなが「て」と「し」だったので、この字にしました。初期の連絡帳は、日付と手紙の数だけを書いています。4月12日に手紙を1枚配ったというときは、以下のようになります。
 4 12 て 1 (縦書き)
1年生の4月は、持ち物や時間割などは手紙で全て伝えています。それだけに、保護者として最低限必要なことは、配った手紙の数です。もちろん、ひらがなを学習するにつれ、曜日や宿題についても書くようになってきます。

6 書きやすさの順に

1年生の子どもにとって何が書きやすいかというのは、実は簡単なことではありません。特に、ひらがなの場合、少し曲がっていたり、斜めだったりという線が多いので、これがくせものです。例えば、「い」「こ」といった字は、二画で線も比較的単純なので書きやすいような気がしますが、どちらもやや曲がっていたり、斜めの部分があったりで、1年生にとって、きれいに書くことは簡単ではありません。その逆で「し」や「ん」といった、意外と書きやすい字もあります。

7 一日二文字を原則に

過去4回の1年担任の際は、原則1日1文字で進めていました。それが、今回はふと、「2文字でもいいのではないか」と思い立ちました。1文字ペースでいくと、ときどき2文字の日を入れても、終わるのは6月半ばになります。これが少し遅いのではないかと感じたからです。連絡帳や国語、算数のノートでは、いろいろなひらがなを使う機会がどんどん増えていくのに、字形の指導としてはまだできていないということが、どうも自分の中で不自然な気がしました。「使うなら字形も教えた方がいい」という発想です。もちろん、1年生という発達段階を考えると、ただ早ければいいというわけではありません。子どもの実態に合わなければ、せっかく指導した意味がなくなってしまいます。つまり、きれいな字が書けません。そこで、今年は、2文字を原則にしつつ、子どもの定着具体なども判断することも忘れないように意識しました。

8 「さかのぼりくり返し」

私は、漢字の反復練習に関しては、「さかのぼりくり返し」というやり方をしてきました。読んで字のごとく、さかのぼってくり返します。例えば、山・川・本・名という字を1日一字ずつ指導するとします。1日目は、「山」と書きます。2日目は、その日習った「川」に加え昨日の分もさかのぼり「山」も書きます。「川山」となります。3日目は、「本」を教えるので、「本」とさかのぼりの「川山」を加え、「本川山」です。4日目は、「名本川山」となります。もちろん、実際に練習するときは熟語であったり、送りがながついたりとこう単純ではありませんが、原則はこういう考え方となります。 

9 ひらがなもさかのぼりくり返しで!

漢字の習熟には、このさかのぼりくり返しがかなり有効なことは、実践済みです。あるときふと、「ひらがなにも使えるのではないか」と思いつきました。ひらがなのだいたいの読み書きを覚えるだけなら、そんなに細かいことを考えなくてもよいでしょう。しかし、字形のポイントを細かく指摘し、それを練習させ、定着させることを目指す立場としては、「だいたい覚えている。」という程度では満足できません。
上記のようなポイント(「ん」は真ん中から始めて~など)は、1回の指導で定着するのはほぼ無理です。復習をくり返し、理解し、できるようになり、習慣化し、ふだんの字が変わっていきます。ということは、ひらがなの字形を整えるためにも復習の仕方を工夫する必要があります。昨年度までは、授業で指導したひらがな(新出漢字に合わせていうと「新出ひらがな」とでもいえばよいでしょうか)のプリントを宿題に出していました。今年度は、さかのぼりくり返しの発想で、以前に指導したひらがなもいくつかのせることにしました。1枚で一つのひらがなを練習する数は減りますが、その分何日間かくり返すことになります。

10 ひらがなこそ、さかのぼりくり返しが有効だった

ひらがなのポイントをおさえて、わかりやすく指導し、授業中に何度も練習し、宿題でも復習させました。それでも、なかなか定着しない場合が多いと感じていました。今から思うと、当然かもしれません。「新出平仮名」の学習をする1年生の4月、5月は、まだ指がしっかり動かない子が多かったはずです。そんな時期に、細かいことを言っても、わかるかわからないかの前に、思った通りに指が動くか動かないかという問題があります。さすがに、6月、7月になってくると、どの子も書き慣れてくるようで、かなり線がしっかりしてきます。しかし、そのころになると、4月に言われただけの字のポイントなんて忘れてしまっています。漢字では、「さかのぼりくり返し」で定着を目指していたのに、ひらがなではその点が不十分でした。

11 「さかのぼりくり返し」で宿題のプリントを使う

そこで、新出ひらがなの指導は、1日2文字を原則にして、以前よりもペースを速めることにしました。授業中に練習する量も減らし、無理なく進めるように授業の構成も変えました。その分、復習の時間を意識してとり、おけいこちょうや黒板で以前に書いた字のポイントを繰り返し練習させました。宿題は、前年度からさかのぼり繰り返しの形式のものを作っていたので、それを続けて使うことにしました。ペースを増やしたおかげで、6月7月は新たな字を指導する必要がなくなり、じっくりとひらがなの復習に当てられます。今年度初めての取り組みですが、字形の定着は今まででもっともよかったような気がします。

12 執筆者プロフィール

岡 篤(おか あつし)先生
 1964年生まれ。神戸市立小学校教諭。「学力の基礎をきたえどの子も伸ばす研究会(略称学力研)」会員。硬筆書写と漢字、俳句の実践に力を入れている。
(2017年3月21日現在)

13 書籍のご紹介

『読み書き計算を豊かな学力へ』2000年

『書きの力を確実につける』2002年

『これならできる!漢字指導法』2002年

『字源・さかのぼりくり返しの漢字指導法』2008年

『教室俳句で言語活動を活性化する』2010年

14 編集後記 

指導する文字数の調節や反復をすることによって確実にきれいなひらがなを書けるようになってもらうという実践でした。
  一度に指導する文字数は増やしすぎずに、しっかりと反復練習を取り入れることが大切です。また、子どもたちがどれくらい定着しているのかも適宜確認しながら指導を進めていく必要があると感じました。

(文責・編集 EDUPEDIA編集部 中丸 和)

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